テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
3、星野エメル
この世界に転生してから2日。エメルは早くも人生に疲れかけていた。この世界は色々と元いた世界と違うところがある。道に生えてある光る物や、まるで迷宮のような東京の街。自分の家が分からず、アクアが見つけてくれるまで街を彷徨ったこともある。
エメルは自分が晒した数々の醜態を思い出し、思わず机に突っ伏した。
「あ〜…」
忘れようと他のことを考えようとしたが意味はなく、より脳にこびり着いただけだった。
忘れるために寝ようと目を閉じた瞬間、背後から誰かの声がした。
「あんた、どうしたのよ。さっきから奇声上げたりいきなり机に突っ伏したり…」
見られていた。しかも先輩の有馬かなに。顔が熱くなる感覚がするがとりあえず誤魔化しておく。
「あはは…ちょっとテストの点数で悩んでまして…」
かなの眉間に皺がよった。
「…あんたがテスト赤点なのはいつものことだけど…そうやって悩む人だったっけ?前までは今更勉強しても仕方ないとか言ってたんだけど…」
(あ……)
エメルは中身が入れ替わる前までは相当適当な人物だったらしい。おまけに性格もかな程ではないが捻くれていたと、アクアから聞いたことがある。
転生者からすると、相当演じにくい人物だということだ。ミーナはエメルを演じることを既に諦めており、イメージチェンジをしたと言い張っている。
エメルは思う。
(もうちょっと素直で居てくれてよ、エメルちゃん…)
翌日、エメルはとある河川敷にいた。いつも通り道に迷い、散々歩いた挙句目的地が見つからず、諦めて近くの河川敷に逃げ込んだのだ。エメルは橋の下で電池が切れてしまったスマートフォンという物をカバンの中に入れ、三角座りをした。ふと、枯れかかった花が目に入る。エメルがその花に手をかざすと、みるみる花が元気になっていった。
治癒魔法、という名前の魔法だ。この世界には魔法が使える人はいないが、エメルは転生しても魔法を使えた。
エメルは花を何本か手折り、テストで包む。リボンを結んだところで、誰かの声がした。
「君、すごいね。手をかざしただけなのに花が元気になったよ」
(誰だろう)
サングラスをかけた彼は、エメルの隣に座ってきた。エメルの不審そうな目に気がついたのか、彼は笑って言う。
「僕は怪しい人じゃないよ。って言っても、これかけてたらますます信じれないよね」
彼がサングラスを外す。エメルはその顔を見て目を見開いた。
似ている。
その人を見て頭に浮かんだのは、兄のアクアの姿だった。