テラーノベル
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陽翔が戻ってきたのは、その次の日の昼だった。
教室のドアをガラッと開けて、ニヤッと笑いながら言った。
「……さぼってすまん!」
担任は呆れた顔してたけど、何も言わなかった。
俺は、立ち上がって陽翔のところに行った。
クラス中の視線が刺さる。でも、気にしなかった。
「これ、渡しとく」
そっと差し出したのは、スケッチブックの1ページを切り取った紙。
そこには、陽翔が屋上で笑っている姿を描いた絵があった。
風に髪をなびかせて、ちょっとバカっぽいけど、ちゃんと優しい顔で笑ってる陽翔。
「うまっ……おい、これオレかよ!? めっちゃ盛れてんじゃん! つーか、描いてくれてたんかよ……」
陽翔は、びっくりした顔でそれを見つめていた。
その後、小さく、ほんとに小さく「ありがとう」ってつぶやいた。
俺は言った。
「……ヒーローじゃなくていい。でも、お前が俺を助けてくれたのは、たしかだから」
陽翔はちょっとだけ目を赤くして、鼻をぐすっと鳴らした。
「なにそれ、ズルくね。……そんなん言われたら、オレまた調子乗るぞ?」
「うるさい」
「知ってる!」
俺たちは、また屋上へ向かった。
何も変わってないようで、でも確かに変わっていく時間の中で。
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