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ヒロユキの手から日本刀が消えて元の黒刀に戻る。
「……」
「ヒロユキっ!」
「……今のうちだ」
「……うんっ!」
みやは気絶してるリュウトを抱えて転移魔皮紙を起動させて出て行った。
「……」
静寂が訪れる……
「……出てこい、魔神」
そう呟くと魔神が無傷の身体で出てくる。
「貴様、何をした」
「……斬っただけだ」
「そんな事を聞いているんじゃ無い!この空間は俺が固定している!転移の魔法など発動できるはずがないのだ!それをお前は空間を切り裂き転移出来る穴を作ったのだ!」
「……だから何だ」
「有り得ないと言ってるんだ!」
魔神は尚も分析の魔眼でヒロユキを見る。
「お前の魔力は0!そこを尽きてるんだよ!」
「……」
そう、魔神が見えているステータスにヒロユキの魔力は0になっているのだ。
この空間に入ってからみやを隠すためにずっと魔眼を発動させていて武器召喚により魔力をさらに吸い続けられ、大技も使用した。
魔力が無くなるのは当たり前のことだ____だがヒロユキは立っている。
「……あぁ……頭が痛くて……目眩もしてて……身体もボロボロで……脳が今すぐ意識を手放せって言ってんだよ」
「そんな事を聞いていない!我はなぜ__」
「____だけど、それだけなんだよ」
「は?」
「……それだけだ……」
「っ!」
ヒロユキは目を見開き今までより一段と早く魔神に詰め黒刀を振るった!
「……」
魔神はヒロユキの黒刀を手で受け止める。
「クク、少し驚かされたが勢いだけだったようだな、この程度の力しか残っていないのに我を倒そうとするとは」
「……」
「どうした?もう限界で声も出ないか?」
「……兄さんが言っていた」
「?」
「……限界は……自分で決める物だッ!」
「!?」
受け止めていた魔神の手が、じりじりと押し負けていく。
「なっ……!? 貴様……何者だ! 【燃えろ】!」
次の瞬間、ヒロユキの全身が炎に包まれた。リュウトの時と同じ――焼き尽くす地獄の炎。
「……」
魔神の目には、ヒロユキのHPが確実に削れていくのが見えている。
「ハハハ! このまま燃え尽きろ!」
「……燃え尽きねぇ……俺の心の炎は、こんなもんより……熱いッ!」
轟、と炎が逆流し、全てがヒロユキの体内に吸い込まれていく。
「!!??」
「はぁぁぁああっ!」
振り抜かれた刃が魔神の片腕を吹き飛ばす。
――強化も奥義も神の武器も使わず、ただ純粋な力だけで。
「くっ……【凍れ】!」
距離を取った魔神が、今度は氷の魔法を放つ。
「……凍らない……俺は、ここで足を止めるわけにはいかない!】
足取りは、まるで氷上を歩くように静かで……それでいて確実に迫ってくる。
「な……なんだその力は……」
ヒロユキの手の中で、黒刀が静かに姿を変え、美しい日本刀が現れる。
【……俺を信じてくれている仲間を……親友を……兄さんを……裏切れるかよッ!!!】
両手で柄を握り、全力で振り下ろす――
「……」
「……」
刃は魔神を斬らず、虚空を断ち割った。
「………………! 貴様……!!!」
魔神は無傷――だが、顔には露骨な焦り。
「どうやって……我を“この身体に固定した”……!?」
――何度でも新たな肉体へ移り変わるはずの魔神。
それが、初めて、逃げ場を失っていた。
「……」
「答えろ!」
「……フッ……」
ヒロユキの刀を握る力が、すうっと抜けていく。
(あぁ……まだ……終わってない……のに……身体が……言うことを……きか……)
視界が揺れ、足元が遠のく。
もう倒れる――そう思った瞬間。
……ぽすっ。
硬い床ではなく、柔らかく温かい“何か”に受け止められた。
顔に触れるのは、弾力のある甘い香りのする柔らかい感触――オッパイのクッション。
「よく頑張った、ヒロ!」
耳に届いたその呼び方は、ヒロユキが元の世界で家族だけに呼ばれていた愛称。
「……兄……さん……?」
かすれる声で呟く。
「後は任せろ」
帰ってきた言葉は美しい女性の声だった。