テラーノベル
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王時(おうじ)と軽いラブコメ的な展開があったとしても、氷衣(ころも)の日常は変わらない。
一人で登校して、一人で教室に入って、一人で着席する。
誰も氷衣に対して「おはよー」とか言ってこない。悲しいかな、それが氷衣の日常。
席でスマホを開いていつも通り、スマホの乙女ゲーム「オレとトランプしよ?」を起動する。
そしてお気に入りの王子様キャラ、白城(はくじょう)英守(えいす)が映る。
はあぁ〜…白城くん…
うっとりである。学校に来るまでの歩いている時間、正門から昇降口までの時間
下駄箱で上履きに履き替え、教室に向かい、教室に入って席に着くまでは、ビックリするほどつまらなくて
周りで楽しそうにしている生徒を、気にしないわけではないが、気にしすぎるとなおさら孤独が際立つし
羨んだとしても、現状を打開する勇気もないので、どうすることもできない。だったら羨むだけ感情の無駄だし
波風立てずに空気となって過ごすと決めた高校生活序盤、もし周りを羨んでそれが顔に出たら
「室城浜(むろばま)さんのあの顔見た?」
「ヤバすぎ。怖すぎるんだけど」
「ずっと一人だし」
「ヤンキーとか?」
「オレ無理だわ」
「オレも」
なんて言われて、白い目で見られ、悪目立ちし、教室どころか学校に居づらくなる。
なので羨むということも心の奥にしまい込み、席に着くまではただただ孤独。だけどスマホの中の王子に会えば
まるで世界が、彩度を上げたように色が鮮やかに見え、光度を上げたように明るく見える。
頭の中には花が咲いたようになって、脳内の花畑の中、2人きりの世界で王子が話しかけてくれる。
「大丈夫だよ。君には僕がいるからね」
うっとりである。担任の先生が入ってきて
それぞれ仲良しグループで集まっていた生徒が自分の席に戻り始める。
しかし、先生が来ようが、生徒が席に戻ろうが氷衣には関係ない。
スマホの中、頭の中の王子に夢中だからである。
すると氷衣の視界の中、スマホの直線上の視界の端に顔が入ってきた。氷衣の前の席のモナである。
モナが口パクでなにかを言っているので、氷衣はワイヤレスイヤホンを外す。
「室城浜さん、おはよー」
と笑顔で言うモナ。挨拶されたので
「あ、あ、おはよう、ございます」
と氷衣も挨拶を返し頭を下げる。
「教室入ってきたときも言ったのに、無視するんだもんなぁ〜」
と氷衣の机にベタァ〜っと伏せるモナ。
「え、あ、すいません」
頭を下げて謝りながら
オレトラのテーマソング聴いてたからか…
と思う氷衣。
「いや、そこまで謝らなくてもいいんだけど」
すると担任の先生がホームルームを始めると言ったので、モナも前を向く。
氷衣もスマホをしまい、先生の話を聞く。聞きながらも
ビックリしたぁ〜…。怒られたのかと思った…。ま、整井さんはそんな小さな人じゃないとは思ってたけど…
と思う氷衣。すると氷衣にとっては聞きたくない言葉が担任の先生の口から発せられた。
「そうだ。今日のロングホームルームでオリエンテーション合宿の部屋のメンバー決めしてもらうから。
スッっと決まればすぐ終わるからなー」
そう。「部屋のメンバー決め」。孤独な氷衣からしたら、これほど残酷なことはない。
だって一人なんだから。先生のそれを聞いたクラスの他の生徒たちは
「フゥ〜!」
とか
「どうする?やっぱここだろ」
とか盛り上がっていた。
…じ…地獄だ…
と思う氷衣。ホームルームが終わると前のモナも席を立って仲良しのグループの元へ行った。
「え。何人だと思う?」
「え。どうせ4人っしょ?」
「じゃん?たぶん」
「じゃ、この4人で決定っしょ」
「そりゃそうじゃん」
「「ううぇ〜い」」
というモナが、モナと仲が良い百留(ももどめ)なのと本望野(もちの)凪友(なゆ)と
名取(なとり)幸乃萌(このえ)と話す会話を遠巻きに聞いていた氷衣。
ま、そりゃそうですよね…
ほんの少し、ほんのすこぉ〜…しだけ
〜
ホームルームが終わって、モナが氷衣のほうを振り返る。
「ねえ室城浜さん」
「は、はい」
「室城浜さん、もう組む人とか決めてる?」
「えぇ〜…っと」
「あのオリエンテーション合宿の部屋の」
「あぁ…。いえ。まだ、です」
「え、マジ?じゃあさ、私らのとこ入んない?」
「え?」
「ま、うるさいやつらも一緒だけど」
とモナが言うと
「おい。だぁ〜れがうるさいやつだ、だぁ〜れが」
と幸乃萌が言う。
「え、幸乃萌以外いなくね?」
「でも「やつ”ら“」って言ったよね?」
と言うなの。
「それってうちとなのもうるさいってこと?」
と言う凪友。
「あぁ、なのと凪友はうるさくないわごめん。言葉の綾だわ」
「すげぇ。モナが難しい言葉知ってる」
幸乃萌が驚く。
「おい、さすがにバカにしすぎだろ。ま、あんなメンバーでよければ一緒にどうかなぁ〜…なんて思ってさ」
と言うモナに、幸乃萌、なの、凪友のほうを見る氷衣。
幸乃萌は「よろしくぅ〜」と言わんばかりの仕草と表情をしており
なのはクールな表情を崩さず、凪友はペコッっと頭を下げた。視線をモナに戻して
「…い、いいの?」
と言う氷衣。
「もちろん!大歓迎!」
〜
なんていう展開を、少しだけ、ほんのすこぉ〜…しだけ期待していた。
しかし現実なんてこんなもの。優しいギャルが気まぐれで話しかけてくれただけ。
席が前後だし、後ろの席の人と蟠り(わだかまり)があるよりは仲良いほうがいい。
きっとただそれだけ。現にモナが氷衣を誘ってくれそうな様子はない。
あぁ…。ロングホームルームまでになんか、UFOとかが校舎に墜落して
宇宙人が「今年ノオリエンテーション合宿ヲ中止シロ」とか言ってくれないかなぁ〜…
ととんでもないことを思う氷衣。モナは同じ部屋のメンバーには誘ってはくれないが、1時間目が始まる直前も
「ねえねえ、室城浜さんって好きな食べ物なに?」
とか、2時間目が始まる直前も
「室城浜さんって音楽とか聴く?なに聴く?」
とか、3時間目が始まる直前も
「室城浜さんってどこ中だったの?」
とか、4時間目が始まる直前も
「室城浜さんって中学何部だった?」
とかいろいろ話しかけてくれた。氷衣からしたら
なんのためのこんなに私に話しかけてくれるんだろう
と思うほどに。そして4時間目が終わり、お昼の時間に。
自然を大切にしている亀池学園は、校舎以外の学校の敷地内の地面は芝生の場所が多い。
氷衣はお昼ご飯を食べるとき、雨でなければいつも外でお昼を食べている。
今日はなおさら外。なぜなら教室では
「ねえ。本望野たちって部屋のメンバー決めた?」
と聞く王時。
「決めたけど、もういっぱいだから茶礼(さら)は入(い)れんよ?」
と言う凪友。
「え、足りなかったら入れてくれた選択肢もあったの?」
と笑う王時。
「何人?その4人?」
「そー」
と言う幸乃萌。
「4人か。オッケー。あんがと」
と言って席に戻って
「4人だってー」
と仲良いメンバーに報告する王時。
「だろーな」
そして集まったメンバーを見て
「え待って待って。え、まずオレじゃん?」
と言いながら自分を指指す王時。
「で、宣透(せんと)に騎人(ないと)、聖最(せい)じゃん?」
と言いながら最後に昇有(のあ)を見る。
「すまん昇有。これで4人だ」
と謝る王時。
「おい!なんでオレ除外前提なんだよ!」
などとオリエンテーション合宿の部屋のメンバー決めで盛り上がっているためである。
そんな話が飛び交う中、ポツンと一人で食べていたら
「味しかなっただろうな…」
と呟きながらお昼ご飯を食べる氷衣。ワイヤレスイヤホンをして
スマホで「オレとトランプしよ?」の公式MyPipeチャンネルの
お気に入りのキャラの特集動画を聴きながらお昼ご飯を食べる。
しかしお昼の時間だけ現実から逃げたとしても現実は変わらない。
5時間目が始まる直前にモナは話しかけてくるし、それは6時間目も同じ。
そして訪れたロングホームルーム。訪れてしまったロングホームルーム。
「じゃ、オリエンテーション合宿のときの部屋のメンバー決めてくぞぉ〜」
と担任の先生が言う。教室内は陽キャを中心に盛り上がる。たった1人を除いて。もちろんそれは氷衣。
お昼に教室から逃げ、好きな王子のキャラのセリフを聞いて現実逃避したとしても
現実は1mmも変わっていない。むしろ向き合わなかったからこそ追い込まれている。
「一部屋ベッド4台なんだけど…。人数的に5人組のとこも出てくるんだよなぁ〜…。
ま、とりあえず4人か5人でグループ作って」
と先生が言うと、みんな各々席を立って、仲の良いメンバーで固まって話し出す。
「んだぁ〜5人でもよかったのかぁ〜」
と言う聖最。
「なんだぁ〜とはなんだよ。オレ様が入ることで最高に楽しくなるぜ?」
「ま、否定はできないけど、盛り上がりすぎて怒られそうなのよな」
「わかる」
「ま、そこはご愛嬌ということで」
「ま、昇有は盛り上げ隊長だもんな。仕方ないか」
「まっかせなさい。夜5人でゲームしようぜ」
「センセー!オレら5人でもいいっすかー?」
とか
「うちらは4人で決まりっしょ?」
「ま、いいんでない?他にいないっしょ」
「でも幸乃萌が夜うるさそぉ〜」
「え。モナに言われたくないわぁ〜」
とか、もう固まっているメンバーで集まりワイワイしていた。
…あぁ…どうしよう…
と表情は崩してはいないが、内心めちゃくちゃ焦っている氷衣。
中学生のときも同じようなことがあった。それは修学旅行の班決め。
修学旅行のときには笑顔も怒り顔も封印していた氷衣。しかし幸いなことに
中学では元同じクラスメイトがいて、誘ってくれたりしたので、完全孤立で、先生に
「おい、どっかのグループに入れてやれ」
なんて言われることはなかった。しかし今は高校。
中学からの知り合いもいなければ仲の良い人もいない。ほぼ詰みである。
きっと私以外のみんなはグループを組み終わって
「どっかのグループ、室城浜入れてあげて」
って言われて、もう仲良いグループが固定されてる中に迎え入れられて、めっちゃ気まずくなって
迎え入れてくれたグループの子たちも私に気を遣って楽しめなくなるから、結局私は当日休むという選択を取る
なんて考えていた。
そっか。当日休めばいいんじゃん
なんてとんでもない解決法を思いついていた。すると
「室城浜さん」
と声をかけられた。振り返ると喋ったことのない鹿雨(しかざめ)沙耶(さや)がいた。
「もし良かったら私たちのグループに入ってくれないかな?
私たち3人で、室城浜さんが入ってくれたら4人になるんだけど」
と言われた。
え。私でいいんですか
と言わずに心で思った。
たしかに鹿雨さんは喋りやすそうだけど…
と思いながら沙耶の後ろにいた2人を見る。
茶髪の蒲名(かばな)夏(なつ)と、金髪で毛先がピンク色の鍵野(かぎや)恵流(える)だった。
2人が合わなそうすぎる…。というか
沙耶を見る氷衣。
鹿雨さんが組んだのがこの2人なのが意外すぎるんだけど…。なぜ?
と思う氷衣。
「室城浜さぁ〜ん、頼むぜぇ〜」
と言う夏。
「あ、気にしなくていいよ。嫌なら嫌でいいからね」
と言う恵流。
あれ?意外と優しい?ギャルなのに?
という鬼偏見を思う氷衣。
「どおかな?」
と聞く沙耶。
「わ、私でいいんでしょうか」
「もちろん!私、室城浜さんと話してみたいって思ってたから」
「じゃあ」
「ほんと?ありがとう。助かる」
と沙耶が言うと
「おぉ〜!よろしく!室城浜さん!」
と夏のテンションが上がる。
「よろしく」
恵流はクールなまま。
「あ、よ、よろしくお願いします…」
ペコペコ頭を下げる氷衣。
「モナー。席借りるー」
と恵流がモナに言う。
「んー!」
氷衣の周りに座る沙那、夏、恵流。
「ねえねえ室城浜さん」
夏が氷衣に話しかける。
「はい」
「あのさ、後でLIME追加していい?」
「あ、はい」
「でさ?この4人のグループも作っていいかな?」
「あ、はい」
「やったぁ〜」
「じゃ、ぱっと見はぁ〜…」
と担任の先生が教室を見回す。
「4〜5人のグループになってるな?溢れ者いないな?」
と言う先生の言葉に
よかったぁー溢れ者にならないで…。ありがとう鹿雨さん
と心の中で感謝する氷衣。
「じゃ、プリント配るから、名前書いて」
と先生が各グループにプリントを配る。
「なのぉ〜、私らの名前も書いてぇ〜」
「書いてぇ〜」
と言う幸乃萌とモナ。
「や。めんどい」
とプリントを回すなの。
「シャーペン貸して」
「自分の出せ」
「出すのめんどい。もう帰る用意してたから。だから貸ちて」
と言う幸乃萌に渋々シャーペンを貸すなの。
「ほい」
自分の名前を書いてプリントもシャーペンもモナに回す。そしてプリントに名前を書くモナ。
「モナいいよねぇ〜」
「なにが」
と言いながら凪友にシャーペンとプリントを回すモナ。
「名前可愛いじゃん。モナもなのも」
「あ、私も?」
「そうだよぉ〜。なに?幸乃萌って」
「いいじゃん。可愛いじゃん」
と言うモナ。
「カタカナって可愛くない?モナってさ。響きも字面も」
「そおかな。ま、たしかに好きだけどさ?自分の名前」
「でしょ?」
「うん。でもなんか親がカタカナ名前好きなのか知らないけどお姉ちゃんもカタカナなんだよね。サラって」
「マジ?カワイ。ひらがなも可愛いよね、なのって」
「そお?単に漢字めんどかっただけじゃん?」
「凪友も羨ましい」
「なんで。私漢字だよ。あ、なのありがと」
となのにシャーペンとプリントを返す凪友。
「なゆだよ?語感?ってーの?響き?めっちゃ可愛いじゃん。漢字の雰囲気も」
「いや、「このえ」だって充分可愛くない?」
「え。なんか古臭くない?」
「無いものねだりすぎるでしょ」
と話していた。
「おい。誰かペン出せよ」
と言う宣透。
「王時」
と言う聖最。
「なんでオレなんだよ。騎人出せよ」
「カツアゲっすか?やめてくださいよぉ〜」
「じゃ、公平じゃんけんにするか」
とくだらないことでじゃんけんをしていた。
「室城浜さん、下の名前、ころもって読むんだよね?」
と聞く沙那。
「は、はい」
「氷の衣で「ころも」、綺麗な名前だよね」
「あ、ありがとうございます…」
「見てみ?私なんて」
とプリントを氷衣に見せる夏。
「夏ってストレートすぎるでしょ」
「別にいいじゃん」
と言う恵流。
「いいですよねぇ〜恵流は可愛い名前で」
「ま、気に入ってるけど」
「でしょ?可愛いもん。それにお兄ちゃんたちに比べたらストレートすぎて」
「あ、お兄さんいるんだ?」
「いるの。ねえ聞いて?名前が花火とラムネ」
「ラムネ?マジ?」
「マジ」
「漢字?」
「カタカナ」
「あのラムネだ」
「そう、あのラムネ。でもう1人が花火で私が夏よ?どう思う?もうちょっとあったと思わない?」
「ま、たしかに。海とかね」
「それ!わたあめとかもありじゃん?」
「それはわかんないけど」
「嘘じゃん。わたあめちゃんよくない?」
「自分がその名前だったら夏のほうがよかったってなると思う」
「マジ?」
「マジ。わたあめちゃんはないわ。だったら海か花火かラムネがいいわ」
「そう。マジでお兄ちゃんたちが羨ましい。可愛いもん2人とも」
と話す夏と恵流。2人が話す中
「こんな感じ(雰囲気)なんだけど、室城浜さん大丈夫そう?」
と氷衣に聞く沙那。
「あ、は、はい。あ、で、でも、私邪魔にならないようにするので。
お3人さんが楽しめるように」
なんなら当日休むので
と思う氷衣。
「え?全然邪魔じゃないよ?最初に言ったけど、私、室城浜さんと仲良くしたいし
室城浜さんさえよければみんなで楽しもうよ」
と沙那が微笑みながら言ってくれた。そんな沙那に氷衣は
や、優しい…。し、鹿雨さん…
と心の中で沙那を崇めていた。
「い、いいんですか…」
「もちろん!」
「…あ、ありがとうございます…」
と小声でお礼を言う氷衣。それぞれのグループのうちの1人が先生のいる教卓にプリントを持っていく。
氷衣たちのグループは沙那が持っていった。
「最初に言ったけど、部屋にはベッドが4台あります。
なので5人班は1人布団敷いて寝てもらうことになるけど、そこは各々で話し合って決めておいてください。
あと部屋は基本どこも変わんないから。あの、間取りとか景色とか。
だから部屋割りは先生のほうでランダムに決めておきます。じゃあ〜〜…」
と「じゃあ〜」を伸ばしながら一度腕時計で時間を確認して
なぜか謎に振り返って教室の前、黒板の上にある時計でも時間を確認してから
「案外早く決まったと言うことで、このまんま帰りのホームルームに入ろうと思います。席に戻ってー」
と言う先生。先生のその言葉を聞いて
「じゃ、よろしくね」
と言って席に戻る沙那。
「じゃ、4人グループ作っとくねぇ〜」
と言う夏。
「よろしくね」
と言う恵流。全員にただペコペコしていた氷衣。モナが席に戻ってくる。
「うおっ。あったか。恵流のケツか」
とイスに座るや否や言うモナ。そして振り返って
「室城浜さん、恵流たちと仲良いんだね?」
と聞く。
「あ…いえ…。今日初めて話しました」
「あ、そうなの?」
「はい…。同じ部屋のメンバーに誘っていただいて…」
「あ、そうなんだ?仲良かったわけじゃないんだ?」
「はい」
「あ、そうなんだ?」
と言うモナに
逆に鍵野(かぎや)さんが整井さんたちのグループに入ってないのが意外すぎるんだよなぁ〜
と思う氷衣。帰りのホームルームも終わり、帰る生徒や残って喋る生徒がいるが、先生から
「他のクラスはまだロングホームルーム中だろうし、2、3年生はまだ授業中だから静かにな」
と言われていたので、そこまでギャーギャー賑わってはいなかった。
「じゃあまたね、室城浜さん」
と言ってモナはいつものグループのところへ行った。
「あ、はい」
「この後どーする?甘谷繰り出す?」
「ふつーにそこらのファミレスとかワックでよくない?」
「私もそれがいいわ。行くなら大吉祥寺。甘谷はもういい。胃もたれ」
「わかる。私も同じ」
「じゃ、大吉祥寺行こ」
などと話していた。
「室城浜さん、またね」
と沙那が挨拶してくれた。
「あ、はい。…また」
「LIMEするねぇ〜」
と言う夏。ペコッっと頭を下げる恵流。沙那と夏、恵流3人が教室を出る。
3人が教室を出てから少し時間を空けてから教室を出る氷衣。
「またねぇ〜」と言われたのにすぐ教室を出て会ってしまったとき
どうすれば対応すれば正解なのかわからないためだ。
下駄箱でローファーに履き替え、昇降口から出る。出てすぐに音楽を聴くためにスマホをつけた。
すると告知通り、沙那、夏、恵流から友達追加されて、メッセージとスタンプが届いており
4人の「部屋メン」というグループに招待が来ていた。
その一連が嬉しくて、口角が上がりそうになったが堪えた。
しかしほんの少しだけ、誰にも、氷衣本人も気づかないくらい
ほんの少しだけ口角が上がっていた氷衣だった。
「つかなんで瀬戸門(せと)たちがいるわけ」
と言うモナ。
「オレに聞くなよ」
世界的ファストフード店、ワク・デイジー、大吉祥寺店にて
集まっていた幸乃萌、なの、凪友、モナの4人。
そこにたまたま王時、聖最、宣透、騎人、昇有の5人が来て、空いてる席がたまたま
幸乃萌、なの、凪友、モナの4人の隣しかなかったのだ。
「2人随分親しげだにゃー」
と言う幸乃萌。
「え!?なになに!?騎人、整井さんとどーゆー関係!?」
と昇有が驚きながら聞く。
「同ちゅー(おなちゅう(同じ中学の略))」
「「「マジで!?」」」
と昇有と聖最と幸乃萌が同時に驚く。
「うるさっ」
と笑いながら言うモナ。
「え。聞いてない」
「言ってないからね。言う必要性ないし」
という幸乃萌とモナのやり取りと
「おい!聞いてねぇぞ」
「言えよ!」
「なんで。聞かれないと言わないだろ」
という聖最と昇有と騎人のやり取りが同時に行われていた。そんな中、王時はスマホをいじっていた。
「茶礼王子って案外静かだよね」
となのが言う。スマホから顔を上げ
「え。そお?」
と言う王時。
「おん。見た目騒がしいのに」
「騒がしいって」
と笑う王時。
「中学のときは?」
「中学んとき?」
「髪。それ?」
「まさか」
と笑う王時。
「ふつーに黒髪だったよ」
「マジか。想像できんな」
「モテたでしょ」
と言う凪友。
「ん?いや?彼女はいたけどモテてはなかったかな。てかそもそもモテても意味なくない?」
「なんで?」
「いや、結局選ぶの1人じゃん?モテたらその分自分のこと好きになってくれた子を傷つけるわけじゃん?
だったらなるべく傷つけなくて済むほうがいいんじゃないかなぁ〜って」
と微笑みながら言う王時に、顔を見合わせて
「こりゃモテますな」
「ですな」
と言うなのと凪友。
「王時はモテるよ」
とスマホをいじりながら言う宣透。
「おい。ガセ言うなよ」
「いや、結構いたよ?王時のこといいって言ってる女の子」
「え。木本と茶礼王子って同中なん?」
「そうだよ」
「マジか」
「王時、マジで王子だから、誰にでも優しくして、勘違いさせて希望持たせるんだよね」
「うわ。最低じゃん」
「ちょっと。評価ダダ下がりなんですけど」
と笑う王時。みんなが話をする中、スマホに視線を落とす。
同じ中学の萌縁(もえ)という子からのLIMEの名前を見ていた。
名前の横、右端に数字がついていた。萌縁からメッセージが届いているということである。
返信をどうしようか迷っていた。既読をつけるタイミングも返信の内容も、返信するまでに空ける時間など。
まだ空けるか
と思ってスマホをテーブルの上に置いた。
「てかさ。オリエンテーション合宿の部屋のメンバーさ、それでしょ?」
と言う昇有。
「それって言うな」
と言う幸乃萌。
「そっちもこの5人なの?」
と聞くモナ。
「そそ。仲良し5人組」
と聖最はドヤ的な感じで笑いながら言う。
「あ、そう。意外だったのがさ?スッっと決まったじゃん?」
と思い出したように昇有が話し出す。
「なにが」
と聞くモナ。
「え。だから、部屋のメンバー決め」
「はあ」
「いや、思わんかった?誰かが溢れて「誰か入れてやれー」的な展開」
と言う昇有に
「あぁ。室城浜さん?」
と言う聖最。
「「どーゆーこと?」」
声が揃うモナと王時。
「うおっ。仲良しか」
「んなんいいから」
と言うモナ。
「え。だって室城浜さん、誰とも仲良くしてるとこ見たことないじゃん?
だから室城浜さんだけどこにも入れなくて
先生に言われてどっか入るみたいな、なんとも言えない空気の時間があると思ってたからさ」
と言ってからフライドポテトポテトを1本くわえる昇有に
「いや、室城浜さんいい子だからね」
と言うモナ。
「え。整井、仲良いの?」
と王時が聞く。
「いや、…。んん〜…。まだ仲良くはないかもだけど、席前後だから打ち解けようとはしてる」
「へぇ〜。じゃあさ、整井、室城浜さんのあの表情以外みたことある?」
という聖最の質問に、興味津々で耳を傾ける王時。
「あの表情?」
「ほら、無表情ぉ〜の感じ」
「あぁ〜…。いや、トライしてみてはいるんだけどねぇ〜。いろんな質問とかして会話して。
ただあの鉄の仮面が崩れたことはまだ一瞬もない」
と言うモナに
あ…。もしかして室城浜さんの笑顔見たのって、マジでオレだけなのかな
と思う王時。
「マジ?一瞬も」
と言う昇有に頷くモナ。
「スゲェな整井。よく挫けないよな」
「いや、始めたの昨日の今日だし。私もたぶん3ヶ月やってダメなら挫けるよ、さすがに」
「さすがのモナちゃんも?」
と少し揶揄い気味に言う幸乃萌。
「そう。さすがのあのモナちゃんも」
と自分で言うモナ。
「自分で言うなよ」
と笑う昇有と聖最と幸乃萌。そんな中王時は
そっか…。室城浜さんを笑わせたのはオレだけなのか…
と思っていた。
ぶいぶい
コメント
3件
ああ、すごく沁みました…。氷衣さんの静かな孤独と、そこに差し込む小さな光が繊細に描かれていて、読んでいて胸の奥が温かくなりました。特に沙耶さんが「室城浜さんと話してみたいと思ってた」って言ったところ、あの優しさが本当に染みますね。そしてスマホのグループ通知が来たときの、本人も気づかないくらいの口角の上がり方……そういうささやかな嬉しさの描写が、もうたまらなく好きです。続きがすごく気になります!