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みどりくん昔はどこかの偉い子だったのかな、 もっかい小説見直してみよう、、
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『お久しぶりです、”トレボル”様。』
背後から声がする。
オイルランタンを向ければ、執事がいた。
ゆっくりと、口が開く。
「…ココドコ?」
『ここは貴方の分岐点』
「分岐点…?」
執事は空を仰ぐ。
『考えたことはありませんか?』
白く、綺麗な手袋を付けた手が大きく開かれる。
そのままクルリと緑色の方へ体を回した。
『もし、ハーデ様が王位継承権を捨てず王になってくれていれば、自分はこんな辛い思いをしなかっただろう』
親指が曲げられる。
『もし、王になっていれば今頃どうなっていただろう』
人差し指が沈む。
『もし、エルフの森が無ければ、兄は自分ともっと遊んでくれていただろうか』
中指がおれる。
『もし、自分が身につけるものが違う色だったら、今頃あの人たちには何と呼ばれていただろう』
薬指がおられる。
『もし、自分の引く血が違えば…』
「なにが言いたい?」
いつもの綺麗なエメラルドは消え、紅くくすんだ瞳が大きな帽子の中から覗いた。
目の前の相手からあからさまに向けられる⬛︎意よりも、執事自身は
『…普通に話せるようになったのですね、』
と、言葉の方に感動していた。
呟くように言ったそれを『コホン』と空咳ひとつ混じえ、ころんと話題を変える彼。
『私も提唱したいのです』
「何を」
執事は身長差のある緑色を上から見下ろす。
国の業務により猫背気味な彼。
『貴方が王になった、この国の姿を』
モノクルの先に見えるシワの多い目尻が上がっていた。
そんな瞳から逃げるように目を逸らす。
「無理」
『そう言わずに』
緑色は片手に持つランプを揺らし背中を見せ、その場から立ち去ろうと足を踏み出した。
そんな彼の左手を掴み引き留める執事。
『先程、貴方が運営の方々に過去を打ち明けたと耳にしましたッ』
その声は、柄にもなく必死だった。
脱力した瞳が答える。
「聞かれてないから」
けれど、彼の額には汗が浮かんでいた。
執事は悲しそうに、寂しそうに眉を下げる。
『あの方々は、信用に足るニンゲンではないのですか?』
パシンッ__
掴まれた手を振り払う音が廊下にこだまする。
反動でカランカランとランプが揺れた。
「関係ないッ、!」
大きい声を出したからか咽せ返る彼。
丸まったその背中に触れようとした執事の手は、再度振り払われる。
『…申し訳御座いません。調子に乗りました』
カツンと革靴を鳴らし、立ち上がる彼。
緑色はゆっくりと顔を上げた。
『…貴方を導くのは、貴方自身でしたね』
咽せたからか、視界が涙で滲む。
執事の顔が見えない。
『…さようなら、”坊っちゃん”』
その言葉を最後に、緑色の意識は途絶えた。
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