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電話越しで誕生日を祝う冬彰の話/成人同棲済軸
『な、今電話していいか』
今まで微、たりとも反応を示さなかった端末が震える。目線を送れば、そこに現れるのは愛しい恋人のメッセージ。
でも、普段電話はあまりしない彼が自分から誘う姿に思わず頭にハテナ、が浮かんだ。疑問と不安、そして嬉しさを詰め込み、一言。
『何故だ?』
『別に、していいかって』
返信をすればすぐさま返ってきて、くすりと笑いをこぼしてしまう。『少し待ってくれるか』とメッセージアプリに打ち込み、先程まで張り付いて離れなかったデスクから立ち上がる。その反動に思わず倒れ込みそうになったのは内緒にしておこう。きっと彼はバカにするだろうから。
声の聞こえないよう屋外へ出て、電話をかけてみる。何度かコール音がなり、…5コール目ぐらいだろうか。ぶつりとコール音が切れ、繋がったことを悟る。
「もしもし。彰人、どうしたんだ?」
『おー、とうや、久しぶり』
「はは、そうだな、久しぶり。」
帰ってこない返事とあまり呂律の回っていない話し方に、酒を飲んだのだと察し、苦笑を漏らす。
確かに、久しぶり、だ。仕事の出張で遠方へ出かけたため、かれこれ1ヶ月ほどあっていないような気がする。久しぶりに聞いた金平糖のような甘い声にふわりと頬が緩むのを感じた。
『…とーや、元気か?』
「あぁ、元気だ。変わらず。彰人は?」
『ん、おれは、大丈夫。でも、とーやにあいたい』
通話相手の語尾がとろり、と溶け始め、熱い吐息が電話ごしでも伝わってくる。まるで情事を思い出させるような彼の声に呼吸をひとつ。そして、軽く頭を振る。
「…あきと、わざとか?」
『、どうだろ』
「全く…悪い子だな、」
『……じゃ、早く躾に来て。』
そんな魅力的なひと言を言われてしまったらどうしようもない。体が硬直して、息を飲み込む。ぐるぐると思考する頭が暑くて、バカになりそうになる。事実、ふと自身の顔に手を当ててみればじゅっ、と音がしそうな程熱かった。もう何も冷静に答えられそうにない。そんな時、耳元から彼の声がした
『…なにだまってんだよ、冗談に決まってんだろ。……、すけべ』
「すけ、って今のは彰人が悪い…そんなことを言われて冷静さを保てるほど余裕が無いんだ」
『ふーん……じゃ、早く帰ってこいよな、抱かせてやるから』
「だから、あきと……!」
わかったわかった、なんて中身の詰まっていなそうな返事にため息が漏れる。
『……てか、こんなこと言うために電話かけたわけじゃねーし。』
今は、58分か……もうすこし。なんて呟く彼に困惑する。なにか予定があったのだろうか、?そうならばこの電話は切って早めに準備をした方が良いのでは?そんな考えが頭に浮かぶ。
「……用事があるならば切っても大丈夫だ、俺ももう少しで仕事が終わるから…終われば明日の夕方には帰ることができる」
彼はんー、と考えるように声を漏らし、10秒ほど経っただろうか。
『……お、0時。』
「…そうだが……どうするんだ?彰人」
話を逸らす彼に呆れを含めて話しかける。こういうところは幼稚だな……。
「…彰人?」
『じゃ、切るか。…こんだけ言わせて』
「?」
『誕生日おめでと、これからもよろしくな冬弥。』
最後に一言。
『愛してる』
ぶつり
電話が切れた。
顔が熱い、頭が上手く回らない。なんで、彰人が。あんな
「……逃げるなんて、卑怯だ」
ここまで煽っておいて、逃げるのか。ずるい、
そう彰人への文句をいくつか零し、苦虫を噛み潰したような顔をしながら何十回も電話をかける。
絶対、逃がしはしない。
……後日、彰人にやりすぎだ、と傷んだ喉で怒られる冬弥
締め方が久しぶりすぎてわからないです。ではまた、