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幼少期、俺は兄に暴力を振るわれていた。今思い返してみれば出来損ないで強くない兄達が優れた弟に嫉妬し、悪あがきしているようにしか思えないが。しかし幼い体が毎日のように暴力に耐えれる筈がなく、酷い時は次の日寝込むまでに暴力を振られたものだ。そんな兄たちから自分を守ってくれ、何かと気にかけてくれた年の離れた従兄弟の甚壱くんだった。甚壱くんは甚壱くんが見ていない時に兄達に暴力を振られた俺の体を見て何度も謝った。
「俺がずっと見ていなかったばかりに。すまない」と、顔を顰めていた。今では俺にきっと見向きもしないのだろう。甚壱くんのことは好きだった。優しくて割と才能もあるし、人望もある。そんな甚壱くんの目には兄に虐められる哀れな子にしか映らなかったんだろうか。そうやって思い出したくもない過去を思い出しながら廊下を歩いていたら偶然甚壱くんに会った。お決まりの髭、お決まりの髪型。久しぶりだった。ここ最近の甚壱くんは何かと自分の部屋に篭もりっぱなしで会う機会がなかったからだ。
「甚壱くん、久しぶりやな」
特にこれといった話題はないのだが何故か話しかけてしまう。幼い時もそうだったがわざと傷を作って甚壱くんに慰めてもらいに行ったことがあった。何故なのだろうか。そうこうしているうちに甚壱くんが喋る。
「…ああ、そうだな」
内心それだけしか言わんのかいと思ったが、ここで会話をやめると甚壱くんのペースに飲まれる気がしたのでむしろ話続けてやろうとも思った。
「なんや?それだけかい。甚壱くんはなんも変わらんなあ。久しぶりに会ったんやし他にもっと言うことあるやろ。そんなんやから嫁の1人や2人も娶れないんやで」
甚壱くんの前でもいつもの余裕そうな顔を作る。
「相変わらずその態度か、お前も変わらないな」
そう言い終わった後自分を通り過ぎて背を向けている。なんだかとても悲しいというか寂しいというか。兄達に暴力を振るわれた時よりもこの気持ちが大きい。
「なんでなんやろ」
そう呟く。