ニョントリ (?)
「 俺を惨めにさせないで。 」
_ start
頭が痛い。
なにもかもが痛かった。
なぁ、こういうときにいつも気づいて
くれるお前はどこに行ったんだよ。
俺を置いていくなよ。
「 ん … ッ 、 」
目覚めた時には
目から涙が出ていた。
俺、なんで泣いてんだろ。
嫌な夢を見た気がする。
覚えてないのに苛立つ程の屈辱と劣等感。
それを洗い流すように
シャワーを手にかけた。
_ 俺は何をしてるんだろう。
スマホが鳴り止まないほどに
バイブ音を鳴らせて動いてる。
ジヨン 「 … ない、か。」
シャワーを浴びて
腰にタオルを巻いたままリビングへと
向かった。
ソファに座ってスマホをスワイプさせて
連絡先を見てもあいつからの連絡は
4年前で止まってる。
最近何をしても何を考えても
心にぽっかり穴が開いた気分だった。
ジヨン 「 … なんだっけ、」
人はまず 声 から忘れるらしい。
忘れたくない。
あいつを俺の中から逃したくない。
のに
運命には逆らえないかのように
思い出せないんだ。
あいつの癖や口癖なんかは
覚えてるくせに笑い方とか、歌い方とかが
思い出せないんだ。
食事が喉を通らない。
気持ち悪い。
何を食べても味がしないんだ。
美味しいはずなのに。
ジヨン 「 … わかんねぇな、 」
最後の一口を口に放り込んで
着替えに向かった。
毎日は同じことの繰り返しで
つまんなかった。
そんな時でさえも
昔はお前が夜中に俺を迎えに来て
悪い事をするかのように俺に知らない
未知の世界へと連れていってくれたんだ。
_ そんなお前はもう居ないけど。
テソン 「 ジヨンヒョン ~ !!
お久しぶりです ~ !! 」
控え室から顔を出したのは
BIGBANGの末っ子のテソンだった。
ジヨン 「 … テソン 。 久しぶり 。 」
心が暖かくなるほどに
嬉しいはずなのにまだ心は
ぽっかり開いているばかりなんだ。
テソン 「 … ジヨンヒョン 。
ちゃんと食べてる ?? 、
また痩せてるでしょ、 」
心配そうに俺を見つめるテソンに
俺は口の端を上げて笑って見せた。
ジヨン 「 食べてるよ、 笑
それより、 テソン 。
ヨンベとタッピョンは ?? 」
話を逸らすように話題を変える俺に
テソンは軽く睨む素振りを見せて
いつもの明るい愛嬌笑顔で答えた。
テソン 「 ヨンベヒョンなら練習室に居ると
思いますよ!! タッピョンはまだです !! 」
そう答えて
去っていくテソンの後ろ姿を眺めて
自分の控室へと向かった。
タプ「 … ジヨン 。 おはよ、 」
眠そうにしながら
手を振るタプに思わず笑ってしまい
そうだった。
ジヨン 「 タッピョン 、おはよう 笑
今日も眠そうだね、」
うん、とでも言うように頷いて
廊下を歩んでいくタプ。
ヨンベ 「 お、ジヨン !! 久しぶりじゃん。
来てたなら挨拶くらい来いよな !! 笑 」
タプと別れてすぐにヨンベも
練習室から出てきた。
ジヨン 「 今から行こうと思ってたよ 」
ヨンベ 「 そう?? ならい~けど。 」
にひひと笑って見せるヨンベに
昔から変わらないなんてつくづく思った。
お昼の練習室。
今日はレコーディングだ。
なのに。
あと一人揃ってない。
ジヨン ( 遅い、 )
俺は苛立ちが隠せずに
足を貧乏ゆすりしてしまう。
テソン 「 全員揃いましたね !!
じゃあ、始めましょう !! 」
え、 あと一人来てないじゃん。
あのいつもふさげてるのに、急に
大人びた顔するあいつ。
_ あれ、 どんな顔だっけ。
あいつってどんな顔してた ??
ヨンベ 「 ジヨン ??
お ー い、どうした 、?? 」
ジヨン 「 … 全員、 揃ったよな 、 」
タプ 「 … うん。 どうしたの 」
ジヨン 「 いや、なんでもない 、」
冷や汗が止まらない。
手の震えが止まらないんだよ。
そうだ。
俺たちは4人なのになんで、
誰を思い浮かべてたんだよ。
無事、 レコーディングは終了して
すっかり空は暗くなっていた。
テソン 「 疲れたぁ ~ … 、 」
タプ 「 お疲れ様 。 」
ヨンベ 「 久しぶりにみんなで飲み行く ?? 」
テソン 「 いいですね~、 !! 」
タプ 「 飲みたいな。 ジヨンは ?? 」
ジヨン 「 … あぁ、俺今日用事あるんだ 」
テソン 「 そうなんですね、残念です、 」
ヨンベ 「 また今度行こうぜ !! 」
ジヨン 「 うん。」
_ なんで俺断ったんだろ。
予定なんてないのに。
この日は寄り道なんかせずに
家に帰った。
家に帰ると疲れで
肩と脚が重くなるように感じた。
_ 誰かいる、 ??
ふと顔を上げれば
俺のソファで誰かがくつろいでいた。
本当なら強盗かと恐怖で押し寄せられる
状況なのにその後ろ姿に安心してしまった。
ジヨン 「 … だれ、 」
顔が見えない。
振り向いてもくれない。
微動だにしないそいつに近づこうと思っても
体が動かない。
「 もう、 忘れちゃったんですか~??
酷いな、 ヒョン 。」
聞き覚えのある声。
忘れてた。
この甘ったるいのにどこか寂しげのある声。
誰の声だっけ、
ジヨン 「 … だれ、だっけ、ごめん、 」
自然と目から涙が込み上げてきた。
声が震えて、罪悪感で頭が
いっぱいになる。
「 泣かないでよ~ !!
ジヨンヒョンはドヤ顔しといて下さいよ !!
それで俺が隣で変顔してファンのみんなを
笑わせようよ!! 」
うるさいのにどこか心地いいんだ。
1言ったら100返ってくるお前の声。
ジヨン 「 …うん、 ごめん、」
自然と口角が上がった。
久しぶりだな。
この感覚。
「 うんうん、 やっぱりヒョンは
手のかかる子だなぁ~!! 」
ジヨン 「 … うるさい、 笑 」
振り向いて欲しい。
その言葉になるように俺の口を動かした。
ジヨン 「 こっち、向いて。 」
思い出したい。
おまえの顔を思い出したいんだよ。
「 ごめんね、 ヒョン 。
それは出来ないんだ 」
ジヨン 「 なんで、」
断らないで。
俺を拒絶しないで。
俺から離れようとしないでよ。
「 … あ、もう時間だ。
ばいばい、 ヒョン。」
待って。やだ !!
気がついた頃には俺は眠っていて
夜中の4時を時計の針が指していた。
勿論、ソファを見ても
誰もいない。
ジヨン 「 … 俺、誰と話してたんだ、」
不思議と心は暖かった。
また会いたいなんて思ってしまった
_
テソン 「 あれ、なんか今日機嫌いいですね 」
ジヨン 「 わかる ?? 」
テソン 「 バレバレですよ~、 笑 」
何でだろう。
今日は心に誰かが手を差し伸べくれた。
もう、 穴なんて開いてない。
タプ 「 なんかあったのか?? 」
ジヨン 「 … 会えたんだ 」
ヨンベ 「 誰に?? 」
ジヨン 「 … 誰だっけ、 」
タプ 「 はぁ?? 」
ジヨン 「 知らない 。
けど、 俺のことをヒョンって呼ぶんだ 」
テソン 「 … ??
そうなんですね、 」
ジヨン 「 甘ったるくて、 どこか儚い声して
俺を呼ぶんだ。 ジヨンヒョン、 ヒョンって。 」
タプ 「 へー、 いいじゃん。 」
ヨンベ 「 元気そうでよかったわ、 笑 」
誰かは知らないのに。
思い出せないのに。
不思議と寂しくない。
早く家に帰ったら
また今日も会えるかな。
会いたいよ。
今日もメンバーからの誘いを断って
足速に家に帰った。
やっぱり居る。
今度は俺に背を向けてベットに
寝転んでる。
_ また近づけない。
ジヨン 「 ただいま、 」
「 あ、 ヒョン !! おかえりなさい !!
お仕事、疲れたでしょ~ !! 」
ジヨン 「 うん、 」
「 お疲れ様 !!
今日は何したの~ ?? 」
ジヨン 「 ヨンベ達とダンス練習したんだ 」
「 ヨンベヒョン達とか!!
楽しそうだなぁ~、 」
ジヨン 「 … 知ってるの?? 」
「 当たり前じゃん !!
ヨンベヒョンは俺のヒョンだからね!! 」
ジヨン 「 … へぇ、そうなんだ。 」
「 くく 、 勿論ジヨンヒョンもだよ!! 」
ジヨン 「 … うん、知ってる。 」
懐かしい。
楽しい。もっと、もっともっと、
ジヨン 「 … あれ、 」
話したい、のに。
また居なくなってる。
今日は挨拶もなしだった。
ジヨン 「 挨拶くらい、しろよ。 」
なんて独り言をほざいて
あいつのいたベットに寝転んだ。
_ 暖かい気がするのは気のせいだろう。
明日も会えるかななんて、
思っちゃ駄目なんて分かっていても
思ってしまうものなのだ。
( 続く … )
コメント
3件
すんごく続きがきになりすぎる、😳 ニョントリが一番儚い
なんか…凄い続きが気になる…。😳💭 ほんと、文章書くの上手すぎですっ…!!
わわっ、…こういうのめっちゃ好きです…🫣🫣