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あれから、お互いにすれ違う時に手を振るまでの仲になった。
「上鳴君っ!?」
「えっ、まさか。稲妻さん!?」
ある休日、街中で2人はばったり会ってしまった。
「稲妻さんが声かけてくれなかったら、分かんなかった。」
「外では男装してて…身長も靴で盛ってる。」
「すげーイケメンが歩いてくるって思って見てた。」
「男の子にイケメンって言われるの、嬉しい。」
ファストフード店に入り改めて会話の続きを。道中すれ違いざまに“2人ともイケメン”という女子の言葉が何度か聞こえた。
「稲妻さんは、さっきまで何してたの??」
「推し活してた。中古ショップ回って、掘り出し物見つけて買った。」
「最近の推しは誰??」
「“黄金の神”の主人公とか。」
「最近アニメ化したヤツね。」
「そうそう。」
「チェックしてみる。」
「上鳴君は、何してたの??」
「オレはよく行く服屋さんで流行チェック。」
「なるほど、オシャレさんなわけだ。良いのあった??」
「うん。アウター良いのあった!!」
「なんて言うお店??」
「レイジブルー。」
「私もよく行く。」
「そうなの!?」
「うん。この服そうだよ。」
「気付かなかった。めっちゃ似合ってる!!」
「ありがとう。」
学校にいる時とは思えない、顔をあげ、言葉が詰まることなく話す稲妻。それこそ、寮に帰るまで途切れることはなかった。
「(そういえば、なんで男装してるか聞けなかったな。)」
夕食後、大浴場の湯船に浸かり天井を見上げる。
「(聞いてしまったら、稲妻さん二度と心開いてくれなくなっちゃうかな…。)」
まだ彼女との間に壁があると感じながら、のぼせないうちに湯船を出た。
それでも進展したのは、彼女が相手の顔を見て話すようになったこと。
「稲妻さん…!!その傷どうしたの!?」
帰りのHRが終わり、教室を出ると稲妻が先を歩いていて。声をかけに振り向いた彼女の顔や腕に不思議な傷ができていた。
「リヒテンベルク図形っていう、雷に打たれた時にできる、傷…。個性伸ばす訓練で…。」
「痛い…??」
「今は、痛くない。」
「医務室は行かなくていいの??」
「うん。痛みのもとは治してもらったから、今日は大丈夫。」
寮まで一緒に歩きながら。
「稲妻さんは、個性伸ばす訓練でどんなことしてるの??」
「雷発生装置から雷を吸収して、放っての繰り返し。」
「俺と似てるね。」
「上鳴君は、キャパオーバーするとどうなるの??」
「うぇーいって、アホになる!!」
とその顔を再現すると。
「マジ…!?イケメン台無しじゃん。」
「え、そんなにヤバい顔してる!?稲妻さーん??」
「ごめんごめん!!思った以上に、うぇーい顔だった。」
彼女の表情が豊かになっていってくのを嬉しく感じ、安心して隣を歩く彼女を見つめる。
「上鳴君はさ、私と話して、楽しい??」
寮に近づいてくる頃。おもむろに稲妻は口を開く。
「楽しいよ。いろんな表情してくれる稲妻さんを隣で見れて俺はめっちゃ嬉しい。」
「ありがと…。私も、異性と話すの苦手だけど。上鳴君と話すのは、楽しい。じゃあ、今日はここで…。」
「うん、また明日。」
少し哀しげな笑顔を見せて、稲妻はB組寮へと歩いていった。
「稲妻さん、上鳴のこと気になってるんだよ。」
「マジ!?」
「大マジだよ!!気になる異性の前では普通に話してても、嫌われてないか内心めっちゃ不安だよ。」
共有スペースのソファで難しい顔をしていると、芦戸らが声をかけてきたのでいきさつを話すことに。
「ちょっとずつ打ち解けてきてるな。」
「対人恐怖症の稲妻さんと打ち解けるなんて、チャラいだけの上鳴かと思ってたのに…!!」
峰田は悔しさを滲ませる。
「そういえば、なんで雷鳴ちゃんは対人恐怖症なのかしら。」
「なんか聞いてない??」
「まだ、聞けてないんだ。稲妻さんが話してくれるの待ってる。」
「その方が良いな。」
瀬呂も納得した。
「でも稲妻さん、ほんとに印象変わったね!!」
「うん!!ウチもそう思う!!」
「だろ!?実は稲妻さん…。」
上鳴は稲妻のことを皆に話す。皆も興味津々で聞いてくれる。
「(俺以外の、皆との心の壁も取っ払えると良いな。)」
自分がそれを担うと心に誓った。