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泰三の背中がロビーから消えると、張り詰めていた空気が一気に和らいだ。
華は大きく息を吐き、肩を落とす。
「……緊張した」
小さく漏らした声が、静かな空間に響いた。
律はしばし黙っていた。
さっきまでの光景が、まだ胸に残っている。
父に真っ向から言葉を返す華の姿――その強さが焼きついて離れなかった。
「桜坂さん……」
思わず呼びかけると、華がぱっと振り返る。
二人の視線が重なり、言葉が続かなくなった。
沈黙が落ちる。けれど、それは居心地の悪いものではなく、妙に胸をざわつかせる沈黙だった。