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それは、突然だった
湾岸戦争中
俺が海兵隊になるためにニューヨークの「ユナイテッド・ステーツ・ミリタリー・アカデミー」の卒業が間近だった頃の話だ
1991年5月某日
その日は歴史的猛暑で、海兵隊から支援物資がクウェートへ多数輸出されていた。
「おい、お前、日本人なんだって?日本人は貧弱だって聞いてたけど、お前の体はスゲェな、こりゃ首席だ首席」
そんな事を言われていた。
最初は冷やかしだと思ったが、教官の目に止まってネイビー・シールズに連れていかれた時はヒヤヒヤした。
そんなある日の事だった。
「速報です、ソビエト連邦がポーランドへ侵攻を開始、ベルリンの壁崩壊による東ドイツ政府の支援目的だと発表しました。」
ポーランドは4月、民主化してNATOへの加入も決定されていた。
俺は海兵隊少尉として真っ先にヨーロッパへの派遣が決定された。
最初の到着地点はワルシャワ。
しかし、ソ連軍の猛攻は凄まじく、到着予定の8月にワルシャワは陥落。
西ベルリンへ後退した。
NATO軍はワルシャワの解放を要求するが、ソ連軍がその軍靴の歩みを止めることは無かった。
ソ連軍がポーランドを完全に降伏させると、西ベルリンの軍事併合を行う
これが、初めての戦いだった。
「こちらオマハ1-1!アルファ小隊が壊滅!ブランデンブルク門へ後退します!」
目の前から近づくソ連軍の機関銃手は、こちらへ狙いを定めた。
一瞬目が合った気がして躊躇ったが、機関銃手の頭を撃ち抜く。
「小隊長!ブラボー小隊は全滅!ミグ公にやられたようです!」
ミグ公とはミグ27戦闘爆撃機の呼び名。
ヤツらはマッハ1近くで飛行して、500kg爆弾を7発も落としていく。
その後、ブランデンブルク門でM2機関銃でソ連軍を撃退。
オマハ小隊は無事だったが、アルファ小隊が壊滅、ブラボー小隊、デルタ小隊、フォックス小隊はただ1人として点呼で番号を答えることは無かった。
5年後、東京に5t爆弾が7発落とされた
核兵器でこそ無かったが、平和な東京の静寂を破ったのは中国革命軍だった。
中国革命軍は人民主義を捨て、社会主義と共産主義を誓う革命軍だった。
それから何年も何年も戦った。
20世紀が終わっても。
両軍の最高指導者が変わっても。
永遠に永遠に、ただ、平和を求めて
戦った。
2020年に、俺が知る限り東側諸国の最高勢力圏に到達してパリまで赤い国旗が立てられていた。
その頃には既に開戦から29年と1ヶ月
戦死者は全世界合わせて6億人を上回った。
国連軍は世界各国から、アフリカにオセアニア、南アメリカなどから有志軍を募り、パリに降下させた。
見事に奪還させるとそこからは波の勢いで都市を解放していった。
オランダ、ベルギー、ドイツ、ギリシャ、ルーマニア、ユーゴスラビア、そして2032年からポーランド戦線へ拡大。
約束された平和など、ここ41年間無い
その頃には、俺は57だった。
高校を捨ててアメリカに渡り、家族を失って軍に志願してから43年。
体力はマイナス26歳だった。
俺が最後に平和とやらを経験したのは15の冬までだった。
目の前に有る希望とは
42年かけて届かなかった希望とは
いったいなんだったのだろう
「…先生?」
アイトラーの声で気が付く
「いや、ごめん、少し昔の事を…」
アガートが顔を覗かせる
パスタを食っていたフォークをペンのように華麗に回して。
「初級魔法学校時代を?」
アイトラーも気にしていそうに俺の顔を見るが、俺は
「いや、もっと前のコト」
と言った
2人は「えー」と残念そうに落胆していた。というか周辺からの注目をその美貌と身体という身体で集めていた。
「なんだぁ、先生って意外と薄情…」
「まあそんなもんでしょ」
…ん?
「アイトラー、キャラ変わったよね」
アイトラーはえっ。と驚く
「なんというか、昔みたいに子供っぽくも女の子っぽさも持つというか、 可愛い」
…
そう言うと、アイトラーはショートしたように固まって、処理が終わるといきなり顔が赤くなり始めた。
「アルコールを!」
「ダメだから(お前未成年だろ)」
俺はアイトラーが挙げた手を下ろす
「アイトラーちゃん酔ったみたいだね?
(スライムなのに)」
アガートがそう言うと、アイトラーはピザを食べ続ける。
2人のやり取りは永遠と見てられる
平和という環境の中育った2人は純粋で
何より心から人と平和を信じていた
「…目の前にある可能性を掴んだら、どんな事があろうと離そうとするなよ」
「…先生」
2人はこちらを見る
アイトラーとアガートは顔を見合せて、一気に笑顔になった
「「それ、8年前からずっと口癖ですね!」」
ホントにアルコール飲んでねぇのかってくらいクスクス笑い始めた。
しかし、これほど愛おしい存在は初めてかもしれないn
突然、店の中に物凄い魔力を感じた
それは2人も同じのようで、一気に顔が冷め始めた。
「…センセイ、う、後ろ…」
「えっ、見たくn」
すると頭を後ろから鷲掴みされ、強制的に後ろを向かされた。
そこには、灰色の髪に赤い目の、どちらかと言えば可愛いよりイケメンが勝つタイプの女の子が居た。
「ごきげんよう、先生さん…!」
鷲掴みしている手がだんだん強くなる
「いてぇいてぇ!勘弁してくれ!
…貴様さてはその口調、クレイだな?
というか痛てぇよ」
クレイも流石に驚いたようで、ゆっくりと手を緩めて離す。
クレイはアイトラーに「アイツの隣に座れ」と言わんばかりに手払いし、俺の斜め前に座った。
「あ…(アレイじゃないんだ…)」
アイトラーがこそこそ声でアガートに言うと、アガートは返す
「(アレイ・クレイだから、フルネーム)」
「そうだよお嬢様方、ピザ取れないから解散してくれ。」
クレイはモグモグとピザを食べ続け、アイトラーが頼んでいたジンジャーエールを飲み干した。
「…さて先生」
クレイは改まったように言う
「魔力…!今どれくらいだ…?!」
俺は黙って自分のステータスを見せる
クレイはゆっくりと見ると、落胆する。
「負けたぁ………」
俺の魔力は8648、伸ばそうと思えばいくらでも伸ばせる…けど
使用可能な属性は火、水、自然、電気、不規則。悪魔以外は全て使える。悪魔が使えないのはイリスが持っていなかったから。
レベルは相変わらず永遠の1。
特殊魔法として【軍事力】
アイトラーとアガートはそのステータス値を見て唖然とする
「出た…桁違い」
アイトラーがそう言う。
「…一応8年前から魔力は1650くらい上がってるんですね…100上げるのに一生掛かるのが普通なのに…」
「…先公は今も昔も、ずっとバケモノなんだよ、少し舐められてるみたいだが」
それから話はいろいろ続くが。
3人の食欲が凄すぎたことと。
支払いが2万エル超えたこと。
あと翌日の胃もたれと二日酔いが酷すぎてなんも覚えてない( ◜ཫ◝)