プラネット号による二連装ビーム砲四基による主砲斉射の奇襲攻撃はセンチネルの艦艇一隻を撃沈。センチネル艦隊は突然の奇襲を受けたがプログラムに従い反撃を開始した。
「ミサイルランチャー一番から八番、斉射!このまま引き付けます!撃てー!!!」
ラーナ4軌道上で壮絶な艦隊戦が勃発、ラーナ4の人々もこの好機を逃す筈がなかった。
「打ち上げ始め!戦闘機隊は我に続け!」
センチネル艦隊の注意がプラネット号へ向いたその隙に隠していた輸送船を打ち上げ、更にX型スターファイター10機が輸送船を護るように展開した。
『ティナ!輸送船が軌道上に上がりました!』
「よぉし!このまま脱出するよ!フェル!プラネット号を輸送船の側に!」
《分かりました!》
激しく撃ち合いながらもプラネット号は輸送船の側に陣取る。ハンマーヘッド級は駆逐艦に分類されるが、対センチネルを想定して重武装と重装甲化が図られていた。
反面格納庫や居住区が圧迫されてしまったが、センチネル偵察艦隊を構成する哨戒艇(アード側の呼称、正式名は不明)相手に負けることはなかった。
『警報!センチネル艦隊より高機動体多数が排出!スターファイターです!』
《ティナ嬢!君は輸送船から離れないでくれ!各機続け!》
テルス率いるスターファイターがセンチネルの戦闘機を迎え撃つ。
《物凄い数です!》
《怯むな!我々の後ろには護るべき同胞が居るのだぞ!》
交信と双方のビームが飛び交う。数多の閃光が宇宙を輝かせ、そして消えていく。
センチネルのスターファイターは数にものを言わせてアードのスターファイターを潜り抜け、輸送船へと迫る。
『マスターフェル、センチネルのスターファイターが接近してきます!』
「全武装の使用を許可します!弾幕を張って!」
迎撃を潜り抜けたセンチネルスターファイターは、プラネット号による凄まじい弾幕射撃による歓迎を受ける。
「輸送船もプラネット号もやらせるもんかぁあっ!」
更に弾幕の中へ飛び込んだティナは、今まさにプラネット号へ迫るセンチネルスターファイターへビームを叩き込み、主翼をへし折られたセンチネルスターファイターはそのまま制御を失いながら爆発する。
「ティナ!?また無茶を!撃てー!!!」
チャージが終了した主砲群が再び斉射を行い、哨戒艇のシールドと装甲を容易く貫いたビームはそのエネルギーを存分に発揮させて船体に大穴を開ける。
数秒後、漂う哨戒艇は目映い閃光を放ちながら大爆発し、周囲に展開していたセンチネルスターファイター諸とも宇宙に消えた。
「輸送船の足が遅い!?テルスさん!何かありましたか!?」
《動力部の故障が発生したみたいだ!済まないが、これ以上は速度を出せない!》
輸送船の速力が遅いことに気付いたティナの問いに、輸送船と交信したテルスが応えた。
整備こそしていたが、急遽使うことになって事前の点検を大幅に省いた弊害が現れたのである。
「分かりました!アリア、ゲートまでどれくらい!?」
『現在の速力では30分は必要になります』
「そんなに!?このっ!」
背後に回り込んだセンチネルスターファイターに対して宙返りでやり過ごし、飛び出したところへビームを叩き込み爆散させながらも、ティナは内心焦りを感じていた。
既に哨戒艇は一隻だけ、センチネルスターファイターも数は多いが味方の連携で間も無く掃討は終了するだろう。しかし、問題はセンチネルの増援である。
偵察艦隊相手とは言えここまで被害を与えたのだ。送り込まれてくるであろう増援の規模を考えると、今すぐにでもゲートへ飛び込みたい衝動に駆られた。
『警告!最後の一隻が増速しました!』
「特攻するつもり!?させるかっ!」
《ティナ!?》
アリアの警報を耳にしたティナはギャラクシー号を一気に加速させて残る一隻の哨戒艇へ接近する。
当然哨戒艇も搭載する火器をフルに使って反撃を開始。結果、ギャラクシー号は弾幕の中へ飛び込む結果となった。
《ティナ嬢!引き返せ!》
スターファイターが単独で艦艇へ攻撃を仕掛けるのは無謀な行いである。攻撃する際には充分な数で多方向から攻撃、その火力を分散させることが基本的な戦術なのだ。更に言えば、艦艇に搭載されているシールドを撃ち抜くにはスターファイターに搭載できる武装だと火力が足りないのだ。
当然単独で突き進むティナの行動は自殺行為そのものなのだが。
「シールドを前方に集中!突っ込むよ!」
その弾幕をものともせず、更に加速しながら突っ込むティナ。そして弾幕を掻い潜り、鮫に似たような形をした哨戒艇の懐へ飛び込み、その背びれのような部位に照準を合わせて。
「いけーっ!!」
超至近距離から最大出力までチャージしたビームを撃ち込んだ。
至近距離から撃ち込まれたビームはシールドを貫き、背びれのような部位の根本を吹き飛ばしてしまう。背びれのような部位は、哨戒艇クラスのブリッジに相当する部分であり、これにより制御を失う。
《撃てー!!!》
その直後、チャージを終えたプラネット号が三度目の斉射を行い、制御不能に陥った最後の哨戒艇を見事に爆沈させた。
《何てこった!》
《やりやがったぞ!あの嬢ちゃん!》
《凄いな!前代未聞じゃないか!?》
スターファイター単機で艦艇へ大打撃を与えると言う前代未聞の成果に、アードのパイロット達から歓声が挙がる。
《いや、驚いたよ。見事なものだな、ティナ嬢!》
「皆が居てくれたからですよ」
《謙虚だな、我々も負けてはいられない!子供が頑張ってくれたんだ!大人としても活躍しないとな!》
《おうっ!!!》
テルスを中心にパイロット達も奮起。母艦を失ったことで不具合が生じたのか動きが明らかに鈍くなったセンチネルスターファイターを掃討するのに10分も掛からなかった。
劣勢を覆し、更に犠牲者も出さぬ大勝利を収めた一行は輸送船を護りつつ意気揚々とゲートへ向かう。
『ゲートまで残り15分です』
だが。
《ティナ!ワープアウト反応多数を確認しました!増援、来ます!》
フェルからの急報を聞いた瞬間、宇宙に無数の閃光が生じた。それはセンチネルの艦艇がワープを終えたことを意味していたが……。
『センチネル増援艦隊を確認。数は……10……100……1000……1万』
「……は?」
絶望が、襲い掛かってきた。
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