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「――――って、いうことがあって」

「はい、分かりました。同じこと言ってますよ、ステラ様」

「え、そうだっけ」


ノイは、はあ……と大きなため息をつく。もう、聞き飽きたうんざりだと、ノイは無の表情になっていた。

かれこれ、一時間ぐらいは話していると思う。体幹では五分ぐらいだけど。


「でね、でね」

「あーステラ様、もう良いです。大丈夫です。お腹いっぱいです」

「聞いてよ」

「聞きません」


ノイはきっぱりノーと応え、手で大きなバッテンをつくる。

これ以上は何も聞く気はないと態度に出していた。しかし、ノイも私の事をよく理解してくれているのだろう。

私がこのまま寝るなんて出来ない事を。だって、こんなに楽しいんだもの。誰かに喋らずには居られなかった。私はベッドの上で正座をして、ノイを見つめもうちょっと聞いて、とせがむ。


「何でよ」

「聞き飽きたからです」

「命令でも?」

「はい、受け入れられませんね」


と、ノイはもう一度大きなため息をついた。

ああ、もうこれ本当に聞いてくれないんだ。と私は肩を落としつつも、またその内聞いて貰えば良いかと前向きに考えることにした。


「……それで、要約すると、ユーイン様はわざと小さくなったフリをしてステラ様に近付いたわけですね」

「まだ、話し聞いてくれるの!?」

「いえ、聞きませんが」


ノイは、ビシッとそういう。何だつまらないの……けれど、ノイの言っていることは正しかった。聞きたくないとか言っていた割には、しっかりと聞いてくれていたようで、内容が大凡合っている。はしょりすぎな気がするけど、あっているから何も言わない。


「そう、何でそんなことしたかまだイマイチぴんときていないんだけどね」

「それは、ステラ様に近付きたかったからじゃないですか?」

「物理的に?」

「ステラ様が可愛いもの好きだとは、皆知っていることですし。ユーイン様も策士ですね……それが、殿下の手によってバラされてい待ったのはポイントが低いですが……」


こそりとノイはそんなことを言いながら考えるような素振りを見せた。

確かに、ユーイン様のやった事は策士としか言いようがないわけだし、実際そんな感じのことだったし。

それにしても、ノイはどうしてそんなに詳しいのだろうか。まあ、ノイが私よりも私について詳しいというのはいつものことなのだけれど。

それにしてもだ。私としては、そこまで詳しく知りたいわけではないので、ただ単に可愛いものが好きなだけという認識で良かったのだけど。何で、皆が知っているのだろか……口にしていたっけ?

そう思って、ノイを見ればばっちりと彼女と目が合い、呆れた……と言わんばかりに首を振られた。


「ステラ様は顔に出やすいので」

「え、貶してるのそれ」

「いえ、良くも悪くもというやつです。ですが、それぐらい素直な方が良いのではないでしょうか。遠回りなやり方よりも……」


と、ノイは何か含みのある言い方をしながら目を伏せた。

確かに、素直はいいことだと思う。隠し事や嘘をつく人よりか、素直な人の方が好かれるだろう。それは心理だ。


「まあ、ステラ様は嘘が苦手みたいなので嘘をつくことに縁はないかもですが」

「何か矢っ張り、ノイ……酷いこと言っているよね」


でも、その通りだった。私は、昔から嘘を付くのは下手だった。だから、今までずっと正直に生きてきたのだ。これからも、そのつもり。


(……確かにさ……ユーイン様は嘘ついて私に近づいたわけだけど、あれだけ可愛かったら許しちゃうっていうか)


本来なら許してはいけないのだろうけれど、可愛いは正義だと思う。


「ああ、それで拗れるとか何とか言ってたけど、あれってどういう意味?」

「……話をかなり戻しますね。言葉通りの意味です。というか、私さっきも言いましたよね」


少し強い口調で言うノイ。

ああ、えっとあれだっけ。婚約云々……


「婚約云々」

「そうです。それです。ステラ様……もし、また、仮に、ユーイン様が欠片ほどの勇気を持って、婚約を迫ってきたらどうするんですか」

「凄い、仮定するね」

「さすがに、先ほどの話を聞いた限りユーイン様は相当ダメージを負っているでしょうし」


ごにょごにょと言うノイ。


「兎に角、これ以上は皆さんの胃に穴が空くかも知れないので、ステラ様も腹をくくった方が良いと思います」

「結婚するって話?」

「はい、簡単に言うとそうですね」

「そう……まあ、答えは決まってるけど……」


そういうと、ノイはえ? と驚いたように目を丸くした。

私は、すっかり暗くなった窓の外を見ながら、真っ黒な空に白い星を見つける。


(……あんな可愛い姿見ちゃったし、これは、私の負けだなあ)


気持ちは決まっている。でも、あの可愛い姿が見たいから、少しだけ意地悪しようと私の中で考えている。実行するのが楽しみだ。


「フフ……」

「何笑ってるんですか。ステラ様」

「ん? なーんにも」

「いや、悪いこと考えている顔ですよね、それ」


と、ノイはジト目で私を見つめてくる。


「悪い事なんて、全然考えてないってあはは……」

「さっきも言いましたけど、ステラ様は顔に出やすいので」

「……うっ」

「ろくな事考えてそうで、怖いです」


そうノイはずばりと言った。

やはり、ノイの言葉は胸に刺さる。顔に出やすいのは私の弱点でもあるから、直した方が良さそうだなと思った。戦うときに不利すぎる。


「それで、何を考えていたんですか?」

「何って……えーっと」


何て言おうかな。

と、私が言い淀んでいると、ノイは怪しげに眉を寄せた。

そして、はあ……とため息をつく。何か今日、溜息の数多くない? 気のせい?


「私は、ステラ様の味方なので、出来ることがあるなら、お手伝いしたいのですが」

「う……」

「ステラ様?」

「た! 確かに、ノイは優秀なメイドだし、ノイなら信じられるし……でも、引かない?」

「引きません。というか、これ以上引く事なんてないです」

「矢っ張り、酷い……」


そんなの、いつもの事でしょう、とノイは呆れたような表情を浮かべた。

まあ、そうなのだけれど。私は、ノイに促されるまま、思っていたことを口に出すことにした。ノイは、真剣に聞いてくれている。まあ、それが分かっていたので、口を開いたわけだけれども。


「ゆ、ユーイン様より先にプロポーズしたい!」

「は?」

「だから、ユーイン様が私にプロポーズじゃなくて、ユーイン様に私からプロポーズしたいの」

「ですが、女性から男性じゃなくて……男性から女性で……」

「分かってるけど! 格好いい私を見せたいっていうか、ユーイン様は可愛いから、私がリードしてあげなきゃっていうか……」


はあ……と、気の抜けた返事をするノイ。

だが、私はやると決めたのだ。でも、いいプロポーズの仕方とか、場所とか言葉とか分からないから、ノイに手伝って欲しいとお願いする。何せ、そういうのに疎くて触れてこなかった人間だから。


(私だってやれば出来るって所、ただのゴリラじゃないって所見せてあげるんだから!)

ゴリラ令嬢は小さくなった第二皇子に恋をする

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