テラーノベル
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「あははは! お兄ちゃん、いくよ? 壊れちゃったらごめんね!」
フランが指をパチンと鳴らす。その瞬間、地下室の空気が爆ぜた。 放たれた弾幕を、俺は死に物狂いで転がりながら避ける。だが、その拍子に頬の傷口が開き、鮮血がポタリと床に落ちた。
「……あら?」
フランの動きが止まる。 彼女は鼻をくんくんとさせ、獲物を見つけた猛獣のような目で、俺の頬に刻まれた「咲夜のナイフの傷跡」を凝視した。
「あはっ! 見つけた! お兄ちゃん、そこ、もう『壊れかけてる』んだね?」
「えっ……?」
「お姉様たちがつけた印。……そこを狙えば、もっと簡単にバラバラにできるよね!」
フランの無邪気な残酷さが爆発した。 彼女は手に持ったレーヴァテインを振りかざし、俺の頬の傷一点に向けて、執拗なまでの集中攻撃を開始した。
「嘘だろ!? やめろ! 狙い撃ちなんて卑怯だぞ!!」
ヒュンッ! ドドォォン!!
赤い弾幕が、俺の耳元を、髪を、数ミリの差で掠めていく。 頬の傷を狙われるたびに、風圧で皮膚が裂けそうになる。彼女は俺を一度に殺そうとはしていない。傷口を広げ、少しずつ、少しずつ「壊して」いくことを楽しんでいるのだ。
「あはは! ほらほら、逃げないと本当に顔がなくなっちゃうよ!」
「(……マズい。このままじゃ、料理を作る前に肉塊にされる……!)」
俺は四つん這いになりながら、必死にリュックの中を漁った。 狙われているのは傷口だ。血の匂いだ。 だったら、その匂いを上書きするしかない!
俺は恐怖で震える手で、蓋が外れたままの『究極の白だし』を、自分の頬……その傷口のすぐ近くに、思い切りぶっかけた!
「うおおお! これでも食らえ!!」
バシャッ! という音と共に、俺の顔面から、血の匂いを遥かに凌駕する**「暴力的なまでの出汁の香り」**が室内に充満した。
「……えっ!?」
フランの指先が止まる。 放たれようとしていた巨大な光弾が、彼女の手元で霧散した。
「なに……これ。……血の匂いじゃない。……甘くて、しょっぱくて、なんだか……すっごく、お腹が空く匂い……」
レーヴァテインを構えたまま、フランがポカンと口を開けて、俺の顔(というか白だし)を見つめていた。