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結局その夜、私は寝れなかった。そして、リムルが帰ってくることも無かった。でもその間ギィはずっと私の背中に手を回し、軽く抱きしめてくれていた。そうして長く、怖かった夜は過ぎた。朝になるといつもはシュナ、もしくは幹部の誰かが起こしに来てくれるのに、今日は無かった。ギィは私に「もう少し寝ていろ」と言ったがどうしても眠れる気分ではなかった。昨日の二人組がどうも気になるのだ。
夢「ギィ、昨日の2人誰なのか分かる?」
ギィ「…知らねぇよ。それがどうかしたのか?」
夢「そっか、なんでもない。」
嘘だ。ギィは何か知っている。ギィに分からないことなんてほとんどない。答えない時はだいたい、知る必要のないことか、知られたら不味いことだ。
夢「ギィ、起きよう」
ギィ「お前あの後、一睡もしてねぇだろ。熱もまだあるんだから寝ておけ」
夢「そもそも天間に睡眠は必要ないの!熱は昨日より下がったよ!」
ギィ「ダメだ。それに起きて何しに行くんだよ」
夢「…リムルを探しに行くの!」
ギィ「…なおさらダメだ」
夢「なんで!!」
ギィ「とにかく、ダメなもんはダメだ」
こうなったら強行突破するしかない。
夢「リムルのところに行かせてくれなきゃ、背中の傷を縫い付けてる糸全部ほどいてめちゃくちゃに引っ掻くから!!」
ギィ「はぁ?やってみろよ夢」
夢「うぅ…」
言ってしまった手前、やるしかないと思った。
一生懸命背中に手を伸ばし、糸を爪で引っ掻くようにして切る。何回も開くだけあって簡単に解けるようになっていた。何針か解けたところで傷口に指を突っ込もうとし、爪を立てた。すると…
バチンッ
夢「え…?」
なにが起こったのか分からない。頬が痛い。そうか、ギィに叩かれたのだ。
ギィ「いらんことをするな」
あぁ、怒らしてしまった。ギィに叩かれたのは何回目だろう。きっと片手で数えられる程しかない。そして、その時はだいたい、私が間違っていた時だ。
でも、ギィがやってみろって言ったんだ。私はそれをやってみせただけで…
ジンジンと背中の傷が痛む。
指についた血がまだ温かく、生々しかった。そして、目から水が溢れていた。必死に堪えていた涙が溢れだした。泣いたら負けだ。なんで、泣いちゃうのと自分の太ももを引っ掻いた。
自分自身に罰を与えるかのように。
そして、いてもたってもいられなくなり、部屋を飛び出した。
ギィの顔は見なかった。みたらきっと逃げ出せなくなるから。「私は悪くない」と心に言い聞かせた。
部屋を飛び出し、建物を飛び出し、街を飛び出した。そして、そのまま森へ走っていく。気がつくと、私は森の切り株の上で寝そべっていた。
「ねぇ、大丈夫?」と聞き馴染んだ声がした。オニルだ。
夢「オニルに心配されたくない。嘘つき」
オニル「酷いなぁ、俺は夢のためにやったのに。」
オニル「だって俺のおかげで思い出せたでしょ? *昔の記憶*。」
夢「思い出さなくて良かった。」
オニル「じゃあ夢はずっと忘れたまま生きていくつもりだったの?」
夢「そういうつもりじゃ…!」
オニル「じゃあ?どうするつもりだったの?」
オニル「俺がなにもしなきゃ、魔王達は教えてくれなかったよ。特にギィは」
夢「…。」
オニル「まぁ、なんでもいいけど」
そう言って、オニルはまた眠りについた。
気がつくと、血の匂いで肉食の魔獣達が集まっていた。魔素を極限まで抑えているから大丈夫だと思っていたのに。でも、もうなんのやる気も起きない。魔獣達を追い払わなきゃいけないのに、もうスキルを発動させる気力すら無かった。熱はまだ下がっていないようで、耐性も発動していない。体調が悪いからか、再生も遅かった。
罪の意識は消えない。やってしまったことも消えない。後悔と、反省と、押し潰されるような気持ちで笑顔を作るのが精一杯だった。
この気持ちから逃げられるならもう、
消えても良いと思ってしまった
「__夢!!」