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結衣が連れ去られて数時間。激しく降っていた雨は少し静かになり、静かなリビングで詩季と私は、結衣が残した一枚の紙をテーブルに広げ、向かい合って座っていた。
詩季「う〜〜ん… …全然わかんないよ〜…」
詩季が頭を抱えた。
沙夜「まず…最初のこの行…。『たひ わみ さみ ないつ なひ かひ』… …何かの呪文…?」
紙を指でなぞった。
詩季「いやぁ…結衣がそんな回りくどいこするかなぁ?もっと、もーっと、直接的なヒントだと思うけど…。」
詩季はナイフを手に取り、光にかざしてみる。紫色の刃に、部屋の明かり入り込み、淡く光った。特に何も書いていないし、刻まれてもいない。
沙夜「ねぇ…詩季。『たひ わみ ないつ なひ かひ』…このひらがなと、隣のそのひらがな、何か法則とかない?」
詩季「えぇ、ひらがな…?『た』と『ひ』、『わ』と『み』… …うぅん…」
ずっと文字を見つめていると、頭の中に一つの物が浮かび上がってきた。
沙夜「…!!詩季、これって、ケータイ打ちじゃない!?」
詩季「ケータイ打ち…?あの…ガラゲーの?」
沙夜「そう!『あいうえお… …』って、何回かタップすると文字が変わるやつ!!」
空中で携帯を打つ仕草をする。
詩季「あー!!なるほど!?でも、それだと…あ!そっか、じゃあその横の文字って…!!」
沙夜/詩季「「昔の数字の読み方だ!!!」」
詩季「『た』『わ』『さ』『な』『な』『か』……これは、ケータイ打ちの行を表していて、そして、『ひ』『み』『み』『いつ』『ひ』『ひ』……これは、何回タップするかを表していて…!」
沙夜「『ひぃ、ふぅ、みぃ、よ、いつ、む、なな、や、ここの、とお』… …これは…1から10の数え方…!」
詩季「じゃあ!『ひ』は一回、『み』は三回、いつは五回…!ってこと!?」
沙夜「多分そう…!」
私達は急いで解読を始めた。
沙夜「『た』行の1回目は……た!」
詩季「『わ』行の3回目は……ん!」
沙夜「『さ』行の3回目は……す!」
詩季「『な』行の5回目は……の!」
沙夜「『な』行の1回目は……な!」
詩季「『か』行の1回目は……か!」
詩季/沙夜「「タンスノナカ!」」
詩季「タンスの中…そうだ!あの謎の機械を隠したタンスだ!」
詩季は急いでタンスに駆け寄り、扉を開けた。
すると、〝機械〟と書かれた段ボールを思いっきり開けた。
中にはあの黒く光る機械が寂しく置いてあった。
詩季「…これの何処かに、なにかあるのかな。」
詩季は機械を手に取り、裏側にひっくり返した。
すると、結衣の字で次の問題を解いて。と書かれていた。
沙夜「この紙に書いてある次の暗号かな…」
詩季「『ことむいつよ』… …と、、『k7úč』と『7⇧』…」
沙夜「『ことむいつよ』は、さっきの法則を使えば…『9、10、6、5、4』…」
詩季「うーん…『9、10、6、5、4』ね。絶対この機械に関係あるんだろうけど…」
私はふと、目線を部屋の隅に置かれたノートパソコンに向けた。
沙夜「ねぇ、詩季。この『7⇧』ってもしかして…」
私は立ち上がって、PCのキーボードに手を伸ばした。
沙夜「『7』のキーの隣に『⇧』のマークがあるキーがあるじゃん?これ、Shiftキーのことじゃない…?」
詩季「Shiftキー?」
沙夜「うん、PCでShiftキーを押しながら『7』を押すと、『’』になる。」
私は紙に『k’úč』と書き込んだ。
詩季「でも…これだと意味が通じないよ…?」
詩季が首を傾げる。
沙夜「あ…結衣は、ただの『’』じゃなくて、**『⇧』**の棒の部分(アポストロフィの形)をヒントにしたんじゃ?」
私はその『’』を少し変形させて**『kľúč』**と書き直した。
詩季「…!!これ、スロバキア語で『鍵』って意味だよ!!」
詩季がスマホで検索して叫んだ。
沙夜「鍵…、」
詩季「打ち込む場所は…!」
詩季は、機械をタンスに戻し、他の段ボールを開け、、その数字を打ち込める機械を探した。
少し大きめの段ボールの中に小さなダイヤル式のロックが付いている機械を見つけた。
詩季「これだ…!9、10、6、5、4!」
詩季が数字を合わせると、カチリ、と小さな音がして、機械の蓋が開いた。
中には、結衣のナイフと同じ濃い紫色の小さな魔法石が2個、収められていた。もう一つ、収められるところがあったが、もう一つは恐らく結衣がつけているのだろう。
沙夜/詩季「結衣… … !」
私達は顔を見合わせ、強く頷いた。
結衣が残してくれた、最後の希望。
二人は、魔法石を首にかけ、夜の街へと駆け出した。