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こんにちはの方はこんにちは。初めましての方は初めまして…どうも主です。この度、この『氷河の永夜』の総合いいね数が1000を突破いたしました。こんなにもたくさんのいいね…本当にありがとうございます。いいねをくださった方、そしてこの作品を読んでくださった方々に心より感謝を申し上げます。さて、今回はいいね数1000突破ということで氷河の永夜の外伝小説を書きました。この外伝では、なぜ突然人類に氷河期が訪れたのか、またなぜあのような巨大な氷塊が地上に降り注いだのか…。解明されていくドキュメンタリードラマとなっております。楽しんでいただけたら幸いです。では、どうぞ。
20年前、人類に氷河期が訪れた。初めは日本だった。海上保安庁の巡視船が被害にあいそこから波紋を描くように世界各地に氷河による災害は広がった。しかし、氷河が特定される前の前夜から世界各国の気象観測組織、NASAは地球上の異常を捉えていなかった。なのに、どうして急に氷河期なんて来たのか。この謎めいた人類史上災難の謎を解くためには…あそこに行くしかない…。元凶が襲った国…
ロシア連邦国 モスクワ
モスクワ国立気象観測所。
『気象班』と張り紙のされた部屋の奥に、資料に埋もれて寝ている男性がいた。彼が埋もれている資料には『人類史上初の氷河期』と書かれたネット記事や新聞が多くあった。その時、1人のロシア人男性が部屋を訪ね壁をノックする。
グレイ「Hey、崎村。」
雅也「フガッ!なんだ!あぁ…グレイか…驚かすな…」
グレイ「すまない。あらら…もしかして昨日ずっと徹夜で研究してたのか?」
雅也「あぁ。」
資料に埋もれて寝ていたこの男性は、20年前の氷河期で生き延びた青年”修也”の息子の”雅也”。彼は父、修也の死後修也が話していた氷河期の話に疑問を持ち、今はモスクワの国立気象観測所で働いている。雅也は、散らばった資料をまとめる。
グレイ「なぁ、崎村。日本に行かないか?」
雅也「日本?急にどうして。それに、日本は今復興真っ只中だから海外からの民間人の入国は出来ないぞ?」
グレイ「その点は問題ない。」
グレイは、雅也に缶コーヒーを渡しながら少し自慢げに言う。
グレイ「日本への入国はロシア政府から話をつけてもらっている。」
雅也「おいおい…気が早ぇって…でも、まぁ俺もちょうど日本に行って調査したいと思っていたところだ。」
グレイ「Good。決まりだな。早速準備しろ。明日には日本に向かうぞ。」
グレイはそそくさと部屋を出ていく。雅也は受け取った缶コーヒーの口を開けながら少し考えていた。
「…日本に行くなら…あの人に会ってからだな。」
雅也は缶コーヒーを飲み干し、国立気象観測所を出る。そしてモスクワの市立病院に向かって行った。病院内に入り2階のある病室に向かう。雅也は目的の病室に着きノックして入室する。そこには、ベッドに横になっている30代くらいの女性がいた。
雅也「こんにちは。琴音さん。」
琴音「あら、雅也くん。あなたが来るなんて珍しいわね。」
雅也の言うあの人とは、修也の姉である琴音だった。修也がガンで亡くなったのをきっかけに、琴音も病にかかっていたのだ。
雅也「あ、これ。ベルギー産のガトーショコラです。お腹の調子がいい時にでもどうぞ。」
琴音「まぁ…!ありがとうね…!」
雅也は、琴音に紙袋を手渡しながらベッド横の椅子に座る。
雅也「あの、琴音さん。」
琴音「何?どうしたの?」
雅也「実は僕、日本に行くんです…」
琴音は雅也の言葉に少し驚きを見せていた。しかし、俯いて少し微笑む。
琴音「日本…か……懐かしいな…。今は確か国の復興で忙しいみたいね…」
琴音「でも、なんで日本に行くの?」
雅也は、真剣な表情で琴音の顔を見ながら話す。
雅也「これまで、あの氷河期についてずっと研究してきました。でも、氷河期について全然解明出来なくて…そこで、全ての元凶が始まった日本に行けば…きっと何かわかると思うんです…!! 」
琴音「そっか…頑張ってね。あ、日本に行くなら…少し頼み事してもいい?」
雅也「なんですか?」
琴音は近くにあったメモ帳に何かを描き始め、そのメモを雅也に手渡す。
琴音「ここの住所に、私と修也が昔住んでた家があるの。あの時、逃げる時に私の一番の宝物を忘れてきゃったの…。2階の隅にある私の部屋の机の上にあると思うから…取ってきて欲しいの… 」
雅也はメモを少し読み、数回頷く。
雅也「分かりました。必ず取ってきます。 」
琴音「ありがとう…じゃあ、調査頑張ってね。」
雅也「はい。では…」
雅也は椅子から立ち琴音に向かって一礼し病室を出る。病院を出た後、雅也は再び研究所に戻り必要な機材や資料をまとめていた。そして翌朝、グレイと雅也は日本に向かった。日本各地では、ビル郡や街の姿は残っているものの草木が生え人の姿はなかった。まず、向かったのは南鳥島の近海。ここでは、氷河期の最初の犠牲の地である。グレイと雅也は日本の研究チームとも連携し、調査船による調査を始めた。南鳥島近海は青い海が広がり、太陽光が海面に反射しており、とても犠牲の地とは思えないほど美しかった。
グレイ「ここが、最初の犠牲の地か…」
雅也「あぁ。日本の研究チームによると海上保安庁の巡視船むらさめが犠牲になった海域だ。」
雅也は、まず海面と海中の温度を測り、塩分濃度や潮の流れなど徹底的に調べた。
グレイ「どうだ?」
調査船の研究室にグレイが入ってくる。
雅也「あぁ、塩分濃度は素直だ。氷河期だった20年前は、低気温によって海底のナトリウムが微小に変化した形跡がある。でも、氷河期発生には…関係なさそうだ…」
グレイ「そうか…。」
雅也「でも、確かにここが一番初めなのは確実だ。ここの海底のナトリウムはどこの海底よりも早く変化した形跡がある。」
グレイ「やっぱり、ここから始まったのか。」
雅也「そうだと俺は推測する。しかし…これは明白は氷河期発生の原因とは言えないな…」
グレイ「つまり、地球の気候変動には…全く関係がなかったのか…?」
雅也「分からない…氷河期発生前夜、世界各地の気象観測所は地球の異変について何もとらえていないからな…」
グレイ「そうなのか?」
雅也「あぁ。」
結局、何も手がかりを得れぬままグレイと雅也は日本に帰国する。そして、明日の調査のため大阪にあるホテルに泊まり1泊する事となった。そこは大阪で一番大きなホテルで、復興真っ只中とは思えないほど外装、そして個室一つ一つがとても綺麗だった。雅也は、客室のベッドに座りパソコンを見ていた。
グレイ「何か気になる事でもあるのか?」
雅也「あぁ…。昼に調査した海底のナトリウムをさらに掘り下げて調べてみたんだが…」
雅也「氷河期前夜、あの海域全域のナトリウム濃度が急激に上昇しているんだ。」
グレイ「ということは…前夜、あの海底が高温で海底が熱せられた…ってわけか…」
雅也「さすがグレイ。御明答。」
グレイ「やっぱり、あの海域に何かありそうだな…。」
雅也「あぁ。それは間違いない。だが、明日は海軍工場に向かう。」
グレイは、雅也の言葉に疑問を抱く。
グレイ「海軍工場?それまたどうして?」
雅也「あの海底からさらに南東の沖ノ鳥島を航行していた船を今、海軍工場で保管されているんだ。さすがに、沖ノ鳥島まで行くには時間と労力が足りない。1度海底に沈んだその船ならもしかしたら海中の成分が船体に付着しているかもしれないだろ?」
グレイ「なるほど…。分かった。明日はそれで行こう。」
その後、2人は少し今日の分の調査書をまとめ就寝についた。
次の日、グレイと雅也は神奈川の横須賀海軍工場に向かった。この横須賀海軍工場は、日本政府が管理する国立工場である。2人が工場内に入って真っ先に目に入ったのは目的である船だった。
グレイ「この船は…」
雅也「海上自衛隊の護衛艦、あきづきだ。」
かつて、氷河期発生時にあきづきは沖ノ鳥島作業員救出のため沖ノ鳥島に向かっていた。しかし氷河期の巨大な氷塊雲によりそのまま沖ノ鳥島近海で乗組員もろとも凍りついてしまったのだ。氷河期が通り過ぎた時、あきづきは1度海底に沈んだものの、アメリカ海軍の海底調査船により発見され引き上げられたのだ。そして今、横須賀海軍工場で厳重に保管されている。あきづきの船体はサビまみれで、所々サビによる鉄の腐敗で穴が空いていた。2人があきづきの船体を眺めていると、工場の管理長が2人に駆け寄る。
管理長「こんにちは、お待ちしておりました。」
雅也「こんにちは。モスクワ国立気象観測所の崎村雅也です。こちらは同僚のグレイ・ロバートです。」
グレイ「こんにちは。初めまして」
雅也「さっそくですが管理長、あきづきの船体を調べでもよろしいですか?」
管理長「えぇ、構いませんよ。」
雅也「ありがとうございます」
雅也とグレイは管理長の同意の元、調査を始める。雅也は、船体の鉄を少し削り顕微鏡で確認する。そこには、やはり高濃度のナトリウムと海底の微生物が付着していた。
雅也「やはり…日本南東の海域では激しいナトリウムの変化があったようだな…。あきづきがここまで腐敗しているのは、高濃度のナトリウム(塩分)によるものだろう…」
グレイ「やっぱり日本南東の海域はみんな
同じ状態なのか…。」
雅也「…ここまで来ると…とても地球の環境変化による災害とはとても思えないな…」
グレイ「結局わからずじまいか…。」
結局、何も分からないまま2人は海軍工場を後にする。
雅也「なぁ、グレイ。」
グレイ「ん〜?」
雅也「俺、少し知り合いに用事を頼まれてるから、先にホテルにいっててくれ。合流するのは…多分夜中になると思う。」
グレイ「用事?まぁ、いいけど。」
雅也「じゃあ、また後で。」
グレイと雅也はその場で別れ、歩いて行く。雅也は近くのバス停に寄りバスの運行表を見る。
雅也「埼玉県行きのバスは…。お、もうちょっとでくるな。」
10分後、バス停に埼玉県行きのバスが来る。雅也はバスに乗り、横須賀から埼玉県に向かう。バスの窓から復興している日本の街が見えてくる。やがてバスは埼玉県に着き雅也はバスを降りる。
雅也「ここか…埼玉県…」
雅也は琴音から預かったメモを見て、目的の場所に向かって歩く。20分ほど歩いた。街の風景は住宅街へと変わっていく。やがて、目的の場所に着く。そこは、とある一軒家だった。この辺りは1度氷河期で凍りついたものの、氷が溶け以前の形のまま残っていた。一軒家の塀の名前には『崎村』と書かれていた。
雅也「ここが…琴音さんと親父が昔住んでいた家…」
雅也は、玄関に近づきドアを開ける。ギィーギィーっとサビた鉄の歪む音がする。壊さぬよう慎重に扉を開け雅也は部屋に入る。玄関は物が散乱していた。雅也は階段を上がり、琴音の部屋に向かう。廊下の一番隅にある部屋。扉を開け部屋に入る。そこはいかにも女子高生らしい部屋が広がっていた。雅也は部屋の中を見渡しながら勉強机に近く。机の上には一冊のノートが置かれていた。
雅也「琴音さんが言っていた宝物って…」
雅也はノートを手に取り中を見る。ノートの表紙には『日記』と書かれていた。表紙を開き中を見る。
四月六日 月曜日
今日から高校3年の一学期が始まります。まだ、高校卒業後の進路は決まっておらずお父さんやお母さんに「まだ決まってないの?」っと言われる毎日です。一方、弟の修也は「俺は宇宙飛行士になる!」っと明白な目的があるようです。そんな修也が少し羨ましいと感じながら、毎日を過ごしています。
数枚ページをめくる。
五月二十日 土曜日
今日は、珍しく家族みんなで遊園地に行きました。普段、家を出ない修也も珍しく家を出て、家族での時間を過ごしていました。修也がお昼に「お腹すいた〜」っと言いだしお父さんに屋台で買ってもらったフランクフルトを買ってもらった直後に地面に落としフランクフルトを食べれなくなり、絶望していた修也の表情は見る度に面白くて笑顔が浮かんで来ます。
雅也は、そのページに挟んであった写真を見る。その写真は遊園地の観覧車を背景に撮った家族写真だった。
雅也「これは…、親父と…琴音さん…。後ろの2人は…俺にとってお爺さんとお婆さんに当たる人か…」
雅也はさらにページをめくり最後のページを見る。
六十二日 日曜日
高校の期末テストも終わり、今日はゆっくりしようと思います。そういえば弟の修也が部活の大会で優勝したので、サプライズとして今日は修也の好きなチョコレートケーキをこっそり買っておこ
日記はここで途切れていた。この時、琴音は家族と一緒に急いで避難したのだ。
雅也「……」
雅也はゆっくり日記を閉じる。
雅也「これを…琴音さんに届けないと…」
日記を片手に雅也は部屋を出て階段を降りる。そして家を後にする。帰りのバスの中で雅也は考えていた。
雅也「『俺は宇宙飛行士になる』…か…。宇宙飛行士…宇宙……」
雅也「もしかして…宇宙が関係しているのか…?もしそうなら…地球上で何も手がかりが無いのも分かる。」
雅也はグレイに電話をかける。
雅也「もしもしグレイ?」
グレイ「お、雅也。用事は終わったのか?」
雅也「あぁ。そんな事よりグレイ!今からアメリカに行く用意をしろ!」
電話の奥でグレイは驚きの声を上げていた。
グレイ「アメリカ!?いやもうモスクワ行きの飛行機のチケット取ってるし!」
雅也「そこは頼む!手がかりを見つけたんだ!」
グレイ「て、手がかり…?もしかして氷河期の!?」
雅也「あぁ!!」
グレイ「わ、分かった!今からアメリカ行きの飛行機予約する!」
雅也「恩に着るよ!グレイ!!」
雅也は、バスを降り走って行く。後日、2人はどうにかアメリカ行きの飛行機に搭乗し日本からアメリカに行った。アメリカに行く目的はただ1つNASA(アメリカ航空宇宙局)だ。
グレイ「NASAだろ?でも、NASAは異変を特定してなかったんじゃ…」
移動バスの中でグレイは雅也に尋ねる。
雅也「あぁ。地球の異変はな。もしかしたら…あの時、宇宙で何かあったのかもしれない…」
グレイ「宇宙…か…太陽とか…?」
雅也「まぁ、そんなところだ。もう着くぞ。」
バスはNASAの本部前で止まり2人はバスから降りる。本部の受付に近づき2人は身分を名乗る。
雅也「HELLO。モスクワ国立気象観測所の崎村です。」
受付「身分を承認いたしました。本日はどのようなご要件で?」
雅也「20年前の太陽系の状況を見せてもらいたい。」
最初は、受付も断ろうとしたが身分が身分なので承認した。2人は案内されたのは太陽系調査班だった。雅也は、調査班の調査資料を見る。
雅也「20年前…20年前……」
雅也「………」
雅也「あった…!」
グレイ「マジ…?」
雅也「これだ…。20年前、太陽内でフレアの活動が非常に活発になったんだ…太陽は今までより強い放射線を発し、その熱戦はちょうど夏場だった日本列島に当たり…海底や海面は熱せられ、巨大な積乱雲か出来た…その積乱雲はさらに発達し太陽光を一切通さない程の暑さになり、地上の温度を急激に下げたのか…」
雅也「そして巨大な氷塊…これは、この巨大な積乱雲の中の水が磁力で集結し固まった物だろう…」
グレイ「なるほど…でも、なんでそんな簡単なことに…俺たちは気づかなかったんだ…」
雅也「氷河期になるケースは地球の気候変動によって発生するケースがほとんどだからだ。つまり、人類は自分たちの常識を視点にしか見てなかったって事だ…。自然は人間の思考とは程遠い物だからな…」
グレイ「なるほどな…。じゃあ、俺たちは20年前の氷河期について解明したって事か…?」
雅也「おそらくそうだろう。」
グレイ「よし…じゃあ、モスクワに戻って調査の結果をまとめよう。」
雅也「あぁ。」
グレイと雅也はその後NASAを後にし、アメリカからロシアに帰国する。その後、調査資料をまとめ全世界に発信した。メディアはこの事を『人類の考えは自然に及ばない』っというテーマで報道し、気候や宇宙について、さらに追求していく科学者が増加した。雅也はその後、再びモスクワの市立病院に向かい、琴音に会いに行った。ノックし病室を開ける。
雅也「失礼します。こんにちは、琴音さん」
琴音「あぁ…雅也くん…こんにちは…」
この時、琴音の病は悪化し琴音は衰弱していた。
雅也「日本に行ってきました…。そして、琴音の昔住んでいた家に行ってきました。琴音の宝物って… 」
雅也は琴音に日記のノートを手渡す。
琴音「こ、これ…。そう…私の宝物…。取ってきてくれて…ありがとう…」
雅也「この日記に助けられました…」
雅也は小声でそう言う。琴音はシャープペンシルを手に取り、ノートの最後のページを開く。
琴音「あの時…書けなかったもんね…。一番大切な事を…」
琴音は日記の続きを書き始める。
琴音「『買っておこうと思います…修也、優勝…おめでとう…!』」
琴音は最後のページを書き終え、シャープペンシルを持ったままベッドに倒れた。ピーっと言う、心肺停止を知らせる機械の音が病室中に響き渡る。琴音が亡くなった。雅也は目を閉じ、片目から涙を流した。その後、音を聞きつけた医者や看護師が心肺蘇生を試みたが、琴音は帰らぬ人となった。雅也は、ベッドの上の日記から落ちた家族写真を手に取る。そして、言った。
雅也「親父…あなたのお姉さんが今…」
雅也「あなたに会いに行きましたよ…」
【氷河の永夜:外伝 [完]】