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第二十四章
百化狸の夕飯
「夕飯や♥️」
椥辻さんが、皮を剥いだ百化狸を掲げたまま満面の笑みを浮かべています。
「……食べるの?」
皇刃くんが、少し引いたような顔で尋ねました。
「食べるに決まっとるやろ?」
「いや、化物よ?」
「せやから何や?昔はたぬき鍋っちゅーのもあったくらいやからな」
「……そういう問題じゃないと思うけど」
確かに。
化物を倒した直後に、その化物を夕飯にしようとする発想はありませんでした。
「でも……食べられるの?」
私が尋ねると、椥辻さんは自信満々に頷きます。
「知らん♥️」
「知らないんですか!?」
「うち食べたことないしな」
「それはそうですけど…」
すると皇刃くんが、百化狸をじっと見つめました。
「……毒は?」
「え?」
「動物だから……食べても安全とは限らない」
「せやったら可威、調べてや」
「……なんで僕が」
「毒見は大事やろ?」
「それは毒見とは言わないよ……」
皇刃くんが深いため息をつきます。
結局。
百化狸を食べる前に、皇刃くんが簡単に確認することになりました。
その間、私たちはキャンプの準備を始めます。
薪を集めて、火を起こして。
先ほどまで化物の体内にいたとは思えないほど、いつも通りの光景です。
……本当に。
数時間前まで、死ぬかもしれない状況でした…。
そう考えると、少しだけ身体が震えました。
「……綺ちゃん」
隣にいた御厨くんが、私の顔を覗き込みます。
「大丈夫?」
「え?」
「ぼーっとしてたから」
「あ……」
私は小さく笑いました。
「大丈夫よ。少し考え事をしていただけ」
「そう…」
御厨くんは、それ以上聞きませんでした。
その距離感が、今はありがたく感じます。
すると――
「綺!ちょー来てくれへんか?」
椥辻さんの声が聞こえてきました。
振り返ると、すでに簡易的な料理が始まっています。
「これ、どうや?」
「……」
大きな鍋の中で、何かがぐつぐつと煮えています。
「何を入れたんですか?」
「百化狸」
「そのまま!?」
「細かいこと気にしたら負けやで♥️」
「気にしますよ!」
私が思わず叫ぶと、御厨くんが笑いました。
そして。
「……まあ、食べられるならいいんじゃないの?たぬき鍋なんでしょ?」
「御厨くんまで!?」
「だって、もう鍋に入っちゃってるし」
「そういう問題ではありません!」
そんなやり取りをしていると。
「……食べられる」
皇刃くんが戻ってきました。
「え?」
「毒性は……少なくとも、僕が確認した範囲では問題ない」
「ほんま!?」
椥辻さんの目が輝きます。
「よっしゃぁ!」
「ただし」
皇刃くんが続けます。
「美味しいとは言ってない」
「…………」
全員が鍋を見つめました。
ぐつぐつ。
ぐつぐつ。
しばらく沈黙が続きます。
「……まあ、食べてみよか♥️」
椥辻さんは、いつもの笑顔で言いました。
こうして。
私たちの長い一日の夕飯は――
化物が丸々と煮えた鍋になりました。
せめて!せめて切り身にして欲しかったよ椥辻さん!
コメント
1件
第24話、読み終えました…! 化物を倒した直後に「夕飯にする」っていう椥辻さんの発想、好きすぎる…(笑)「知らん♥️」って言い切るの、彼女らしくて笑っちゃいました。でも皇刃くんが毒見みたいなことするの、真面目で可愛いなって思いました。 御厨くんが綺ちゃんの様子、そっと気にして「大丈夫?」って聞くところ…重くなりすぎない距離感がぎゅってなりました。 シリアスな空気の中にこういう日常のユーモアが入るところ、輪廻さんのバランス感覚、本当に好きです🖤 また次の話が気になります…!