テラーノベル
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森を抜けて、モルグは広い大地に出た。朝日が草原を照らし、遠くには小さな街々やのどかな村が点在している。
「おお……これが異世界の、人の暮らす場所……!」
ドキドキしながら、少し小高い丘の上から街並みを眺める。
「なんか、ゲームやアニメで見たことある景色だよな……でも、俺がこれからそこに行って大丈夫か?見た目キノコだし……あれこれ考えても仕方ない、まずは行ってみるか!」
まず辿り着いたのは、小さな村だった。木造の家々、洗濯物が風に揺れている。畑ではおばあさんたちが作業をしていた。
「こんにちはー……って、あ、俺モルグ・マッシュだ。通りすがりの旅キノコ……」
内心ガチガチに緊張しながらも、なんとか明るく挨拶する。でも、その異様な姿に村人たちは一瞬ポカーンと驚く。
「あ、あの、魔物……!? あ、でも、なんか……可愛い?」
「キ、キノコ……に、手足が!? 妖精かな?」
モルグはどぎまぎしつつ、おずおずと手を振った。
「あ、あの、敵意はありません!ただの旅人です!見た目はこうですけど食べません!たぶん!」
しばらくして村の子どもが恐る恐る近寄ってくる。
「ねぇ、すごいね!キノコさん、旅してるの?」
「そうなんだ、森から出てきたばっかりで、色んなところを見てみたいんだ」
「へぇ、きのこの旅人!面白い~!」
思いのほか受け入れてもらい、ホッとするモルグ。おばあさんが畑の野菜をおすそ分けしてくれたり、村の犬が足元でじゃれてきたり、地味に異世界日常満喫モード。
次に向かったのは少し大きな街。城壁に囲まれ、入口には衛兵が立っている。
「あー、ここはちゃんと説明した方がいいよな……」
入口で止められるモルグ。
「おい、お前、そこで何している!魔物か!?怪しい者は――」 「違います!俺、森出身の旅キノコです!危害はないです!……たぶん!」
一瞬空気が凍るが、モルグは必死に自己紹介と手持ちの野菜を差し出す。
「このナス、村のおばあさんにもらいました!もしもの時はこれをどうぞ!」
「……よくわからないが……まぁ、いいか。」
案外アバウトな警備で、モルグは街へ入ることができた。
街中は賑やかだった。パン屋から良い匂いが漂い、広場では大道芸人がパフォーマンスをしている。路地裏には子どもたち、雑貨屋に冒険者たち……人間たちの“暮らし”が広がっている。
「すげぇ……本当に異世界の街だ……!」
道端のフルーツ屋でリンゴを吟味していると、商人のおじさんが陽気に声をかけてくる。
「おう、キノコ坊主、うまいリンゴだぞ。ひとつ食うか?」 「え、もらっていいんですか!?」
ありがたく頂きながら、モルグは思った。
「人間も悪くないな……いや、むしろこの街、メチャクチャ面白いぞ!」
夕方になり、広場のベンチで休憩するモルグ。
「はぁ……今日は色んな場所を見て、いっぱい喋って――久々に、人間っぽい日常を感じられた気がするな」
ふと森のころを思い出し、少しだけ懐かしくなる。 「でも、これからは新しい出会いや事件がいっぱい待ってるかもしれない。……ちょっと楽しみかも」
モルグは新たなる冒険の予感に胸を躍らせ、街の灯りを見つめた。
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