テラーノベル
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次の場所へ足を踏み入れた瞬間、じゃぱぱは思わず息を呑んだ。
そこは――
風に揺れる花がどこまでも続く、
やわらかな花畑だった。
色とりどりの花が
光を浴びてきらめいている。
甘い香り。
静かな風の音。
「……本の中の世界みたいだな。」
思わずつぶやいた言葉に、
静かに返事があった。
「ほんとだね。
俺もそう思った。」
「――っ!」
振り向くと、
花の海の真ん中で、
淡い色の風に髪を揺らしながら立っていたのは、
もふくんだった。
「もふくん……!」
もふくんは、少し首を傾けて笑った。
優しくて、やわらかくて、
どこか寂しさを含んだ笑み。
「来てくれたんだ。
じゃっぴ。」
「……もちろん。
探しに来たよ。」
「ふふ……変わらないなぁ。」
もふくんはゆっくり花の間を歩き、
じゃぱぱの近くへと寄ってくる。
「ねぇ、ここ……どう見える?」
「どうって……?」
「俺にはね、
本のページがめくられるみたいに見えるんだ。」
風が吹き、花びらがふわりと舞った。
「一枚めくると景色が変わる。
匂いも音も、全部……
まるで物語の中にいるみたいでさ。」
「……もふくん、お前……」
「うん。」
もふくんは目を伏せた。
「俺、ここに迷い込んだんだ。
本を読んでて……気づいたら、この花畑に。」
やっぱり、と思った。
もふくんには、どこか“世界に溶けてしまいそうな”危うさがある。
「みんな、ずっとひとりだったの?」
「ひとり……だったよ。」
もふくんは静かに微笑む。
「でも、寂しくはなかったんだ。
花も風も……ちゃんと話しかけてくれるから。」
「……それでも。」
じゃぱぱは一歩近づく。
「もふくんは、ひとりじゃない。」
その言葉に、もふくんは驚いたように目を見開き、
そして、ふっと笑った。
「じゃっぴ……変なこと言うね。」
「変じゃねぇよ。
俺は、お前を迎えに来たんだ。」
もふくんが瞬きをする。
その瞳の奥で、何かが揺れた。
「……覚えてる?」
「覚えてる。
もふくんと本の話したこと。
一緒に静かな場所探して歩いたこと。
何気ない一言で救われたことも。」
「……ほんとに?」
「嘘ついてどうするんだよ。」
風が吹き抜けた。
花たちが、ふわりと揺れる。
もふくんは、じゃぱぱの正面で立ち止まる。
「じゃっぴは……
俺のこと、忘れてもいいんだよ。」
「は?」
「だって……
俺、すぐ色んなものに溶けちゃうから。
ここでも、本の中でも……」
「……もふくん。」
「じゃっぴが忘れるなら、
その方が楽なのかもって、
少しだけ思った。」
その声音は弱々しく、
いつもの柔らかいもふくんとは違っていた。
じゃぱぱは迷わず言った。
「忘れないよ。ずっと」
「……」
「忘れたくない。
もふくんのことも、俺たちの時間も。」
もふくんの肩が、わずかに震えた。
「やっぱり、じゃっぴはずるいなぁ……」
でも、優しい声だった。
「じゃっぴが迎えに来てくれたから……
俺、やっと気づいたんだ。」
「気づいた?」
「うん。
俺、帰りたかったんだって。」
もふくんの体がゆっくりと光を帯び始める。
やわらかい、花びらのような光。
「じゃっぴ。」
「なに?」
「見つけてくれて……
本当にありがとう。」
じゃぱぱは軽く首を振った。
「探して当然だろ。」
「……へへ。
嬉しいな、それ。」
光が強まっていく。
「もふくん、!!」
「 じゃっぴが思い出してくれたから……
ちゃんと帰れるよ。」
もふくんは最後に、
とてもやさしい笑顔を見せた。
「また、本の話しようね。」
「もちろん、好きなだけな。」
「じゃあ……またね。
じゃっぴ。」
ふわりと光に包まれ、
もふくんは花びらのように消えた。
残された花畑は、
静かに風だけが吹いていた。
コメント
2件
お久しぶりの物語ですね!! mf桾帰りたくなったんですね …流石jp彡!! 次回も楽しみにしてます!!
わー!久しぶり笑 今回も最高でした。続き楽しみにしてます笑