テラーノベル
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瑠璃マリコ
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苡 咒 。
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肌蹴られたシャツから覗く胸元は、何の可愛げもない下着が奴に見えていることだろう。
俗に言う『おばブラ』。真っ白なワイシャツから透けない飾り気のないシンプルなベージュのブラジャーは、最近の定番だった。
不意に思い出した会社でささやかれている不名誉なあだ名が頭をよぎり、シラけた笑いが漏れそうになる。
――女を捨てた仕事人間。
あの噂通り、可愛げのカケラもない女など興味を持たないで欲しい。今更、過去の自分を悔いても仕方のないことだが。
きっと奴が遊んで来た女共は女子力の高い美女ばかりだったのだろう。情事の際に間違ってもベージュの『おばブラ』など着ない。何故よりによって、私なのだ。高級ステーキばかり食い過ぎて、安い小間切れ肉でも食いたくなったのか。
あぁぁ、このまま放置して去ってくれないだろうか。
恋人契約を交わした後、真っ先に連れて来られたのがBARから少し歩いた所にあるホテル街だった。適当な一軒を奴が選び、部屋に入って早々に押し倒された。シャワーくらい浴びさせろと叫びたかったが、奴のギラついた目を見て口を噤んだ。下手に刺激して悲惨な目には遭いたくない。咄嗟の防衛本能だったのだろうか、多少は冷静さを取り戻していたのかもしれない。
「随分余裕だね? さすが、鉄壁の女王様って言われているだけあるよね。年下の男とのsexなんて余裕綽々ですか」
「そうかもね……、私を崇拝する可愛い下僕が沢山いるのに、毛も生え揃っていない生意気なガキの相手は萎えるわよ」
見上げた先の奴の目に怒りの感情を読み取り、失言に気づいたが後の祭りだ。
売り言葉に買い言葉。あまり好戦的な性格ではないつもりだが、BARでの奴とのやり取りで荒んだ心は、変な方向へと振り切れてしまったようだ。
「生意気なガキですか。貴方にとったら七歳下の俺は、毛も生え揃っていないガキなんでしょうね。でも、そんなガキに嵌められ言いなりになっている貴方は、分別ある大人の女性と言えますか? 貴方が言う子供の俺に騙されている時点で、低レベルだ。しかも、後先考えずヤケ酒して見知らぬ男について行った過去は女としても終わっている。そんな貴方にガキだと言われてもねぇ。貴方は、俺と同レベルの馬鹿なガキですよ」
「ふふっ、なら、サッサとやる事やって解放してくれないかしら。貴方の自尊心が満たされれば解放してくれるんでしょ。馬鹿な女を組み敷いて、想い通りに扱って、ズタズタにすれば、貴方の自尊心も満たされるでしょ。私の身体、好きにすればいいわよ」
「ちっ! 本当に生意気。なら、俺が満足するまで付き合ってもらいますよ」
性急な手つきで、着ていたシャツを剥ぎ取られ、履いていたスカートも抜き取られ面白みの全くない上下ベージュの下着姿にされてしまう。
「本当、女捨ててんな。上下ベージュの下着って。色気のカケラもねぇ」
改めて突きつけられた女の自尊心を粉砕する言葉に、頭がカッとなる。
お前に言われなくたって自覚してるわ!!
「お生憎さま。下着は色気より機能性で選ぶ主義なの。こんな女相手するのも嫌でしょ。貴方の周りにいる可愛らしくて煌びやかな女のところに、さっさと戻りなさいよ、坊や」
「あぁぁ、ムカつく……」
覆い被さった奴の怒りの表情を最後に視界が暗転する。熱を持った唇に唇を塞がれ、わずかに開いていた歯列から強引に舌が侵入してきた。怒りのまま暴れ回る舌に、逃げ惑う舌を捕らわれ、絡められ、吸われれば、強烈な刺激となり脳を痺れさせる。
「くくっ、少しは見れるようになったか」
銀色の糸が、二人の間を繋ぐ橋となり消えていく。そんな様子をぼんやりと見つめていた私は奴の言葉に現実へと引き戻され、気づいた。
素っ裸にされている。
ディープキスをしていた数秒間にブラジャーもパンツも剥ぎ取るという神技に感心している場合ではない。
「案外、感じやすいんだな。ココ立ってる……」
「ひっ…あぁぁ……」
突然与えられた強烈な刺激に甲高い声が漏れ、背がわずかに浮く。
「あぁ、ゴメンゴメン。強く潰し過ぎた」
胸の先端で赤く染まり出した頂きを労るように優しく転がされれば、緩慢な刺激が背をゾクゾクと震わす。先端を摘まれ同時に乳房を揉み込まれると、腹の奥底に官能の炎が灯った。
「膝を擦り合わせて……ただ、胸を触られているだけなのに感じちゃうんだ。でも、こんな刺激だけじゃ物足りないんじゃない?」
不穏なささやきに思わず下を見れば、奴の唇が反対の乳房に喰らいつく。唇に柔肌を喰まれ、舌先で双丘の縁を丹念に舐め回される。乳輪をクルクルと回る舌先が、時折り赤く染まる頂きを悪戯に掠めれば、腹の奥底の炎を燃え上がらせた。
焦らされているのは分かっている。
首筋から徐々に下がる唇は、乳房の天辺で震える頂きには一切触れず、谷間を抜け腹へ脇腹へと舌先を滑らせていく。堪え切れず小さな喘ぎ声を漏らせば、そこを執拗に手や唇で刺激される。しかしそれは、悪戯に官能の炎を燃え上がらせるだけで、決定的な快感をもたらしてはくれない。もちろん絶対的な快楽を生む下腹部には触れるそぶりすらみせない。
緩慢な愛撫に煽られるだけ煽られた官能の炎は抑えられないところまで燃え上がっていた。
あと少し。少しでいい……
刺激が欲しい。
無意識に胸に伸びた手を掴まれ、ハッとする。
奴の唇が弧を描く。
その笑みを見つめ屈辱で目の前が赤に染まった。
「自分で触ろうとするなんて、鈴香は意外と変態なんだ」
掴まれた手を引き寄せられ、奴の唇に指先を含まれる。赤く覗く舌先が別の生き物のように蠢く様子は、更なる火種を引きずり出すには充分だった。
思わず顔を背ける私を嘲笑うかのように耳元でささやかれる悪魔の言葉は、甘い毒となり身体を支配していく。
「こんな悪い手は縛ってしまおうか……」
ネクタイを解いた奴に、掴んでいた手をベッドヘッドの支柱にくくられてしまった。
「俺は優しいから片方の手は自由にさせてあげる。我慢出来なかったら触ってもいいよ。ただ……、毛も生え揃ってない生意気なガキの愛撫に感じる事もないよね。経験豊富なお姉さん」
「ふふ、そうね。感じるなんて間違ってもない。生意気なガキの愛撫になんかね」
「……本当可愛くない」
ギラっと光った瞳の強さに撃ち抜かれた脳は、甘美な拷問の始まりを告げる開始のゴングをどこか他人事のように聴いていた。
コメント
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わあ…第11話、一気に読んじゃいました。鈴香さんのツンデレというか、強がる口調の裏で揺れる心の描写がすごくリアルで引きこまれましたね。特に自分から「好きにすれば」って言い放つ強がりと、身体が正直に反応してしまうギャップが切なかったです。年下の彼の一歩リードした余裕も、読んでてドキドキしますね。次が気になる展開、湊さんらしい心理描写が光ってました🤍