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「わかりたくないなぁ……」と思って目を逸らしてしまった。彼の言葉を否定したかったわけじゃない。それは僕の心の奥底からの本心だったのだけれど、口に出してしまえば、認めてしまうことになってしまいそうだと思ったのだ。それでもやっぱり僕は目を逸らすしかなかったし、結局彼はそんな僕のことを見逃してくれなかったのだけれど。
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「お兄ちゃん!お風呂空いたよ!」と妹の美月の声を聞きながらベッドに横になってスマホを操作していた俺だったが、画面の向こう側にいる妹ではなく部屋の扉の向こう側から声をかけてきた人物がいた為スマホを放り投げるようにして起き上がった。
部屋を出て階段を下りて玄関に向かう間にも「あ、あの……」と後ろから聞こえてくるため俺は急いで靴を履いて外に出た。そこに立っていた人物は俺が出てくると安心感を覚えたようにホッとした表情を見せる。しかし俺の隣にいる姉さんを見てまた怯えた顔に戻ってしまった。無理もないよな。姉さんのことは知ってても隣に男がいるなんて思いもしないだろうし。それに今の俺は女装姿だし。だからなるべく優しげに声をかけることにした。
「お久しぶりですね、春香ちゃん。どうかしました?」
すると、春香と呼ばれた女の子は恐々とした様子で話しかけてきた。声が上ずって震えてるのがちょっとかわいいと思ってしまう。けどやっぱりこういう子は普通にしてたらもっとかわいくなると思うんだけどなぁ……もったいない!こんな子滅多に会えないしぜひ友達になりたい!なんてことを思っていたのだが、なぜかその子は僕の手を両手で握りしめて涙目になりつつ僕を見つめてくるのだ!?えっ……えっと……なんだこれ一体どうなってんの!?