何度も何度も背中を縫ってもらううちに、だんだんと痛みにも慣れてきた。治るのはまだ先みたいだけど…。
あの後、リムルが呼んできてくれた医者に傷を縫ってもらった。痛覚無効が切れていたみたいで、凄く痛かった。リムルはよく頑張ったなぁ〜と、ギィは早く寝ろと。二人共ずっと頭を撫でてくれて、私の横で寝てくれていた。
はずなのだが…
夢「ん…リムル、ギィ…?」
リムルは私の隣でスライム状態で寝ているのに、ギィはいない。
リムル「夢…?起きたのか…」
どうやら今のでリムルを起こしてしまったようで、スライム状態から人型に変身した。「熱…はまだあるな。どうした?」と私の正面に座り、おでこに手を当てながら言う。
夢「ギィがいない…」
リムル「ギィか?帰るにはまだ早いし、お前に何も言わずに帰るとは思えないから、そのへんにいるんじゃないか?」
リムル「そもそもあいつ基本寝ないだろ」
夢「…」
リムル「探しに行くか?」
夢「…!うん」
熱がまだ引いておらず、耐性も一部しか機能していなかったためリムルにもこもこのポンチョと帽子を貰い、それを被り外に出る。「傷口がまた開いたらダメだろ?」と言われ、リムルの片腕に抱っこされながら外へ出た。
リムルの街は夜なのに明るく、街灯がピカピカと光っていた。たまたま外に出ていたものは「リムル様!こんばんは!」とリムルに挨拶をし、「夢様もご一緒だったのですね!」と私にも挨拶をしてくれた。だが、ギィは見当たらない。中央都市リムルの中心に位置する噴水より手前はもう探した。それに、ある程度近くなればリムルの万能感知が気づくだろうに。
それでも見つからないと言うことは本当にギィは帰ってしまったんじゃないかと心配になった。
熱のせいか、また涙が込み上げてくる。どうして私はこうもしょうもないことで泣いてしまうのだろうか、自分を責めれば責めるほど涙は溢れ止まらなくなった。
そんな私を見たリムルが、「大丈夫、大丈夫だからな〜。」と慰める。返り血で染まったせいで切った髪が短く、ショートカットになったからかお姫様抱っこに切り替えたリムルの手が首に当たり、心地良い。
リムル「ギィのやつ、これだけ夢を泣かせておいて、出てきもしないなんて酷いよなぁ」
夢「リムルは私から離れないでね…」
不安で仕方がなかった。いくら街灯がついていて明るいといっても夜の闇には打ち勝てず、一寸先は闇でなんとなく恐ろしかった。
リムル「今こうしてお前を抱っこしてるだろ?いなくなんてならないから安心しろ」
夢「うん…」
泣きつかれたのか、眠くなってきたようで夢がウトウトしだしている。一旦帰ろうかと夢の寝室のある建物へ歩き出したときだった。
リムル「なんだ…この気配。」
夢「ギィ…?じゃない…」
妙な気配を漂わせた2人組が俺から10メートル先に立っていた。
とっさに警戒体制をとり、俺の結界とはべつに夢にも結界を張った。
そろそろ姿が見えると思った時、見慣れた歩き方に感じ慣れた魔力が後ろから来ていた。
夢「ギィ…いた…」
ギィ「お前ら部屋から出てきてなにしてるんだ」
リムル「はぁ…やっと見つけた」
夢「ギィ…(泣)」
ギィ「な、なんで泣いてるんだよ?!!」
???「あぁ、やっと見つけた…!」
ギィ「誰だこいつ?」
リムル「知らねぇ。」
ギィとリムルには分かるだろう。前に立っている二人組の保有する魔素が
限りなく0に近いことに。
夢「リム…る…」
リムル「夢?どうし…た??」
ますます顔色が悪くなっている夢。
夢「しんどい…」
リムル「あぁ、すまん。もう戻るよ。ソウエイ、いるか?」
ソウエイ「はい。ここに。」
リムル「夜にすまんな。この人達を客室に案内してくれ」
ソウエイ「承知しました。」
そう言われ、二人組はソウエイに連れて行かれた。
リムル「ギィ、すまん。夢を連れて部屋に戻っててくれるか?」
ギィ「あぁ、分かった。」
夢「リムル…?」
リムル「すまん。ちょっとお話してくるから…」
夢「…分かった。」
ギィ「戻るぞ夢。」
夢「うん。」
リムルから夢をそっと受け取り、そのまま抱えて部屋に歩いていく。
俺の腕の中にいる夢は震えていて、熱かった。ついこの間は俺に傷をつけるくらい肝が座った奴だったのに、今ここにいる夢は小さな白うさぎのようだった。青い瞳は揺れ、涙が溢れていた。
ギィ「もう寝てろ。離れないから」
夢「うん…」
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