テラーノベル
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原因はほんまに些細なこと。
侑が練習後にチームメイトと飯を食いに行って、
帰りが遅くなった日。
『せめて一言くらい連絡してよ』
「……は?俺忙しかってん。しゃーないやろ」
その言い方に、🌸が少し強めに返す。
『忙しいのは分かるけど、だったら心配くらいさせないでよ』
「だから言ってるやん。しゃーないって」
普段ならここで笑って誤魔化す侑が、
今日に限っては疲れもあって、イラッとした。
『そうやって自分の都合ばっかりじゃん』
「……お前もやろ。
いっつも俺のペース乱してくるやん。」
『乱してないよ!』
「いや乱してる。めんどいねん、そういうとこ嫌いやわ」
言った瞬間、空気が止まる。
「………………あ」
自分でも
「言った?俺今ほんまに言った?」
って、顔が固まる。
🌸の表情からすっと熱が消える。
声も、震えてる。
『……そっか。
分かった。ちょっと出てくるね』
「待っ──」
止める声も遅く、
扉が閉まってしまう。
その音が、侑の胸をえぐる。
扉が閉まった瞬間、
侑はその場で髪をぐしゃっとかきむしる。
「……あ、やってもうた……っ」
強がりも、プライドも、
全部一瞬で吹き飛ぶ。
「なんで俺、あんな……
あんなこと言うん……?」
普段は“俺最強”みたいな顔してるのに、
今は本気で青ざめてる。
口の中がカラカラで、
心臓が痛いくらい速い。
「嫌いやとか言うわけないやろ……
俺が誰より好きなん、お前やのに……
アホちゃうか俺……」
目を手のひらで押さえながら、
壁にもたれてずるずる崩れ落ちる。
「離れたらあかん……
無理や……」
⸻
追いかける決心は、30秒でつく
「……今すぐ連れ戻す」
靴もろくに履けてない状態で飛び出す。
夜の道を早足で、半分走って。
「待って……ほんま待って……!
お前がおらんとか……無理や……」
息が切れてるのに止まらない。
ベンチに座る🌸を見つけると、
侑は一瞬立ち止まり、
でも次の瞬間には駆け寄っていた。
「……いた……」
声が震えてる。
普段の威張った侑じゃない。
『……なに?』
「なに?ちゃうやろ……俺が悪いねん……」
侑は息を整えられないまま、
🌸の横にしゃがみ込む。
「“嫌い”なんか……言うわけないやん……
ほんまの俺の本音ちゃう。
ただムカついて……
自分守るために言っただけの、最低の言葉や。」
🌸が黙ると、侑は焦りで声を荒げる。
「なぁ、嫌いやらんといて?
離れんといて?
俺、お前おらん世界とか……無理やで」
「俺さ、
バレーより何より、
一番大事なん、お前なんよ。」
「お前おらんかったら、
俺、なんにも頑張れへん。」
「“嫌い”なんて……
俺の中には、お前に対してないねん……」
声が詰まって、最後だけ小さくなる。
「……帰ろ。
今日は離さん。
絶対、離さへん。」
『……嫌ってないよ』
「ほんま……?
ほんまに……?(涙声)」
返事が返ってくる瞬間、
侑の腕が震えて、
抱きしめる力がどんどん強くなる。
『ちょ、ちょっと、泣かないでよ…。』
「……ありがとう。
もう二度と言わん。
言われたら嫌やって分かった。
だから……俺のとこ戻ってきてな?」
その声は、
誰より強くて、誰より弱い。
「好きや。
死ぬほどな。」
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ギャフッ