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【山口と福島】
微グロ注意、少し重たいかもしれません
「西の者が来る」
それを聞いた時、とても嬉しかった。手紙で知らされたんだ。
「こんにちは。話したことはなかったよね。」が一行目。それから来る、と。日付は今日だった。
西のことは知らないことだらけだったから、興味もあり憧れもあり、でも触れることはなかった。だから、だから楽しみだった。ついに会えるのか、西の者に。ついニヤけてしまい、1人座って色々と想像をしてみる。緊張もしながら。
どんな人なのだろう。
小さい?
大きい?
優しい?
怖い?
妄想は止まることを知らず、会った時、はじめになんて言おう、表情はどうしたらいいのだろう、なんて考えてるうちに、玄関の扉を叩く音が聞こえた。
「西の者だ!」
直感でそう感じ、玄関までとんで行った。
玄関前まで来た時、楽しみと緊張が急に込み上げてくるのを感じた。さっきまでしていた妄想も全て脳内に再度浮かんだ。今目の前に現れる者を受け入れたい。一度でもいいから、初対面の人を自らリードできるようになりたい。そんな妄想まで繰り広げ、いい意味で震える手で扉を開く。その瞬間____
視界が半分途切れた
『命令だ。行け。』
僕は命令が嫌いだ。
命令に従わなかった者は罰せられる。命令に従ったとしても、成果を出せなかったらそれもまた罰せられる。好きなことはさせてくれない。家も外も、自由にはいられない。
今日は、嫌な命令だ。詳しい意図はわからないけど、命令内容は
[北の1人を始末]
……殺しの命令は初めてだった。北か、そういえば、やたらと西について調べてるやつがいるという噂を耳にしたことがある。
そいつなら、できるかもしれない。だが、殺しができる気はしなかった。
悪い意味で震える手で、手紙を書く。ただ純粋な興味で調べているのだとしたら引っかかってくれるだろう。賭けにはなるが、そのほうがやりやすいんだ。
返事が来た。手紙を読むなり、やはり純粋な興味だった。運が良いのか悪いのか。どっちに転んでも、結構行かされることにはなるが、僕は情を捨て、なにも見ないように誓い北へ向かった。
目的地は一軒家。少しばかり豪華だった。僕と同じくらいだろうか。門もあり、玄関まで来てみれば、しっかりした頑丈な扉が待ち構えていた。だが、あちらから開けるのであればもうその頑丈さは無意味になる。僕なんかとは違い、純粋な心持ちなのだろう。少しだけ眉をひそめた。が、もう情は捨ててきたんだ。なにも考えるな。時間帯も考えた。この時間、ただ扉を叩くだけなら他のやつは起きない。ただ黙って、なにも考えずに殺せばいい。それだけの話だ。一度だけの深い深呼吸。武器を用意し、扉を叩く。
微かに足音が聞こえる。恐らく、走ってきているのか。その音からは何故か、期待がこもっている気がした。利き手に武器を持ち替える。もう、後戻りはできない。
これは命令だ。逆らっちゃいけない。命令なんだ。
扉が開く。そこにいたのは、純粋な目をした。大きな男。だがそこからは自分と同じ空気を感じ、どこかしら幼さもあった。いや、駄目だ。なにも考えるな。殺すだけなんだ。あとは殺すだけ……
情は捨てた気でいた。だがまだ残っていたみたいだ。その真っ直ぐな瞳に、僕は明らかに止まってしまった。でも命令だ。やらないと。気がつけば身体が動いており、目の前には、わけも分からず座り込んでいる北の者。
僕は右目しかやれなかった
これが限界だ。
表情は澄ましたつもりで、その場から離れる。少し離れたところで、背後から泣き声が聞こえたが、全部気の所為だ。殺せなかったから、きっと帰ったらなにかしらされるのだろう。
でも、殺さなかったことに後悔などしていない。正しい。これが正しいんだ。
ごめんなさい
_______________________________________
あの時、宮城が来なければどうなっていたのだろう。結構、僕の右目は戻らなかった。宮城はお揃いだと言って慰めてくれた。それでも、僕の右目も左胸の内傷も治らない。
廃藩置県後、嫌な争いも挟んでまた平和が戻ってきた。今日は西に会うらしい。西にはいい思い出などない。でも西が全て悪いわけでもなく、渋々行くことになった。西とはいえ、割と近くにいた人達とはすぐに仲良くなれた。ただ、九州地方とか中国地方とか、よく知らない所もあるものだ。少し緊張しながらそこへ向かう。この気持ちがどうもあの時と重なってしまい、あの時と同じ気分にはなれなかった。それでもやっぱり興味はあり、あの時のことは全て忘れ、今を楽しもう。そう思っていた。中国地方に着くと、明るく歓迎してくれた。他と比べると、四国同様人数は少なかった。でも暖かかった。少し和み、ふと隣を見る。
あれ、見覚えがある
何故だろう。確かに廃藩置県後一度全員には会っている。でも、違うんだ。
もっと前に会ったことがある。少し、少しだけ、怖くなった。何故だろうか、目を合わせられない。合わせられたとしても、せいぜい左目だけだ。その人は僕を見るなり話しかけてきた。
「こんにちは、話したことはなかったよね?」
あ、こいつだ。
手紙と同じ。こいつなんだ。少し怯えながら目を見る。こいつは、僕の右目を見ていた。確かに眼帯で気になるかもしれない。でもこいつは、知ってるんだ。僕の右目を、その原因も。
僕は命令が大嫌いだよ、僕の肌の色が変わったのも、硬くなったのも、全部そのせいだから。君の目から純粋な光がなくなったのもそのせい。僕は君を殺さなかった。これは間違いだった?
話し方は昔から変わらなかった。僕が話しかけた瞬間、君の表情が変わった。思い出したのかな。でも、それでいいよ。君が僕のことを嫌い、怯え、恨む。罰はこれでもう十分だ。それなのに、不平等だよね、体も心も傷つける。これだから殺しは嫌いだ。これからの罪滅ぼし。君と仲良くなること。
何年かかるのだろうか。二桁はかかる気がする。それでも、気軽に行き来できるくらいにはなっているんだ。いい時代なんだろうか。ただ、自分が生まれた時代が悪かっただけだろう。最近知ったことだけど、君は、福島は、僕と同い年らしい。そっか。僕は福島より先に純粋な瞳を失っていたんだ。そして、その福島の瞳を消したのは僕だ。あの時は僕にとって、とても悪い時代だ。きっと、あの時から運はなかった。当たりなんて存在しない、ハズレだらけのぼったくり店と同じ。僕はその店の材料。そして、不良品になった。
人付き合いは苦手だ。でも、僕はいつか君と友達になりたい。その時には、またあの純粋な目を見させてよ。
もし、あんな命令なんてされずに、僕も純粋な興味で手紙を渡せていたのな。
今頃、2人で笑い合えていたのかな。
やっぱり、命令なんて、大っっ嫌いだ。
「ねぇ、西はいいところだった?」
「うん。君以外はね。」
僕が失ったのは、右目だけじゃなかったのかもしれないね。