龍宮城の最上階から悲鳴が聴こえた。
ジタバタと暴れる音とその両方が混ざり合うのを聞けば
部下やリキなんかが駆けつけた。
すると心臓に手を当てて
もがくサーガラが居た。
呼吸は荒くて腹に血管の跡がある。
口から血を吹き出したのか
口の周りは真っ赤で舌を出して
何かを喋りたそうだ。
だが体が痙攣して言うことを聞かない。
「くそ…あの小僧…やりやがっ…」
バキバキと音を立てて
片腕が折れた。
リキが近づこうとすると、何かにリキは首を絞められた。
その手のようなものをゆっくりと掴んでみると
ヌルヌルとした何かで悪魔やらの何かだと
判断しざる負えなかった。何故なら触ると
手が腐敗するからだ。神の力だというなら
そんな神様居てほしくない。
リキはその手を切り落とし一歩下がった。
蠢くサーガラを横目に
リキが合掌印をして唱え始める。
「般若心経…
摩訶般若波羅密多心経
観自在菩薩行深般若波羅密多時照見五
蘊皆空度一切苦厄舎利子色不異空空不」
「異色色即是空空即是色受想行識亦復如
是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄
不増不減是故空中無色無受想行識無眼
耳鼻舌身意無色声香味触法無眼界乃至」
無意識界無無明亦無無明尽乃至無老死
「亦無老死尽無苦集滅道無智亦無得以無
所得故菩提薩垂依般若波羅蜜多故心無」
そこで切り落ちた手が震え始めると
リキはニヤニヤと笑った。
「圭礙無圭礙故無有恐怖遠離一切顛倒夢
想究竟涅槃三世諸仏依般若波羅蜜多故
得阿耨多羅三藐三菩提故知般若波羅蜜
多是大神呪是大明呪是無上呪是無等等
呪能除一切苦真実不虚故説般若波羅蜜
多呪即説呪曰
羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶
般若心経」
言い終わると手が消滅した。
サーガラも少しずつ落ち着いてきて
ゴロンと寝転がる。
「小僧…やりやがった…。苦しめやがってよぉ…」
「ここにいる奴、数年ほど俺に近づくな…。
俺は呪われてる般若心経を唱えようが
効果など気休め程度だ。」
「また腹の底が熱くなってきた。
俺は海から離れた天へ行くからリキは代わりに
沙伽羅(サーガラ)として居てくれ…」
口から血を垂らしながら
戸を開けて天へ昇った。
空から血の雨が降ったなんて言うまでもない。
地上は真っ赤になってしまった。
海も赤潮だ。
それから、しばらく悪天候で
天は慌ただしかった。
サーガラの同僚である難陀(ナンダ)徳叉迦(タクシャカ)
なんかは特に心配して
毎日見に来ていたそうだ。
血を吐くサーガラに薬湯を飲ませて
呪いを解こうと何ヶ月も寝ずにお経を唱えた。
リキは犯人を見つけようと
関係者を調べたりもした。
自分が何もできず不甲斐ないと涙しては
怒りで手が震えた。
体を真っ赤にして四本の手から六本、八本。
次第には100まで達したほどだ。
頭が沢山生えてきて
どれも怒りの感情を表している。
金色の瞳の裏には悲しみがあった。
世界一恐ろしい鬼神や破壊神と言われては
その形相に惚れ込んだ人もいたそうな。
リキはとにかく天まで届くほど
体を伸ばしてこう叫んだ。
「それでも神か!クソ野郎!!」
「呪いなんて消えちまえ!!」
そう叫ぶと同時にサーガラが死んだ。
除夜の鐘が鳴り響き
人々はジャンプしたが
天では神々が涙を流し悲しんでいた。
「まさか…沙伽羅龍王尊(しゃがらりゅうおうそん)
が息を引き取るなんて…」
「恩師だからとても悲しゅうございます…」
と涙した。阿修羅(あしゅら)に迦楼羅天(かるらてん)
と様々な仏様なんかも
来てくれたようで体から抜けたサーガラは
笑っていた。勿論、そのことを知っているものは居ない。
楽になったものだから
サーガラは一駆けしたいと天から出た。
すると仰天。
グーロが刃物を握って天界の階段を登っているのだ。
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