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「……彩希、今日さ」
彩希「んー?」
歩きながら、何度も言おうとしては飲み込んでいた言葉を、やっと口に出した。
「駅前のイルミネーション、もう始まってるらしいんだけど……一緒に行かない?」
彩希「えっ」
一瞬驚いた顔をしたあと、ぱっと表情が明るくなる。
彩希「行く!行きたい!」
……よし。誘えた。最近デート行ってなかったから嬉しいな。
駅前は思っていた以上に人が多くて、白や青の光が、静かに冬の空気を照らしていた。
彩希「わぁ……きれい……」
「……うん」
彩希は無意識に私の袖を掴んでいて、その指先が冷たくて、でも離れる気配はなかった。
しばらく並んで光を見上げていたけど、ふと、会話が途切れた。音も、人の声もあるのに、二人の間だけ、静かだった。耐えられなくなり彩希の方を向いた瞬間
(っ…⁉近っ…!)
彩希も予想していなかった距離の近さに黙り込んでしまった。だがお互い離れようとしなかった。その沈黙が背中を押した。
「ね、ねぇ…。キスってレモンの味するっていうよね」
彩希「そ、そうだね」
「や、やってみる…?」
彩希「う、うん…」
ゆっくり顔を近づけようとした。だが
「そ、その…。目…閉じてほしいかも…」
彩希「あっ⁉ごっ、ごめん!こういうの初めてだから…」
そして彩希が目を閉じたのを確認してまた顔をゆっくり近づけた。そして――
ほんの一瞬、触れるだけのキス。
彩希「…っ」
(やばい…。したのはいいものの…)
彩希「味…。わかんないや、えへへ…」
イルミネーションはまだ光っていたけど、もうそれどころじゃなかった。