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夏の終わり

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夏の終わり

1 - 夏の終わり

♥

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2024年08月31日

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そこにあった空き缶をなんとなく蹴って。

手に握ったビニール傘をなんとなく捨てて。

なんとなく、家に帰りたくないと感じた。


今日は8月31日。夏が終わる日。

そんな日だというのに、土砂降りの雨が降っている。

なくとなく、近くにあった橋の欄干に手を置く。濡れているからか不快な感触がして手を離した。

この雨に合わせたような不快なピアノの音が聞こえる気がした。


声を掛けられて、気を失っていたかのような感覚が解ける。

俺の嫌いな…、姉。

「門限、すぎてる。帰らなきゃ。」

そう言って差し伸べられた手を払う。

家族は嫌いだし、家という場所も嫌いだ。

だって、あんなところにいたくないから。

姉と比べてできないことが多いのは自分でもとっくに分かっているのに、それをわざわざ比較する周りが悪いんだ。

「……ねぇ。」

怒るも悲しむも勝手にしろ。

「聞いてる?」

お前だって下に見てるくせに。

「早く帰らないとお母さんとお父さんが心配するんだって!」

…嘘だ。そんなの子供だましだ。

「ねぇってば。」

俺の気持ちも分からないくせに。

「返事して…?」

嫌いだ。

「あのさ。」

嫌いだ。

「………。」

嫌いだ。

「帰るよ。」

大嫌いだ。


その後半ば強制的に帰らされた。

いつもみたいに怒られて、いつもみたいに比べられて。

それでも、劣っている自分をいつも気にかけるのは優秀な姉だった。

それがとても、気持ち悪かった。

そんな姉が大嫌いだ。



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