テラーノベル
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🌹はなみせ🍏
愛、あい、アイ……
絵本でしか見たことないよ。温かいものなんだって、アイって。
生まれてからずっと、僕はこの孤児院で育った。
だからもう何年?誕生日とか分かんないから、数えられないけど、とりあえず長いことは分かってる。
この孤児院は、人数が多い。だけど職員さんは少ない。
職員さんはいつも、小さい子達のところに行っちゃうし、ご飯とかお風呂とか、そういうのも全部小さい子どもが優先。
勉強とか、まともにしたことがない。だから僕は、絵本しか読めない。
「またその本読んでるの?」
「それは小さい子達の本でしょ!」
っ……ごめんなさい。ごめんなさい。
返すから、小さい子達に「どうぞ」ってしてくるから。
僕は読んじゃダメなんだ。これで何冊目かな、この絵本もダメなんだ。偉いでしょ?僕、覚えてるんだよ?読んじゃダメな絵本。
「ご飯だよ~!みんな手を洗って座りましょう!」
「やったぁ!きょうのごはんなぁにー!」
うっ……うるさい、うるさい!
職員さんの声も、みんなの声も、耳を刺されるみたい。逃げなきゃ、ここで耳塞いでたら、みんなに「変な子」って言われる。
「あれ?あの子どこ行ったのかしら」
「どうしたんですか?」
「あの子が居ないの、名前なんだっけ。いつも部屋の隅で一人で居る子」
あ、僕のこと話してる。また、「めんどう」って言ってるのかな。
見つかったら、怒られるんだろうな。勝手にどこか行くなって。職員さんにとって僕は、「めんどう」な「変な子」。分かってるよ、ちゃんと。
偉いでしょ?褒めてよ、「偉いね」って言ってよ。
今日は一人減った。新しいおうちに行ったんだって。僕よりも、小さい子。僕はいつか、新しいおうちに行けるのかな?そこでは、「元貴」って呼んでもらえるかな。僕は「元貴」って言うんだって。いつの日だったか、誰かが教えてくれた。でも、その人ももう居ない。クビ?になったんだって。
「あ、こんなとこに居た。ったく、早く部屋に戻りなさい」
ごめんなさい。誰かに話しかけられたら、とにかく「ごめんなさい」って言う。そうすれば、大丈夫だから。全部僕が悪いから。
「みんなおやすみ。ちゃんと寝るんだよ」
職員さんが、毎日そうやってみんなの部屋を見回る。早く寝よう。全然眠くないけど、寝られる気がしないけど、寝ないと怒られるから。
明日はいいことあるかな。少しだけ、今日より暖かいといいな。
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