テラーノベル
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二人で並んで歩く帰り道は、心地よい西の日差しに包まれていた。
「将臣様のおかげで父も救われました。これで麒麟堂を好き勝手されることもなくなりました。何とお礼を申し上げたらいいのか」
「これからも、義父上のことも気にかけていこう」
「はい。ありがとうございます」
凪は前を見据えながら、翠の前で泣き叫ぶ自分を将臣が抱きしめてくれたことを思い返していた。
(忘れられない……あのぬくもり。あんなに触れ合ったのは、初めてだった……)
思わず、ぬくもりの残るその腕を引き寄せた。
「……本当に……将臣様がいて、心強かったです」
将臣は言葉では返さず、ただ凪を見て小さく頷くだけだった。
(このままでは、この人の優しさに胡座をかいてしまう)
凪は目を伏せた。そして、眩しい夕日へと顔を向ける。
(自分の役割は、はっきりわかったでしょう)
ぎゅっと握りしめた指に力を込める。
「将臣様。これからも、私が麒麟堂へお手伝いにいってよろしいでしょうか」
(今後、自分が麒麟堂を継ぐためにも──)
凪は泣き出しそうな顔を隠すように、空を見上げたままだった。
「当然だ」
その声だけでも、彼の表情が想像できた。自分にしか見せない、あの柔らかい笑みだ。
「将臣様は……お優しいです」
こぼれそうになる涙を隠すように、凪はそっと視線を地面へ落とした。
いつもは温かく二人を照らす夕陽が、今日はなぜか、胸を刺すように痛かった。
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