「リイ、聖魔神研究部には入らなかったのか 」
「う、うむ。異界研究部に入ることにしたぞ!」
「そうか。」
ルウゼスは残念そうに肩をすくめる。まあ、リイは聖魔神研究部だけは絶対に無理!と思っていたのでどう頑張っても入部することはなかっただろう。
「なんで、ルウゼスは聖魔神研究部に入ってるのだぞ?」
「俺は……」
「聖魔神になりたいんだ。」
「ふぇ?」
リイは思わず変な声が出てしまう。ルウゼスが聖魔神になりたいと思ってるなんて、全然考えていなかったのである。
「なんで、なりたいんだぞ?」
「約束したんだ。聖魔神になったら、告白するって」
ルウゼスは決してふざけているわけではなかった。表情は真剣だったのである。
なので、リイも真剣に考えた。
「(ふむ……。面白いぞ!!今度、レイアルに相談してみるか。)」
聖魔神になるためには聖魔神全員の同意が必要だが、その前にレイアルによる面接があるのだ。
ちなみにレイアルが面接するのは聖魔神の中で一番しっかりしているからだった。(というより、他のものたちが自由人すぎる。)
「なあ、理由もっと詳しく教えてくれないか?」
「なんで、そんなに知りたがるんだ?」
「いやぁ~、なんとなく……だぞ」
リイは目をキョロキョロさせている。そんなリイを怪しむようにルウゼスは目を細めた。
「まあ、いいけどよ。」
ルウゼスは中等部だったときの話を語った。
ルウゼスは、貴族だったが素行が荒かった。彼の家はもとから貴族だったわけではなく、冒険者から成り上がって貴族になったからだ。なので、ルウゼスをよく思わない者もいた。
「成り上がり風情で……。」
「言葉遣いもなんて下品。」
ルウゼスはそんな陰口や悪口は気にしなかった。だが、そのせいで舐められるようになったので言い返すようになった。
「お前らの実力が低かったから、俺の家が成り上がったんだろ」
すると、悪口のレベルが上がっていき、学園の中でルウゼスに悪口で勝てるものはいなくなった。
「え~、今日は魔術を使う練習をする。」
ルウゼスはつまらなそうに大あくびをしていた。
(せっかく魔術の授業だから出てみたけど、基礎中の基礎かよ)
ルウゼスは冒険者の家系なので、大抵の基礎魔術、応用魔術は使うことが出来た。なんなら、自分の特性魔力を見つけていたくらいだった。
(つまんねえ~)
ルウゼスは退屈だったので、授業をこっそり抜け出しサボることにした。
(学園もつまんねえな。ちょっと、外の空気吸いにいくか。)
学園から抜け出すために学園を包んでいる結界を解除した。
ルウゼスは学園の近くにある山へ行く。
「スウッ……ハアッ、やっぱ、外の空気は違うな」
この山は冒険者の彼からみても異常に険しく、魔力濃度が高かった。
ルウゼスはこの山の魔力濃度の高さに違和感を感じていた。
「ハアッ……こんなに魔力濃度が高いと普通の魔物じゃ住めないだろ」
ルウゼスは魔力耐性があったから平気だったが、普通の人間や魔物ならここにいるだけで魔力中毒になり最悪の場合死んでしまうだろう。
(普通の魔物が住めない場所?……そういえば、上位種の魔物は魔力濃度の高いところを好むんじゃなかったか……?)
ルウゼスは幼い頃、親に教わったことを思い出す。
(例えば……竜とか)
「ギャオオオー」
地面を割るような鳴き声が山に響き渡る。鳴いているのは子竜だった。
子竜はもうスピードでルウゼスのほうへ近づいてくる。
竜は狩りのスキルが高い。獲物を見つけると、捕まえるまで追いかけてくるのだ。
(コイツは竜の中でも下位種か……。話し合いは無理そうだな)
竜の中でも上位種のものは自我があり、言葉を話すことが出来るのだ。だが、下位種のものは自我がないく、本能のまま動く。
気づけば子竜が目の前にいた。子竜がその狂暴な爪がついた足でルウゼスを掴もうと足を伸ばす。
ルウゼスは死を覚悟し、目をつむる。
が、その足がいくらたっても、ルウゼスを掴むことはなかった。不思議に思い目を開けると、
子竜は少女に手懐けられていたのだ。
その少女は茶髪の美少女だった。少女はルウゼスが目を開けたことに気づく。
「もう、大丈夫だよ!」
そう笑顔でいう少女はえらく眩しく見えた。
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