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孤高の薔薇に誓う
孤高の薔薇に誓う病室に流れる空気は、どこまでも厳かで、どこか静謐だった。
ベッドの上に身を横たえる舘さんは、度重なる治療で体力が奪われているはずなのに、その背筋はどこか真っ直ぐに伸びているように見えた。最期まで「宮舘涼太」としての気品を失わない、その姿が胸に刺さる。
「目黒」
舘さんが、いつも通りの落ち着いた、低い声で俺を呼んだ。
「はい」
「そんなに硬くならなくていい。いつも通り、普通に話そう」
そう言って、舘さんはふっと優しく微笑んだ。
俺と舘さんは、ベタベタと常に一緒にいるタイプではなかったかもしれない。けれど、仕事に対する熱量、男としての生き様、そういう根底にある「魂」の部分で、俺は舘さんを深く尊敬していたし、言葉がなくても通じ合える、そんな信頼があった。
そんな舘さんに下された、余命宣告。
嘘だろ、って思った。あんなに強くて、美しくて、誰も倒せないような人が、病なんかに負けるわけがない。そう思いたかった。
「目黒、お前にひとつ、頼みがあるんだ」
舘さんが、サイドテーブルの上にある一冊のノートに視線を落とした。
「俺が今まで書き留めてきた、ステージのアイデアや、演出のメモだ。これを、お前に託したい」
「……俺に、ですか?」
「あぁ。お前は真っ直ぐで、熱くて、作品に対して誰よりも誠実だ。俺の想いを、これからのSnow Manのステージに繋いでくれるのは、お前しかいないと思った」
差し出されたノートを受け取る。その表紙は、舘さんのメンバーカラーである気高い赤色だった。受け取った瞬間、ノートの重み以上の、舘さんのこれまでの人生とSnow Manへの愛の重さが、両手にズシリと伝わってきた。
「舘さん……俺、そんな大きなもの……」
「お前ならできるよ」
舘さんは俺の言葉を遮るように、力強く、けれどどこまでも優しい瞳で俺を見つめた。
「俺は、自分の人生を全うしたと思っている。Snow Manの一員として、みんなと数々の奇跡を見ることができた。だから、悔いはない。……ただひとつだけ、わがままを言うなら、俺がいなくなった後も、Snow Manのステージは誰よりも、どこよりも美しくあってほしい」
その言葉に、俺の奥歯がガタガタと震えた。涙が溢れそうになるのを、必死に堪える。舘さんの前で、無様な姿は見せられない。
「目黒。涙は、ステージの上で最高の景色を見たときのために取っておけ」
舘さんは俺の心を見透かしたように言い、そっと手を伸ばして、俺の肩をポンと叩いた。
「気高く、正しく、美しく。それが俺の美学だ。お前がそれを、これからのグループに示し続けてくれ。頼んだぞ、目黒」
「……はい。約束します。舘さんの美学も、想いも、俺が全部背負って、次のステージに持っていきます」
俺が真っ直ぐに目を見返して答えると、舘さんは「良い返事だ」と、満足そうに深く、深く微笑んだ。
それは、一輪の美しい薔薇が、静かにその花弁を閉じるかのような、完璧な最期への幕開けだった。
その数日後、舘さんは眠るように息を引き取った。
最期まで、気高く、美しい姿のままだった。
それから、月日が流れた。
ドームの照明が落とされ、会場が暗転する。
真っ赤なペンライトが海のように広がる客席を、ステージの袖から見つめる。
俺の手には、あの時からずっと大切に持ち歩いている赤色のノート。ページはもう、ボロボロになるほど読み返した。
「館さん、行ってくるね」
衣装の胸元を軽く叩き、俺はステージへと一歩を踏み出す。
照明が当たった瞬間、歓声が地を揺らす。
俺の隣に、あのロイヤルなステップを踏む人はもういない。けれど、俺がマイクを握り、指先一本の動きにまで魂を込める時、そこには確実に舘さんの教えが、美学が生きている。
悲しみで俯くことはない。
俺は、あの孤高の薔薇に誓ったんだ。
このSnow Manというステージを、誰よりも、どこよりも美しく輝かせ続けると。
名無しさん

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明星宵
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コメント
1件
うわぁ…読んでて胸がぎゅーっとなったよ😭💕 「涙はステージの上で最高の景色を見たときのために」って舘さんの言葉、マジで心に刺さった…!最期まで気高く美しいままの舘さんと、その想いを背負ってステージに立つ目黒くんの覚悟、めっちゃエモすぎて泣きそうになったよ…。赤いノートの重み、ペンライトの海、全部が美しすぎる…✨ 明星宵さんの紡ぐ言葉、めっちゃ好きです…!!