テラーノベル
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西日の差し込む教室。
様々な子らの足音。
楽しそうな笑いと話し声。
帰りの支度を終わらせ、
さぁ帰ろうとしていた時___
「遥人くん!」
その声の主が、僕を呼び止めた。
「良かった、まだ帰ってなかった!」
彼は同じクラスではないが、入学式の時にばったり会ってから仲良くしている初めての友人だった。
「渡したい物があってさ!これ、なんだとおもう?」
小さい包みを手のひらに置いて、差し出してくる。
お菓子だろうか、文房具だろうか。
彼の許可も得て包みをそっと開ける。
そこには数本のシンプルなヘアピンが入っていた。
「遥人くんって髪が長いからさ!目にかかって見えなかったりするかな〜って思って、良かったら使ってよ!」
確かに。
自分の髪は切るのが面倒というのもあるが、長い方が落ち着くから好きだった。
彼はヘアピンを一本取り、すこし前髪をまとめてつけてくれた。
「うん、似合ってるよ!!」
なんだろう、恥ずかしくて慣れない。
けれどこの感覚は嫌いじゃなかった。
小学六年生の冬。
彼は転校することになった。
父親の仕事の都合で、他県に行くらしい。
送別会も彼のクラスで行われ、放課後は少し賑やかな音が聞こえてきた。
僕は彼と話すのもこれで最後なんだと、分かってはいたが実感がなかった。
いつも遊んだり、話したり…それが普通だったのに明日には無くなる。
「遥人くん。」
そんなことを考えていたら、送別会も終わったらしい彼が教室にやってきた。
「良かった、まだ帰ってなかった。」
そう言って彼は、僕の隣の席に座った。
どこか空気が重く、どうすることも出来ない現実が襲ってくる。
先に静寂を破ったのは、やっぱり彼だった。
「もう今日がこうやって話せる最後の日だね、遥人くん。今まで友達でいてくれてありがとね。」
そうだ、最後なんだ。
彼と友達で居られる最後の日。
どれだけ綺麗事を言っても遠く離れてしまえば、疎遠になり、お互いのことを忘れていく。
だって時間というのは尊くも、残酷なものなのだから。
「遥人くん、危なっかしくて1人にしちゃうと怪我しちゃいそう。僕が居なくても気をつけないとダメだよ?」
そんなことを言ったってどうしようもない。
気をつけていても不幸があちらから寄ってくる。
「それにご飯とか給食もちゃんと食べてね。食べてあげてたけど、もう食べてあげれないから。他の友達に食べてくれる人がいればいいんだけど。」
なんだかママみたいな事を言ってくる。
もっとこれ楽しかったねとかあれいい思い出だったねとかはないんだろうか。
「遥人くん、これからも元気でいてね。もしかしたらまた会えるかもしれないしね。2回目だけど、今までありがとう。ほんっとに遥人くんと友達でいれて楽しかった。」
「さよなら。遥人くん。」
彼はそう言って教室を出ていった。
残ったのはガラリと空いた席と僕だけ。
おかしいな、教室の中なのに雨が降ってるや。
おかしい、な。
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コメント
1件
ああ、これめっちゃいい話やった……! 最初のヘアピンのエピソードから、ラストの転校までの流れがもう、じわじわ来る。ラストの「教室の中なのに雨が降ってる」って表現、泣かせるなあ。子どもの頃の「さよなら」ってこんな切ないよなって思い出したわ。続きめっちゃ気になる!