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希望という名の幻想を信じることができなかった彼女は、 絶望という形でそれを知ったのだ。
しかし、その先には何も残らなかった。
夢見る少女にとって、現実は無慈悲なものだった。
だから彼女は、自分を救ってくれるものを求めて旅に出た。
全てを失ったとしても、彼女にとっては唯一の救いだったからだ。
……結局は、同じことなのかもしれんな。
狂った世界で生きるより、死んだほうがマシだと、 本気で思い込んでいたんだろうか。
狂いはじめた思考回路の中で、 ただひとつ残ったものが、 狂気に染まりながらも 最後まで求め続けたものだったということか。……まぁいい。
どのみち、私には関係のない話だ。
この世界に蔓延する、妄想という名の病魔。
ヒトビトは、それに耐えられずに死んでゆく。
そして、私はその死を見届けるためにここにいる。
ここは、かつて……ヒトがいた場所。
遥か昔、ひとつの王国がありました。
その国はとても豊かで平和でしたが、 王様はいつも悲しそうな顔をしていられます。
ある日、そんな国王さまを心配した王妃様は、 王都から離れた森へピクニックに行くことを提案されました。
ところがお城を出る前に、王妃様は病気になってしまいました。
医者にも治せない病です。
「ああ、せめてわたしの命と引き換えに、あなたの命だけでも助かるならば……」
王妃様は泣きながらそう呟かれましたが、 国王陛下は首を横に振られて言いました。
「いいえ。あなたは生きて下さい」
そう言われた瞬間、王妃様は自分の体が軽くなっていくような気がしました。
「あなただけは絶対に幸せになって欲しいのです。だからどうか私の分まで長生きをして……」
こうして王妃様は息を引き取られましたが、同時に国王陛下のお姿もまた消えてしまったのでした。
それからというもの、ずっと雨続きだった空もようやく晴れ間を見せ始め、人々は久方ぶりに太陽の恩恵を受けることができました。
けれども、もう二度と国王さまは戻らないし、わたしたちの間に愛が生まれることもない。