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いよいよ迎えた、スタッフとしての初日。
期待と緊張で昨日はあまり眠れなかったけれど、鏡の中の自分に気合を入れて、私は指定されたスタジオへと向かった。
高校生の間は学業を優先するため、参加するのは3人が揃う現場が中心。今日は、新しい雑誌の表紙撮影。
「おはようございます! 今日から見習いとしてお世話になります、らんです!」
スタジオに入って挨拶をすると、カメラの前にいた3人が一斉に振り向いた。若井さんと藤澤さんが「おー! ついに来たね!」「頑張ろうね、らんちゃん!」と手を振ってくれて、それだけで少し肩の力が抜けた。
でも、一番奥にいた元貴さんと目が合った瞬間、私の心拍数は跳ね上がる。
今日の彼は、いつもの優しい「元貴さん」ではなく、テレビの向こうの「大森元貴」の顔。衣装のシワ一つ、照明の角度一つに鋭い指示を飛ばす姿は、やっぱり圧倒されるほど格好いい。
一応、事務所の方が教育係として付いてくださったのに、なぜか……。
「らんちゃん、こっちの機材の意味わかる?」
「今のショット、何が足りないと思う?」
……と、元貴さん自ら、撮影の合間に私にクイズを出したり、直接ノウハウを教えてくれたりする。教育係のスタッフさんが「あはは、大森先生が直接指導なら安心ですね」と苦笑いするほど、元貴さんの指導は熱心で、丁寧だった。
「はい、お疲れ様でした!」
長い撮影が終わり、片付けを手伝って、送迎の車に乗り込む。
藤澤さん、若井さんの順に家へ送り届けられ、最後は元貴さんと私だけに。
「初日、疲れたでしょ。無理しないで、今日はゆっくり休んでね」
車が元貴さんの家の前に着いたとき、彼は降り際、私の方を真っ直ぐに見て、あの日と同じ……いえ、あの日よりもっと柔らかな声で言いました。
「らんちゃん、また明日ね」
「……はい! また明日。お疲れ様でした!」
車が走り出し、バックミラー越しに小さくなっていく元貴さんの背中を見ながら、私は胸に抱えたノートをぎゅっと握りしめた。
今日学んだこと、元貴さんに教えてもらった言葉。
忘れないうちに全部まとめて、少しでも早く、彼の隣で胸を張れるスタッフになりたい。
暗くなった車内、一人でガッツポーズをしながら、私は新しい毎日の始まりを噛み締めていた。
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🌹はなみせ🍏
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