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「お前ら、今日も愛してるよ」
俺が忠誠を誓ったボスの口癖で
毎朝の集会時に、挨拶代わりに使われている言葉だ。
最初は少し違和感があったけど、
今ではすっかり馴染んでしまっている。
そんなボスだが、昔は相当ヤンチャしてたらしい。
良くも悪くも、何でもかんでも思ったことを率直に伝えてしまう人で、 下っぱ時代は内輪揉めが絶えなかったそう。
内輪揉めと言っても普通の喧嘩だ。
殴り合ったりとかは流石に止められてたけど。
なんてアホなんだろうか。
「アイツとは…、昔っから馬が合わなくってさ」
と、楽しそうに話される相手が
少し、ほんの少しだけ、羨ましいと思う。
まあ、俺のことなんだけど。
産まれて親指しゃぶってる時からずーーっと一緒。
なんなら親より見た顔で、体中の黒子の位置もバッチリ。
喧嘩するほど仲が良いとはよく言ったもので、 十数年経って大人になった俺達は、組織の最前線で肩を並べるようになった。
アイツのことを友達やボスかって聞かれたら「家族」と答えるし
仲が良いかと聞かれたら「それは違う」と答える。
それはあちらも同じ答えだろう。
だが最近、気に食わないことがある。
それは、俺達は恋仲なのに、そういった素振りを一切見せないことだ。
部下たちに向かって「愛してる」って恥ずかしげも無く言うクセに
”俺に向けて” に言ったことが無い。
まあ、恋人なら誰でも良い気はしないはず。
「はーああぁ〜〜………」
「ちょっと!せっかくの紅茶がアンタのため息一つで台無しよ。どうしてくれんの」
「知んね〜〜ー……」
惚れていたのは多分、俺の方で。
だからといって、あっちから矢印が向いてこない理由にはならないけれど。
必死こいて告白したのに、気まぐれでの返事で交際を承認したのだろうか。
「なーに辛気臭い顔してんのよ。うざったいったらありゃしない」
「……………話、聞いてくれんの?」
「落ち込んでる身内を放っておく程、アタシは冷酷じゃないわ」
「意外と優しーんだなあ……」
「何よその言い方。帰っていいかしら?」
「ああウソウソ!冗談です……」
こいつはルーク。
男でありながら、女っぽさを含んだ独特の雰囲気を装っている。
高身長で手足がスラっとしてて、男だろうが敵だろうが目を惹きつけられる美貌の持ち主だ。
「手短に話して頂戴。任務で立て込んでるの、アタシ」
「ああ…、最近は街の方で働いてるんだっけか」
「そうなのよ…。野蛮な輩が大勢居るしで、気が気じゃないわ。この前なんてうっかり発砲しそうになった」
「おいおい気を付けろよな……」
「で、本題よ。何でも話して御覧なさい。迷える子羊ちゃん」
「……驚かないで聞いて欲しいんだが」
「ふふっ、アンタらが恋仲ですって?!面白い冗談ね坊や」
「嘘じゃないし割と本気で困ってるんだって…!」
「困ってるって……、そんなの簡単よ。攻めればいいの」
「攻めっ……!? 」
「あっちから何もないなら、自分からアクションを起こさなきゃ駄目。 」
「…なるほど」
「そもそもアンタは彼に抱かれたい?それとも彼を抱きたい?」
「何だよその質問…、抱きたいとは思ってる」
「じゃあ尚更攻めなきゃね。普段の生活でもダメダメなのに、ベッドの上でリードするなんて以ての外よ」
「………」
「お悩みは以上かしら?それじゃあ予定があるから」
「…おう、話聞いてくれてサンキューな」
「礼を言われる程働いてないわよ。ボスに会ったら精々ビビらないことね」
「攻める、かあ…………」