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あなた 「どうして、こうも上手くいかないものだろう。」
私「上手いワケないでしょ。だからこの世界は廻り続けてる。」
いつもの朱空どきの帰り道だった。目の前にあったのは、暇そうな石に雑草に四つの人影。
友達「来年も同じクラスになれるといいね。」
あなた 「そうだね。この一年の間はずっと楽しかった。」
私 「次は三年生だ。高校受験のためにメリハリをつけた方がいいんじゃないのかな。」
親友「ま、メリハリつけつつ楽しめれば一番でしょ。」
そのうちすぐに、みんながどの高校に行くか。という話になったはず。
あなたは友達と同じ高校に、そして私は私立の高校に行きたいんだって。
親友は、まだ悩んでた。
気づいたら、辺りは真っ暗だった。
ここはもう、帰り道をとっくのとうに過ぎている。
誰かの声が聞こえた。
「命は大事ですよ。」
みんな慌てだして、誰だと聞いた。ここはどこだと聞いた。
「みなさん、とっても仲がいいんだね。きっと君たちなら大丈夫なはずさ。」
「三回だけ、多数決をしよう。誰か嫌いな一人に投票して、最多票ならその人は☆嫌われ者☆だ。そして嫌われ者は終わりだ。」
「投票で一度も嫌われ者にならなかったら、良い子だから帰らせてあげる。みんな同票なら、嫌われ者はいなかったってことにしてあげる。でも、投票しないはナシだからね。」
あなたは 「何を言ってるんだ。早く帰してくれ。」
私 「帰り道は分からないんだ。おとなしく従おう。」
友達「”終わり”ってなんだよ。こんなのできないよ!」
あなた「でも、全員が自分に票を入れれば大丈夫だよ。」
私「誰かが裏切った時点で終わりだ。何が起こるか分からないんだから。」
友達「じゃあもう分からないよ。みんなを傷つけたくないんだ。どうせなら僕に入れてくれ。」
親友「ふざけるな、お前は誰かを傷つける責任から逃げてそれをなすりつけたがってるだけだ。本気でみんなを傷つけたくないなら自分の意思に責任を持て。俺はお前に入れるからな。」
あなたはその戦争を見ることしかできなかった。友達は帽子で顔を隠している。
泣いている。
私「それは誰かを傷つけることを正当化してるだけじゃないか。」
あなたはなにもできなかった。誰が正しいのだろう。誰が間違ってるのだろう。
何かの声が響いた。
「そろそろ、投票してくださいね。」
※みんなの意志を教えるよ。
親友に一票。友達に三票。
友達は死んだ。
あなたと一緒に未来に進む人はいなかった。
「二回目の投票です。」
あなた 「2人が強い口調で抑えつけなんかしなければ、みんなで帰れたかもしれないのに。」
私「そうだ。あいつが場を乱さなければ生きてたんだ。じゃあ協力しよう。二人であいつを消してしまえば、三回目の投票では私たちで同数票にして二人で帰れる。」
親友「お前が最初に誰かが裏切ったら終わりだと言ったんだろ。そいつに騙されちゃだめだ。俺と一緒に行こう。」
あなたは決定権を手に入れた。
ここで自分に投票すれば、同数票になるかもしれない。そんなことは分かってる。でも、もしかしたら自分に投票してる人がいるのかもしれないと考えると、怖くて仕方なかった。
※みんなの意志を教えるよ。
親友に二票、私に一票。
親友は死んだ。
あなた「どうして、こうも上手くいかないのだろう。」
私「上手いワケないでしょ。だからこの世界は廻り続けてる。」
「絶対的にこうあるべき姿なんてない。他人を傷つけないために自分を犠牲にしようとする人もいれば、誰かが他人を傷つけることで自分を嫌いにさせないために代わりに責任を負おうと考える人もいる。どちらも真っ当な意見なのに相反する考えでお互いを否定したがる。人間ってモノは自分が生きる価値を求める権利を得るために絶対的に自分が必要な良い存在だと思い込みたくて、どんなに相反する意見が間違ってなくても否定しようとしたくて、自分と同じ方向を向いた共感に従い集団になろうとするし、自分を否定する存在がいれば共感という数の力でひねり潰そうとする。生きることは戦争であり多数決なんだよ。」
「私は私に投票する。二人で帰りたいなら自分に投票すれば?私に入れてもいいけど、私を殺した罪を背負って生きていけるの?」
知っている何かが聞こえた。
「三回目の投票です。」
※お前の意志を表示するよ。
そうして、いつの間にか自分が生き残った。声の正体がやっと分かった。
この声の正体は自分だ。
いつもの朱空どきの帰り道に、暇そうな石に雑草に、三つの人影があった。
みんなが、戦争から目を背けて仲睦まじく空間を共有していた。
自分は、本当は終わっているのかもしれない。