テラーノベル
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⚠️創作の組織、キャラクターが登場します。
視点、時間軸の変化が多いです。
ー3年前ー
俺の名前は久我虎徹。
俺は冷たい風が吹き荒れる中早足でとある事務所に向かっていた。
なんでも最近急激に規模を拡大している他馬巣虎(タバスコ)という組織があるらしく、しかも違法薬物をシマの人間に勝手に流しているとくれば放っておくことができない。
今日は複数の支部に同時にカチコミをかけることになっている。
俺が担当する支部は規模が小さいので1人だが心配は要らないだろう。
久我「京極組じゃあ!」
そう言ってドアを蹴破ると真っ先に目に入ったのは異質な空気を纏う男。
ざわつく半グレどもを他所に、その男だけは堂々と椅子に腰掛けたままである。
久我「…ッてめえは!他馬巣虎のトップ、聖沢(ひじりさわ)!」
久我「(どうして巨大な組織のトップがこんな支部に…!)」
こいつの戦闘力に関しての情報はほとんどない。
噂によるとこいつは人心掌握に長けているらしく、その人間関係構築力で組織をここまで大きくしたらしい。
大丈夫だ、問題ない。俺ならやれるはずだと自分に言い聞かせ、その 動揺を悟られないようにナイフに手を掛けた。
俺の名前は紅林二郎。
知り合いの女性が無理やりヤクを買わされるという被害にあったと聞き動いている正義の殴り屋だ。
なんでもその半グレのボスである聖沢は位の高いdomらしく、コマンドと支配力で急速に勢力を拡大しているらしい。
こりゃあさっさと手を打たねえとまずいな。
とは言ったものの聖沢の居場所までは掴めなかったので、一旦末端の事務所に乗り込んで情報を聞き出すつもりだ。
事務所までたどり着いたもののなんだか中が騒がしい。
俺の行動が知られていたのかと思ったが、ここで引き返すほど俺は軟弱じゃねぇ。
正面からドアを開けて中に入ると手足が痺れるような感覚に襲われた。
紅林「(っ…なんだこれ、Glareか?)」
自分もなかなか上位のdomであるので、これほどの影響を受けることは初めてだった。
これは噂以上かも知れねぇな。
長くここにとどまるべきでないと判断し、部屋の奥へと踏み込んだ。
椅子に深く腰掛けた男を見て一目で分かった。纏うオーラが周りと違いすぎる。あいつが聖沢か。
その足元に人影が見える。倒れている男の服装と特徴的な髪型には見覚えがあった。
紅林「ッ久、我…?」
久我「…さい……ごめ…なさい」
紅林「(これは…subdrop⁉︎)」
倒れるように突っ伏している久我の体はガクガクと震え、床には吐瀉物が飛散している。
ヒューヒューと浅い呼吸を繰り返す久我の顔は真っ青で、ほとんど酸素を取り込めていないようだ。
放っておくと精神状態でなく命まで危ない状況だろう。
聖沢「誰だ?お前は。」
紅林「紅林二郎。こいつのパートナーだよ。」
聖沢「嘘つくなよ。声が震えてるぜ。」
獣のような鋭い眼差しを向けられ、体が怖気付くのがわかる。
いや、視線だけじゃねぇ。この威圧感、Glareか。
久我「ぁ…うぁ…ぐっ…ぅおえっっ」 ビチャビチャッ
紅林「ッ…‼︎」
久我が激しく吐き戻す。倒れた状態での嘔吐により気道が詰まったようだ。
咽せているがsubdropにより全身の筋肉がうまく働かない状態では詰まった吐瀉物を吐き出すことができない。
紅林「っ…Glareを解きやがれ!!」
聖沢「断る。お前を殺せばあとは容易く済みそうだ。 」
その瞬間聖沢はチャカを懐から抜いて、なんと床に倒れたままの久我に向けて撃ち込みやがった。
凶弾が久我の太ももを貫通する。 久我が痛々しい呻き声 をあげる。
紅林「ってめえ、本当に死にてぇんだな。」
聖沢「すごい気迫だな、紅林。それでこそ赤鬼だ!!」
完全にキレたぜ。 奴が瞬きする間に一瞬で距離を詰め、拳を固めた。
だが奴が銃を向けた先はまたしても久我だった。
しかも今度は頭に銃口が向いている。
紅林「っ…クソ野郎が!!!」
拳を収めて久我に覆い被さった。直後、俺の腹に激しい痛みが走る。
だが、三発目を許すほど俺は甘くねえよ!
足に力を込めて爆発的に体を起こし、奴に渾身の拳を捩じ込んだ。
紅林「死んどけ、聖沢ァ!!!」
奴の顔面は一撃で陥没。一瞬で意識をトばしやがった。
そこからは早かった。周りの半グレも碌に戦い慣れていないようで即座に全員をぶちのめすことができた。
伸びている奴らに構っている暇はねぇ。 慌てて久我の元に駆け寄り背中をトントンと叩いてやる。
久我「ぅ…ごほっ、げほっ…ぐ、ぁ…ひゅぅっ、かひゅっ…ぁ…」
喉に詰まっていた吐瀉物を無事吐き出せたようで、か細いながらも久我は呼吸をしている。
だがまだsubdropが治ったわけではない。 依然として反応はないままだ。
とりあえず足を縛って止血を施し、救急車を呼んだ。
小刻みに震える手を握り、頭を撫でてやる。
紅林「大丈夫、大丈夫だ。ほら、ゆっくり吸って、吐いて、吸って…」
久我「ぅ…はぁっ、ひゅっ、ふぅっ、うぁ…っ」
紅林「そう、上手だ。goodboy」
ーこわい、怖い、怖い、怖い怖い怖い怖い。
暗闇の中で ひたすらに落下し続けるような得体の知れない恐怖感。
手足は氷のように冷たく自由が効かない。
気持ち悪い。息ができない。頭が、足が、足が痛い。
こわい、たすけて、たすけて、たすけて、たすけて
久我「っ…⁉︎」
手が、頭が暖かい。少しずつ視界が開けてくる。
ぼんやりした視界の中映るのは赤色。いや、この顔は…
久我「ぁ…くれ、ばやし?」
優しく握られた手をグッと握り返すと、心配そうにこちらを見つめるその表情が少しだけ緩んだように見えた。
同じdomでもこいつの声は柔らかくて暖かくてすごく安心する。
まだ痛む頭をゆっくりと擡げると紅林は無理するなというふうに撫でて静止した。
紅林「久我!っ…よかった。とりあえずパートナーに連絡しろ。」
久我「い、ない…」
紅林「居ないって、そりゃどういうことだ?」
そう尋ねる声はとても優しい。
俺は回らない口で少しずつ話し始めた。
過去編まだ 続きます。
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