オフィスを出ると、廊下には誰もいなかった。
静けさの中に、自分の足音だけが響く。
律は立ち止まり、深く息を吐いた。
(……終わった。美咲さんにちゃんと答えを伝えられた)
胸の奥が少し痛んだ。
けれどそれ以上に、重くのしかかっていたものが解けていくのを感じる。
思わず窓に映る自分の顔を見つめた。
そこに浮かぶのは、迷いを抱えながらも何かを見据えようとする瞳。
(俺が心から目を逸らさずに向き合うべきなのは……桜坂さんだ)
律は拳を握り直し、静かに歩き出した。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!