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俺たちがもう一軒の家の前に着くと、玖字が家の前で待っていた。
「玖字!なんでここにいるんだよ?」
俺が不思議そうに言うと、玖字は言った。
「いやさあ、今回行って欲しいって急だっただろ?それで鍵渡すの忘れてたから、直接渡しに来たって感じ。あ、そそ鍵これね。俺この後仕事あるからじゃあね」
言いたいこと全部言うと、玖字はそそくさと行ってしまった。
「あいつが玖字なんだ。覚えた」
先輩はそう言って俺の持っている鍵を取り、扉を開けた。
「早くしようぜ」
そう言ってそそくさと入っていく先輩の後に続いて、俺も入った。
リビングにつくと、なぜここにあるのか分からない布団とゴミが入っているビニール袋が大量にあった。前の家とは違い、血などはなかった。
「おい!青也!こっち見ろ!」
先輩が焦ってそう言うので、先輩が指さす方向を見た。
「え……」
指の先には開いている扉があり、その扉の向こうの部屋には、男女二人の死体が布団の上に転がっていた。
「また夫婦かよ…」
先輩は少し呆れた顔で内心焦っているような声で、ため息をついてそう言った。
「先輩、でも俺この女の人が毎回違う男の人と家に入ってくの見てますよ」
そう、この女の人は金持ちそうなチャラチャラしている男の人と家に入っていくが、その男の人が毎回違うのだ。
「あ、なんか封筒から札はみ出てるぜ」
「あー、身体売る代わりに金貰ってたって感じですかね…」
大体は掴めた。
毎回違う金持ちのチャラ男と肉体関係を持ち、その男の人は毎度捨てる。そしてまた新たな金持ちのチャラ男を見つけて肉体関係を持ち…を続けているのだろう。
「このチャラ男を本気で愛して心中したとか?」
「うーん…部屋の写真とか撮って先輩の家で話しましょう。ここ凄い居心地が悪いんですよね…」
俺がそう言うと先輩はそれに賛成してくれた。
「まぁ確かに腐敗臭と気持ち悪さがやばいよな。死体がある時点で居心地悪ぃしな」
そう言って俺らは家から出て、先輩の家で話すことになった。
「殺され方が同じなんですよねこの三人。全く知らない人だと思われるんですけど…」
最初の夫婦は首と横腹ら辺を刃物で刺されており、二軒目の女の方も同様だ。だが、二軒目の男の方は全く違う。腹部に何度か刃物を刺されているだけだった。そしてその凶器は男の右手と左手で、ぎゅっと握られていた。
「やっぱり無理心中なんですかね…」
「俺もお前の言いたいこと分かるぞ」
俺が考えたのは、チャラ男が一軒目の夫婦と何かで揉め事になり、チャラ男が夫婦を殺害。その後、二軒目の女のことを本気で愛し、嫌がる女を他所に、無理心中…。という考えだ。
「無理心中なんておかしなことするよなぁ…。まぁ、あとは警察とかさっきの…玖字?に言えば解決だろ」
そう言って伸びをする先輩に俺は自分の持つ疑問を投げかけた。
「いや、まだ変なことがあるでしょう」
俺がそう言うと先輩は、分からなそうに首を傾げ、若干のイライラを含み、歪んだ顔を見せた。
「だって、まだ見つけてないじゃないですか」
俺がそう言ってもまだ分からないようで、ただひたすらに首を傾げている。
俺はそんな先輩に呆れて、ため息をついた。
「はぁ…記憶にないですか?」
俺はそう口にした後、一軒目の家から持ち帰った色々な紙の束を指さして言った。
「まだ子供が……美輝ちゃんを見つけていないでしょう」
俺がそう言うと先輩は、難しそうに再度顔を歪めた。
「うーん……。でも、一軒目にも二軒目にも居なかったから、チャラ男がバラバラに殺して海とか川とかに流したんじゃねぇの?」
先輩は面倒くさそうにそう言って両手を頭の上に乗せた。
「うーん……。まぁそうなんですかねぇ…。それでも、玖字とかに言わなきゃならないのは確定ですよ」
そうして俺たちは、玖字に家の事や考えを伝えることにした。
「いやいや、そんな小さい子とチャラ男が歩いてたら絶対不審者だって思われて通報されてるだろ普通」
俺たちの考えを告げると、玖字は馬鹿を見るような目で呆れて言った。
俺と先輩が玖字の家まで行き、待っていた。すると、玖字が丁度調べ事などをするため、家に帰ってきたのだ。玖字は俺たちを家に入れてくれ、考えまで聞いてくれた。
まぁ、聞いてくれたとてこれだが。
「そんな簡単で子供でも考えられること、犯罪者がすると思うか?ニュースとか見てないの?」
「でもチャラ男だよ?有り得るだろ」
「あのなあ…チャラ男でも犯罪は計画的にやるもんだって。チャラ男舐めすぎだろ」
俺が意見を少し言えば説教もどきが始まる。こういうところは昔とあまり変わらない。
「はぁ…とにかく、俺も手伝うから誘拐されたかもしれない子供を探して、保護するんだぞ」
俺と先輩は玖字にそう言われ、そのまま解散した。帰り際、先輩に聞いてみた。
「先輩、玖字といる時全然喋りませんね」
「まぁ……初対面だからな」
「へー…先輩でも人見知り発動するんですね」
「少しだけだからな」
先輩は面倒くさそうに、イライラした様子で言った。
先輩はコミュ力高めで誰にでも治安が悪い所を見せるかと思っていたが、そうでもないらしい。
俺は先輩の新たな一面を知った。
「ただいま、春香さん」
「あ、青也くんおかえり!」
サラサラで綺麗な黒髪を綺麗に揺らしながら、青い目を俺に向けて、春香さんは近づいてきた。
春香さんは俺が夏休み、田舎に住む親戚の方に泊まりに行った時、出会ったのだ。
先輩は春香さんの元カレで、ある理由で別れたんだ。
春香さんは優しくて天然だから、春香さんも殺人事件に巻き込まれないか心配になる。
でも、春香が巻き込まれないようにするためにも、俺が立派な警察官になって、春香さんを守れるようになればいい。
この事件も、すぐに解決して、春香さんを平和な街に住ませることが出来ればいい。