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今でも大森さんの言葉への返答の正解はわからなくても、隣にいることが何よりも大事だとわかっている若井さんが、何も言わずに大森さんのそばに寄り添っている描写が大好きです…… 誰よりも大森さんを理解していて、天邪鬼な行動さえも全てひっくるめて愛しているあまりにも愛が大きい若井さんが好き過ぎて……泣沸きまくってます若井さんに本当にもう……
理解されてるのね… 本人たちは苦しいかもしれないけど、羨ましい気持ちになりますね…。
お互いの関係性が、ちゃんと信頼されているんだな、 ってぉもいました!
若井は、ひとつ息を飲んだ。
声を掛けてもいいのか。
「……」
そこに元貴は、存在しているのに、
まるで誰もいないような気配だった。
テレビの光に照らされた横顔。
「……元貴」
若井は、掠れた小さな小さな声で、
呟くように、名前を読んだ。
それに反応するように、
元貴は、ゆっくりと顔だけを、こちらへ向けた。
けれど、目は合わない。
若井の方を見ているようで、見ていない。
焦点が合っていないその目は、
まるでどこか別の場所を見ているようだった。
「……なんで来たの?」
一言目が、それだった。
「……俺が、誰かといたら、どうするの」
続けられたその言葉に、
若井は胸の奥でかすかに
傷むような感覚を覚えながらも、
顔色ひとつ変えずに、黙って隣まで歩いた。
少し前の自分なら、
この言葉にどう返せばいいのか分からなかったと思う。
今も正解の返答は、分からないけれど、
“隣にいること“の方が大事だということは、分かっていた。
だから、あえて何も答えない。
何も言わない若井に、
元貴は小さく、肩をすぼめるようにして呟いた。
「……部屋、片付けてない」
会話として成り立たない台詞。
若井は、何も言葉にせず、その隣に腰を下ろした。
元貴は身体をこわばらせたまま、テレビに目を戻した。
ほんとうは、寂しかったんだろう。
ほんとうは、何度もスマホで反応を見たんだろう。
でも、元貴はそれを言えない。
だから、試す。
だから、拗ねる。
だから、わざと突き放す。
若井は、そんな元貴の天邪鬼を全て受け止めていた。
むしろ、そんな元貴が愛しくて、仕方がなかった。
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