「銀河が、いけないわけない……だってあなたは、被害者で……」
「……彼女を、加害者にさせたのは……俺自身だ。
……俺が、ちゃんと彼女を受け止めてやれなかったからだ……」
言う銀河に、首を何度もくり返し横に振った。
「ちがう…ちがうよ、銀河…だって、あなたが悪いわけなんて何も……」
「いや、そうじゃないんだ…理沙」
と、銀河が静かな口調で切り出す。
「……彼女は、最初は普通の客だったんだ。
でも、いつからか俺に執拗な愛情を向けてくるようになって……。
独占欲が強くなり、店の前で待ち伏せたりしては、俺の他の客たちにも、攻撃的な面を見せるようになった……」
銀河が目を伏せて、言葉を切る。
「……俺は、それでも彼女を、なんとか受け止めて、
もう一度、軌道を修正してやることが、できると思っていた……だが、
最初に、三日月に『彼女は、危険です』と、告げられて……。
そう言われても俺は、まだ彼女を助けてやれるはずだと……」
銀河が、悲しげに声を詰まらせる。
「銀河……」
「……俺が、三日月の言うことを聞かずに、彼女を受け入れようとしたことで、
よけいに彼女は、執着心をつのらせるようになってしまった……。
しまいには、天馬だけじゃなく、流星にまで『危険すぎる』と、言われるようになって……。
……カードキーの剥奪と、店への出入り禁止を認めるしかなかったんだ……」
そこまで言って、銀河はふぅーっとひと息を吐き出した。
「……その彼女が、不意にまた、俺の目の前に現れた……」
銀河が咳き込んで、傷口を押さえる。
額に苦しげに皺を刻み、苦悶に歪む顔を、
「痛むの…? 銀河…?」
泣いてしまいそうになるのをこらえて、いたわるように背中をさすった。
「助けてやりたかったのに……彼女は、最後まで、
俺の言葉を、聞き入れてはくれなかった……」
「銀河……もういい、わかったから……。……だからお願い、自分を責めたりなんかしないでよ……。あなたが悪いことなんてなんにもないのに、そうやっていつも相手のことばっかり気づかって……。あなたは、もっと自分のことを大切にしてよ……ねぇ銀河」
胸を込み上げる想いのままを伝えると、こらえ切れなくなった涙が頬をつたってこぼれ落ちた。
「……そうだったな、悪かったよ、理沙」
銀河の指が私の涙の跡を拭う。
「自分のことももちろんだが、俺が一番に考えなきゃいけないのは、おまえのことだったよな。心配かけてばっかでごめんな、だからもう泣くな」
やさしげに微笑って見せる彼に、「うん、銀河……」と小さく頷くと、私もようやく笑顔を返すことができた──。
コメント
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銀河は、優しすぎたのよ。なんとかしてあげたい時間は、とっくの昔に過ぎてしまっていたんだよ。 ストーカー化した人は、何を言っても受け入れられなくて、相手を憎むようになってしまうんだよ。 だから今回の事は、銀河のせいではないよ。