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134 - 第134話*坪井side② お前を好きになれたから*9

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2025年06月01日

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ふう、と息苦しさから逃れるように深呼吸すると同時。一課の人間が喫煙ルームに入ってきた。


坪井は軽く会釈をして、入れ替わるようにその場を離れた。


ほとんど吸っていないタバコの臭いが染みついていて、思っていたよりもあの場に長居していた自分に気がつく。

腕時計に目をやると、21時半を指していた。


(あーあ、もうこんな時間。 明日の段取りだけ確認して帰るかな)


やけに冷えた手を温めるようにポケットに手を突っ込んで歩く。


今頃真衣香は何をしているだろうか。泣いているかもしれない、彼女にしてみれば理解できない言動と行動の数々に。傷ついて困惑しているかもしれない。


もしかしたら遅れて会社を出た八木と会っているかもしれない。


(……あ、これ想像したら死ねるわ)


寄り添う八木と真衣香を想像すると、それだけで何となく呼吸が早くなり苦しく感じる。


嫉妬する権利さえないというのに。


でも、どうか。想うことだけ許されていて欲しいと願う。


(できること、ひとつずつ潰してくしかできないし、今は)


潰したところで許されるとも思わないけれど。それでも、一歩ずつでも真衣香に近付いていきたい。


そんな小さな決意を胸にデスクに戻ると、チラホラまだ帰っていない営業の姿が見えた。


(あー、仕事もちゃんとしないとな)


八木と会う前に、こっ酷く叱られた高柳の声がよみがえって肩が重くなる。

仕事納めに向けて、本格的に忙しくなってきている毎日。


こんな時にこそ見たくなる笑顔を、手離した自分を嘲笑った。

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