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きっかけは、小さな一言だった。
いつものように、昼休みに陽翔と屋上へ向かおうとしたとき、廊下の端で田村たちの声が聞こえた。
「お前、あの陰キャとばっかいんの、飽きないの?」
「なんか最近、水島のやつ、勘違いしてね?」
笑っていた。
俺のことを、名前じゃなく“存在”として馬鹿にしていた。
陽翔が立ち止まる。
俺も、その後ろで足を止めた。
――そのとき、俺はなぜか、逃げるように屋上へ走っていった。
陽翔が、後ろで何か言ってた。
でも、振り返ることができなかった。
怖かった。
陽翔まで、俺のこと“面倒くさい”って思ったらどうしようって。
屋上のベンチに座って、ひとり、強く目をつむった。
心臓がうるさくて、自分の鼓動の音しか聞こえなかった。