わややさんって偉大だと思うんだ。(唐突)
そういえば私、不穏系のお話あんま無いなぁと思い、書きました。
全然ハッピーエンドです。
・akfw
・fwモブレ表現有り
・暴力表現有り
・がっつりセンシティブ
・長い(5500文字オーバー)
それでも良い方はどうぞ。
side F
怖いくらいに誰もいない駅のホーム、ガラガラの電車、静かな住宅路を抜けて。
そのまましばらく進めば、もう見慣れてしまった外観の分譲マンションに辿り着く。
エントランスのモニターの前に立ち部屋番号3桁を入力し、躊躇いもなく呼び出しボタンを押した。
side A
「ふわっち……、」
ただ名前を呼ぶことしかできない俺を見て、彼はアザだらけの顔でいつもと同じようにへら、と微笑んで見せた。
酷い、あまりにも酷すぎる。
色白の綺麗な顔は、明らかに一方的に殴られたような痛々しい傷跡でいっぱいで、所々血が流れている。いつもシワひとつないシャツは、誰かに無理矢理掴まれたような不自然な乱れ方をしていて、胸元のボタンはいくつか無くなっていた。一瞬、首筋に太い指の跡が付いているのが見えて、ぎゅうと喉が詰まる。
そんな親友を前にして、俺は絶句した。何も言葉が出てこない。
ホストという職業柄、本当にごくたまに姫に頰をビンタされた、なんて話は本人から聞いたことがあったが、今回のこれはそんなレベルではない。
それに、これは俺の推測だが、相手は恐らく『男』だ。それも複数人。
顔のアザといい、服の乱れ方といい、首についた太い指の跡といい、明らかに女性が成人男性に負わせられるものではない。
でも、つまりそれって、
「あきなぁ、」
「俺、レイプされちゃった。」
そうするりと発した親友の顔は、やはりいつもと変わらなかった。
親友が、レイプされた。
俺のところなんかより、警察とか病院とか、もっと先に行くべきところがあるんじゃないか。そもそもその男たちはどこに行ったのか。
聞きたいことが山ほどあるが、ひとつも言葉にはならない。それは俺がまだガキだから。目の前のボロボロの親友に、大好きな大好きなふわっちに、何ひとつ言葉もかけてやれないただのガキだからだ。
「なぁ、あきな。」
俺が何も言えず立ち尽くしていると、ふわっちがふと口を開いた。
「哀れな親友のお願いだと思って聞いて欲しいんやけど、」
「俺のこと抱いてよ。」
え……?
「あきなにこんなこと頼むなんて間違ってる、よな。」
「でも、俺の我儘、聞いて。」
「愛してほしいなんて言わない、今日限りで友達やめたってええから、」
「お願い、忘れさせて。めちゃくちゃにしてよ、あきな。」
震えた声で縋るように言うふわっちを拒むことなんて、俺にはできなかった。
電気もつけず、寝室のベッドに引っ張られるようにして倒れ込む。ふわっちに胸ぐらを掴まれ、引き寄せられるように口付けると、一瞬「友達同士なのに本当にこんな事していいのか」という思考が頭を過るが、ふわっちが短い舌を必死に伸ばし絡めてくる様子がどうしようもなく可愛くて、友達だとか男同士だとか、そんなことどうでもよくなった。
ふわっちの口内は熱くて、少し血の味がする。多分殴られた時に口の中も切れてしまったのだろう。痛くないかな、と心配したが、俺の舌が傷口に触るたびに甘い嬌声が漏れるものだから、今のふわっちは痛みすら快感として拾っているらしい。
「んッ、ふぅッ♡、あきな、あきなぁ♡」
不安そうに、縋るように首に手を回し、目に涙を浮かべながら俺の名前を呼ぶ。その声があまりにも甘くて、男に手を出されるのも少しだけ納得だな、なんてことは思っても言わないけど。
頰、首筋、鎖骨、胸……、服を脱がせながら、徐々に口を下に移動させていく。
肌が露わになると、首筋についた指の跡が目立つ。やっぱりこれ、首を絞められた跡だ。息もできず、苦しかっただろうに。抵抗も出来ずに犯されるなんてどれほど恐ろしいのか、考えたくもない。早く忘れさせてやりたい。
ふわっちの香水と、知らない男の体臭が混ざったような匂いがして、今すぐ掻き消したくてひたすらキスを落とした。
「んやぁ、あきなっ、それだめッ…♡♡」
ふわっちが擽ったそうに身を捩るので、邪魔な腕をシーツに縫い付ける。普段なら彼の方が圧倒的に力が強いはずなのに、今は完全にされるがままだ。
胸の突起を舌先で弄ってから噛むようにして吸うと、びくんと腰が揺れた。
「んぃッッ!!?♡♡、ぁ、ひ、んんぅ♡♡」
頭の上から快感を噛み殺したような声が聞こえてくる。唇を噛んで必死に耐えてるみたいだけど、ふわっちの可愛い声、もっと聞きたいな。
「ふわっち、相手は俺だよ。声抑えないでよ、唇怪我しちゃう……。」
「ちが、あきなだから、やなのッ…!♡」
俺だからやだって?抱いてほしいって言ったのふわっちだよね?
ふわっちの言葉の意味はよく分からないが、この状況で聞き返すのもなんか変だし……。
とりあえず今は早くふわっちから男の影を取り除こう。
胸から順々に手を下ろして、腰のラインをなぞっていく。
あ、ここにも掴まれた跡が……。白い肌に目立つ紫色のアザがどうにも苛立たしくて、そこにも執念深くキスマークをつけた。
ふわっちのズボンに手をかける、ベルトはして無かった。
ズボンを下ろすと、ふわっちのものは既に反り上がっている。一度前でイくべきかな、とそれに手を伸ばそうとすると、ふわっちに静止された。
「も、そっちはええからッ、」
「おねがい、はやくいれて……?♡」
ぐ、と足を開いて、誘うような熱を孕んだ視線を送られれば、断ることなんでできない。
初めて親友をそういう目で見た。今まで色っぽいとか、時々えっちだよな、なんてことはちょっぴり思ってたけど、「性行為の対象」として見たことなんて一度もなかった。
だけど、使われて間もないであろうまだ緩いそこをこんなふうに見せつけられたら、俺のストッパーを外すのには十分だった。
side F
ずぷ、という音と共に、特有の異物感に襲われる。
数時間前に感じたものと同じ、だけど気持ちよさは段違いだ。
(好きな人のなら、こんな気持ちよくなれんのやな。)
俺は痺れる頭で考えた。
俺を犯した相手は、職場のホスト仲間2人。仕事終わり、帰り際に声をかけられ、薄暗い路地裏に連れて行かれた。その時点で逃げるべきだった、なんて今更後悔しても遅いけど。
その2人は仕事中も結構話す仲で、疑うなんて出来なかったんだ。いい仕事仲間だと思ってたのは俺だけみたいで、2人は俺のことを目障りに感じてたって言われた。
No. 1で、気取った態度が気に食わなかったんだって。俺そんな気取ってたかなぁ……。
そんな愚痴やら暴言を黙って大人しく聞いてたら、突然顔や腹なんかを殴られて、2対1で勝てるはずもなく、その間意識がぶっ飛びそうなのを必死に堪えるしか出来なかった。
ああいう街って、ホスト同士の暴行事件とかザラだから、気づいた人も我関せずで通り過ぎていくんよね。前の俺だってそうだった。
ひたすら殴られて抵抗も出来なくなった頃、男の1人に胸元のシャツをボタンごと引きちぎられた。きっと殴られるだけで終わる、なんて考えてたから、もう絶望したよ。
無理矢理壁に手をつかされ、拒む暇もなく下の服も脱がされる。後ろの穴に、デカくて硬い何かが当たる感覚がした。
(慣らすことも許してくれないんか……。)
ずず、と割って入ってくる異物感、不快感、そして恐怖感。
ああ、こんなの嘘や。俺初めてなのに。
好きでもないやつに犯されるのか。
痛い、痛い痛い、苦しい、怖いよ、
足が自分の意思に反してカクカクと震える。
怖い、助けて、誰か。
「…いや、いややぁッ、あきな、あきなぁ、たすけてぇッッ!!」
その時咄嗟に呼んだのが、明那の名前だった。こんな時になってやっと気づいたよ、好きだったんだって。
呼んだって来るはずもないのに、
「ふは、誰だよそれ。もしかして彼女とか?」
「あきなちゃんには悪いけど、不破くんは今から男に犯されちゃいま〜す!」
ギャハハ、と笑う声がする。
やめろ、もうやめてくれ。
ボロボロと零したくもない涙が後から後から溢れてきて、それを見た男たちはより一層笑い声をデカくした。
代わる代わる出し入れを繰り返され、俺の中は精液が混ざってぐちゃぐちゃだった。
散々イかされて、喘がされて、泣かされて。満足したのか、2人は意識も絶え絶えの俺を放置してその場を去っていった。
去り際にシャッター音がしたから、多分撮られた。俺の人生終わったかな。歌舞伎町のNo. 1ホストが路地裏で青姦、なんて見出しでネットに晒されたら、お客さん減るかなぁ。それともどっかに売られたり……。
「ふわっち。」
「ぁ、え……、」
突然名前を呼ばれて、意識が現世に引き戻される。見ると、あきなが少し心配そうにこちらを見つめていた。
ああ、そうや俺、あきなとえっちしてたんだ……。
「ねえ、余計なこと考えないでよ。忘れさせてって言ったのふわっちでしょ?」
「今は俺のことだけ考えてて、」
ずり、とあきなのが前立腺を掠める。
「んぁッ♡♡、ごめ、ごめんなさッ…♡」
「ふわっちでしょ?」なんていう割には、その顔は完全に雄の顔だった。
あきな、俺に興奮してくれてるんや、嬉しいな。
少し拗ねたような、そのグレイッシュブルーの瞳が俺を映すたび、きゅんきゅんとお腹が疼いて仕方がない。
好き、俺、こんなに好きなんだよ、あきなのこと。
レイプされて体ボロボロでも、真っ先に会いにいくくらい好きなんだよ。
「愛してほしいなんて言わない、今日限りで友達やめたってええから、」
なんて嘘だ、
愛してほしい、あわよくば恋人になってほしい。今日限りでおしまいなんていやや。
あきなは優しいから、可哀想な親友の願いを受け入れてやっただけ。こんな有様で頼まれたら断れんもんな。そんなんわかってる。
でも好き。こんな俺を受け入れちゃう愚かすぎるくらいの優しさも、初めて見た、欲を隠す気もないその顔も。全部好き、大好き。
俺の全部あげるから、お願い、好きになってよ、あきな……。
「うぅッ、あきな、あきなぁ……ッ」
「!?」
無意識のうちに涙がボロボロと零れてきた。今日泣くの何回目やねん、情けな。
あきなは突然ガチ泣きし出した俺を見て、さっきまでの欲情が嘘のようにオロオロと焦っている。
「嘘っ、ごめん、どっか痛かった!?
ぁ、やっぱ体キツいか、そうよね、ごめんね、ごめんふわっちぃ……俺、正直止まれんくなっててぇ…。」
いったん動きを止め、「怖くないよ、落ち着いて。」と抱きしめながら優しく頭を撫でてくれる。ああ、やっぱ好きだなぁ、
「セックスなんてせずに、初めからこうすれば良かったね。ごめんね、俺、どうしたらいいか分かんなくて。」
「んんッ、ちゃう、たのんだのは俺やし…、」
「ううん、違うの。」
なにが違うの……?
あきなの少し悲しそうに微笑む顔が映る。
「変な話だけど、さ。俺、ふわっちの彼氏でもないのに、めちゃくちゃ嫉妬した。」
「今だって許せないよ、俺のふわっちなのに!って内心すごい怒ってる。」
「それに……、ふわっちに興奮したんも事実。最低な目に遭った後の人にこんなこと言うの、マジで失礼なことはわかってんだけど……正直めっちゃエロいよ、ふわっち。」
「おかしいよな。俺ら友達なのに。」
「……明日には、もう友達ですらなくなっちゃうんだけどさ。」
…ぁ、あ、待って、そんな顔しないで、あきな。
違うよ、俺も、俺も……、
「おれも、すき。」
「……ふわっち…?」
なんの“も”なのかはよく分からないけど、こう言わないとあきなが離れていってしまう気がして、必死に言葉を紡いだ。
「ともだち、やめてもええなんて嘘や、はなれたくない、すき、あきな、すきなの、」
視界がぐちゃぐちゃで明那の顔が見えない。ねえ、なにか言ってよ。
そう思った瞬間、ぎゅう、と痛いくらいに強い力で抱きしめられた。一気にあきなの匂いが濃くなって心地良い。
「もう、泣かないでよ…俺だって離れたくない、一生いっしょにいたいよぉ……、」
耳元で泣きそうな声で言われる。お前も泣いとるやん、なんて今は言えるはずもない。
「ふわっち、友達やめるなんて言わないで。愛さなくて良いなんて言わないで。」
「愛してるよ、全部、全部。」
その瞬間、ぶわっと体温が上がる。
体の痛みも、アザも、なにも気にならない。ただ目の前の大好きな声に、姿に、魅入られている。
「……ほんと、?ほんとに?、おれ、汚れちゃったけど……、」
「それでもええの、?」
「んは、汚れてるわけないじゃん、」
「大好きだよ、ふわっち。」
愛おしそうに微笑む君は、今日も綺麗だった。
翌日から、俺はしばらくの休暇を取った。というか、あきなが強制的に取らせた。
後日、オーナーから聞いた話だが、あいつらは捕まったらしい。
今回の件だけでなく、危ない薬とか詐欺とか、他にも色々やっていたらしく、それが明るみになったんだとか。
勿論ホストクラブは強制解雇、今は檻の中でよろしくやっているだろう。
そして幸いにも、俺の写真が流出することはなかった。
なぜ犯人たちの顔が割れたのか、証拠はどこから出たのか。諸々不可解な点が多いが、俺が休んでいる間に何があったかはなにも分からない。
あきなに聞いても、
「ふわっちは余計なこと考えなくていーの!」
なんてはぐらかして、何も教えてくれない。
まあ、あきなが言うなら別にいっか。
「んは、」
「なーに?ふわっちご機嫌じゃん。」
「ん〜、好きやぞあきなぁ。」
「えっなにそれ、俺の方が好きだし。えっちする?」
「やだぁ、あきなの変態。」
なんかあきなが前より性欲オープンになってる気がすんだけど……、
それはまた別のお話。
END
コメント
18件
やばい、ほんとに天才すぎます…ストーリーが毎回神なんですよ!!!こんな小説かけるようになりたいです… というか最高すぎて今なら飛べそうです(?)
泣けるけどえっちってどういう事ですか…感情の起伏が激し過ぎて倒立出来そう… わややさんも凄すぎるけど、らせんさんも凄すぎますぅぅぅ😭✨
今日死ぬんじゃないかってくらい好きです;;ありがとうございます供給えぐいですほんとに