ジャミカリ 不穏
ジャミルは、俺の事を嫌いだと言った。
その日からずっと考えていた、どうすればジャミルを幸せにできるか、友達になれるか。考えても考えても分からない。いや、どこかできっとわかっていたんだろうけどな。
「本当に食べても大丈夫なのかな?」
「せっかく他のやつがくれたんだから食うべきなんだぞ!」
「……。」
あれは、監督生達?それにあのカップケーキ…
「ふにゃっ!?なにするんだぞ!?」
カリム「悪い!美味そうなもの持ってたからさ!お詫びに後でうちの寮に来いよ!ジャミルが美味しいおやつ作ってくれるからさ!」
グリム「絶対なんだぞ!」
カリム「おう!」
いつの間にか身についてしまったものでこのカップケーキは食べてはいけないものだとすぐにわかった。
だけど、他のやつに毒なんて食って欲しくないからな。一息つくと監督生に手を振り、一人でいたい時に行く教室に向かった。
「ゲホッ、ケホッ…う”ぅ…」
窓辺に座りゆっくりしていると、手に着いた赤黒いものを見つめる。段々と身体中に回る痺れと痛みを感じる。
「これは…ダメな類だな…」
「まぁ、監督生が食べる前に気づいて良かった…」
この毒は最悪死ぬだろう。
でも、それでいいんだ。
俺が死んだら次期当主は次男になる。
今まで俺が盾になってきた、その矢の矛先が全て次男の元へ飛ぶことになるだろう。そんなことがないように今まで苦しみに耐えてきた。
でもそれと同じくらい、いやそれ以上ジャミルは苦しんでいたのだろう。
ジャミルを自由にするためには結構俺が居なくなるしかない。大丈夫、俺が死んでも遺書に書いてあるから。
「あ”ぁ…そろそろ……」
意識が無くなる頃だ、、。
ガチャ
……?音がした方をうっすらと見つめる。
ジャミル…?こんなとこに来るはずもないよな、ジャミルが知るはずなんてない。
幻覚だとしても、嬉しいな…。最後に話しておけばよかったな。
目をゆっくりと開ける。見慣れた天井がそこにはあった
「ここは…?」
ジャミル「カリム!!お前、なんで毒を食べたことを俺に伝えなかった!?」
「もう少し遅かったら助からなかったんだぞ!?」
「それにお前なら毒かどうかなんてすぐにでもわかっただろ!?」
あぁ、そうか、…俺はまた…
「死ねなかったんだな…」
ジャミル「!?」「何を言って…?」
ジャミルまるで恐ろしいことを聞いたような顔で俺を事を見つめた。
ジャミル「なんでそんなこと…、?」
なんで?なんでって…
「幸せになって欲しい人がいたから。」
「なぁジャミル…お前は、俺のことが嫌いだろ?」
「でも、俺はジャミルに幸せになって欲しいんだ。」
「そのためには俺が死ぬしかない。そうなんだろう?」
ジャミル「…は?」
「それにさ…俺、疲れたんだ」
「俺、カリム・アルアジームでいることに疲れたんだ。」
「今すぐにでも、今日にでもやめたかった。」
気づけば目からは涙が溢れ、声は震えていた。
ジャミルのどこか怒っているかのような顔を見て我にかえった。
「ごめん。あと30分で元に戻るから…」
「それまで待っててくれ……」