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???「徐々に人とか神と交流を持つ妖怪たち増えてきたなぁ〜」???「最初は皆さん、人間や神と距離を置いてる方々が多かったですからね」
ここは、鬼灯刑務所。「紫雲雨花」と「不山橙」は橋から刑務所を見渡していた。
雨花「交流を持つのも持たないのもあの人たちの自由だからね。強制したら共存なんて程遠くなるし。それに……なんだかんだ楽しそうだよ?ほらあそことか!」
「おぉ、良い飲みっぷりだね。雪ちゃん!」「これはなんじゃ?最初血かと想って飲んでみたがこの美味しいのは何なのじゃ?」「それはトマトジュースだよ。栽培してるんだ」「そうなのか。何故お主はトマトを栽培してるんじゃ?」「元々俺は大麻を栽培して売りさばいてたんだけど、捕まって刑務所に入ったんだ。最初はあの世の刑務所の暖かい雰囲気が心地悪かったんだが、同室の爺さんがいて、「大麻なんていう依存性の高い植物を育てられるなら植物を栽培する力があるんじゃないか?」と言われて、その爺さんさんと一緒に植物とか野菜を栽培するようになって、めっちゃ大変だったけど、楽しくてよ。それから色んなものを栽培していった。そして、段々と温もりが俺は欲しかったんだなって気づいて。俺なりに誰かに幸せになって欲しくて沢山野菜作って、色んなところで売ってもらってるんだ、それが理由かな?」「そうなのか。そういう事情があったのだな。だからお主のトマト?とやらが美味しいのだな。」「ありがとうよ。雪ちゃん。他にもお食べ」
橙「確かに……二人とも笑っていますね。…………」
雨花「どうしたの?」
橙「みんな笑ってます。とても人を傷つけた人たちの顔にはみえません。……こんな楽になって良いんでしょうか」
雨花「……こればっかりは、正解と説くことも間違いだと説くことも出来ないね。でも、わたしはさ……!」
雨花はうずくまる。
橙「だ、大丈夫ですか?!」
雨花「わたしはさ。知ってるんだよね。許されないことがどれだけの絶望を生むか。それが自業自得なら尚更。わたしは例え許されなくても、許して貰えなくても、万引きしても、強盗しても、怪我させても、人を殺しても、そういう人たちはきっと色んなところからバッシングされて、罵倒されて、「お前を許さない」とか言われる。……例え本人が後悔してももうそんなのお構い無しに責められる。でも、自業自得だから何も言えない。それは途方もない絶望なんだよ。……わたしはそんな絶望背負って欲しくない。例え罪を犯しても、あんな苦しい想いして欲しくない。罪を償うならせめて環境くらい優しいものであって欲しい。償うという罪から拭えないことをしようと想うなら、周りぐらいは暖かいところであって欲しい。……ダメかな……?こんなこと願うの……」
雨花は塞ぎ込んで、顔をみせようとしない。その顔には今どんな表情が刻まれているんだろう。
橙「…………雨花さん……願いは生まれ続けます。生き物が生まれてくる限り、願いは生まれ続け、そして、叶うことなく終わってしまう願いもあって、でも、終わってしまう願いはあっても、死んでも良い願いなんてないと想います。雨花さんの願いも死んじゃダメですし、意味があるのだと想います。私はそう想います。」
「だから、」
「「願って良いんですよ」」
雨花「……あはは!そっか!ありがとう!」
橙「いえいえ。」
雨花は、顔を上げた。まだ闇から出れてはいないが、一時的でも、偽りでも、橙は雨花が笑ってくれることが嬉しかった。
「おい!お前!」
雨花・橙「?」
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橙「この子は……」
雨花「河童だね」
目の前には河童の子供が立っていた。
橙「この刑務所って子供も入れてるんですか?」
雨花「少年院と繋がってるからね。まぁ見た目だけ若いっていうことも妖怪とか神は多いんだけど」
「俺はお前が憎いんだ!」
雨花「わたしのことかな?あれだね。これいじめた方が覚えてないって奴。ごめんね!わたしあなたのこと覚えてないや。」
「会うのは初めてだ」
橙「じゃあ憎いというのは……?」
「俺の父ちゃんは、お前が一番最初に倒した町長の幹部だったんだ。それまでは金に困ることもなかったのに。でも、お前が倒したせいで、父ちゃんは捕まっちまった。そのせいで金に困って、万引きして俺も捕まった……!お前ら神なんかが入ってきたせいで……お前らは、何もしなくても周りから崇拝されて、信じられてるのに……それなのに俺たち妖怪は、端の方に追いやられて……全部お前のせいだ!!」
橙「でもそれは、あなたのお父様があの世の法律を破った町長の幹部だったからで、それに神にだって……」
「お前に言ってるんじゃない!!」
雨花「……君はお父さんのこと好きなの?」
「あぁ、大好きに決まってるだろ!」
雨花「その気持ちだけで、お父さんは充分支えられてると想うよ?」
「それに、」
「神はみんなに拝まれたり、心酔されたりする存在だって言うけど……チャラくて一途な神、真面目で天然な神、口が悪いけど頼りになる神、そして、消えたがりの神……神様だってこれほど人間臭い。そんな部分を神様は隠してる。そんな今はみえてない隠れてる何かに惹かれて憧れるものや信じられるものは造られていくんじゃない?自然と神様頼みする人みたいに。案外自分の憧れや信じてるものって神様みたいに人間味のある部分を隠し持っているかもしれないね。」
「だから、」と雨花は話を繋げる。
雨花「あなたが信じてるお父さんも、人間味のある妖怪だった。だからあなたも好きになれたんでしょうし。あなたたちには人間と似ている部分がある。人間と神も似ているように。妖怪も人間も神も同じなんだよ。同じ「心」を持った生き物。だから、神だけが特別だなんてことはない。そして、あなたの好きという気持ちは間違ってないよ。だって、好きという感情こそ特別なものだと想うから」
「俺の父ちゃんへの気持ちは間違ってない……」
雨花「…………」
「ふ、ふん。こんなんで俺は絆されたりしないからな!」
橙「(あ、絆されたんですね)」
そういうと、河童は帰って行った。
雨花「やれやれ、河童ちゃんも苦労してるんだなぁ」
橙「じゃあ見学の続きやりますか」
雨花「うん!」
こうして、雨花たちは、刑務所の見学を続け、受刑者たちと交流した。