テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「うう…寒いな…」12 月頭の寒空の下由緒正しきナイトレイブンカレッジの中庭に一人の少女が井戸の前で座り込んでいた。
テストが終わりウィンターホリデー前な事もあり授業は半日で終わり、部活に所属しているわけでもなければ匿われているオンボロ寮に帰る気も失せている為静かな井戸の前に座り己の体温で暖を取っていた。
彼女は空を見上げ、立ち込めている雪雲のような息を吐き出した。
「宮代さん…!!」
後ろから声が聞こえた。少女は立ち上がり声が聞こえた方を向く。井戸の向かい側にはオンボロ寮の監督生で唯一自分の友達と名乗っているユウさんがいる。彼は心配そうにこちらを見ている。
ユウさんはこの学校の愛され枠みたいな人で私と同じく何故だか知らない世界であるツイステッドワンダーランドに飛ばされてしまいオンボロ寮に住んでいる。魔法も使えないのに色んな問題に巻き込まれ事ある毎に解決しまわっていて、いつの間にかみんなに認められる存在になっていた。
「大丈夫?こんなところに居たら風邪を引くよ?」
「…大丈夫。ちょっと一人になりたくて」
「…そっか、そういう時もあるよね。僕でよければ何時でも何かあるなら話聞くからね?…あ、呼ばれてるからまたね!」
誰かがユウー!と彼を呼んでいる声が聞こえた。彼はパタパタと足音を立てながらこの場から去っていった。
「はぁ、風邪引いちゃいそう…」
宮代と呼ばれた少女は、ユウの姿が消えたのを確認してまた井戸の前にしゃがみこみ大きなため息をついた。
━━━━━━━━━━━━━━━
オンボロ寮には監督生と呼ばれる青年ユウとその相棒の魔獣グリム。そして私、宮代茉白(みやしろ ましろ)が住んでいる。
私は監督生さんと同じく何の因果かこの世界に来てしまった異邦者である。目が覚めると見慣れた部屋ではなくボロボロの室内で、倒れていたところを保護したと監督生さんから聞いた。彼女にここは何処かと聞くと「ここはナイトレイブンカレッジだよ」と言われ聞いたこともない場所を言われ暫し混乱した。その後私は監督生さんからの厚い看病で元気になり、彼が学園長に協議を申し込み私と二人でグリムのお目付け役になった。(交代制でないとグリムが”元気”すぎて監督生さんだけでは目が離せず休息もできないと言い続けたそうだ。)
それから私は監督生さんと同じようにナイトレイブンカレッジの1年生として入学もとい転入した。
それから色んなことがあった。監督生さんと基本は行動を共にしてグリムの見張りをしている。が、彼は謎の巻き込まれ体質なのか色んな問題に対面しそれを解決していく。彼の度胸や強かさにみんなが惚れている。
そんな私はというと…
「い゛っ゛っ…」
ぼお〜っとしながら地面を見つめていると思い切り誰かから蹴られた。衝撃で地面に倒れた。頭を打って痛い。
ジンジンする痛みが後頭部から広がっている。
「おっと、ごめんなぁ。見えなかったわ!」
「コイツ誰?」
地面から身を起こすと知らない生徒三人が顔を覗き込んできた。
「うわ、こいつはオンボロ寮の監督生の金魚のフンじゃん」
「あー、いつも下向いて着いて行ってるだけのやつか!」
「そーそー、監督生は魔法が使えねぇけど度胸はある。のに…」
コイツは何にもほんとに持ってねぇんだよ!いっつも突っ立てるだけ!監督生がいなきゃ野垂れ死んでたかもしれないんだろ?笑えるな!!ギャハハ!!!能無しのくせになんでナイトレイブンカレッジにいるんだよ!
そんなことは分かってるから…放っておいてよ
早く寮に逃げよう。そして大好きなダンスの練習をしよう…
青年達の言葉に耐えきれなくなり、耳を塞いで急いで寮へと走り出した。
「私だって、こんなところにいたくていたい訳じゃないのに…」
逃げるために走って足を動かす度に肺には冷たい冷気が入ってくる。そのせいで心だけではなく身も凍るかと思った。
私は彼女と違って何も持っていない。この学校や世界にも未だに慣れないのだ。毎日毎日みんなに着いていくのに必死だった。知らない人、者、文化に戸惑い、不安からのストレスで薬学実験をミスしたり、ミドルスクール(小学生かな?)の子でも知っているようなこの世界では当たり前ことを知らないし、中々覚えられなくて困っていた。でもそんな私を監督生さんはいつも「大丈夫!僕も何も分からないんだ!」なんて言って助けてくれる。私は彼は信用できると思い安心した。だからできる限り行動を共にするようになったのだ。監督生さんも優しく不安そうな私と出来る限り一緒に行動してくれるようになったが、、
そんな日々を過ごしているといつの間にか私は「オンボロ寮(監督生)の金魚のフン」なんて呼ばれるようになった。