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彼と一緒にあの星を見たい。
息を切らしながら彼を引っ張る。
「はは……准さん、何か前より行動力ありますね。これも俺のおかげですかね!」
「あ、あぁ。そういう事にしときな」
全く、本当に都合のいい。
マイペースで頑固で、そのくせ寂しがり屋で。
その全部が、たまらなく愛おしい。
「准さん!」
ところがホテルの駐車場の手前で、成哉は立ち止まった。准と繋がった手を離し、後ろに数歩下がる。
「ど、どうした」
「俺、自分の気持ちがよく分かんなくて。男がどうとか以前に、人に対する気持ちも分かんなくて……! 自信も勇気もなかったんですけど、今ひとつだけ言わせてください!」
星が降ってきそうな夜空の下で、彼は叫んだ。
「貴方が好きです!!」
息を飲む。
しかし、彼の声はすぐに夜風に攫われていった。今は木々が波打ち、葉擦れの音が響き渡っている。辺りは勿論、胸はもっとざわめいた。
すごい唐突だ……!
准は成哉を見返し、今度は唾を飲み込んだ。
身震いする。タイミング関係なしの、バカ正直な青年に。
しばらく驚いて見せるのもいいけど、今は彼のノリに付き合いたい。……とか思うなんて、俺もやばいかな。
でも、特別な存在なんだ。やっぱり俺は、彼が誰だろうが関係なかった。十五年前に出会ってなかったとしても、きっと彼に惹かれていた。
ゆっくりと向き合う。
でもちょっと笑える。物語なら、ここ一番のクライマックス。本気の見せ所だと思うのに、緊張のきの字もない。おかしいな……。
でもまぁ、彼だから。
────他でもない彼だから、恥ずかしいことも平気でできてしまうんだろう。
無駄に格好つける必要なんてない。情けない姿なら今までも散々見せてきた。変に取り繕ったら、バカ正直に告白してくれた彼に申し訳ない。
空気を肺の奥まで吸い込み、風に負けない声で答えた。
「俺も、お前が好きだ。絶対お前を幸せにする。だからこれからもずっと、傍にいてくれ」
「ハイ喜んで!」
「即答かよっ!」
またペースを崩され、全身の力が抜ける。
一応プロポーズなんだから、もうちょっとムードを……って、お子様には厳しいか。
ならこれから、時間をかけてたくさん教えてやる。
何があってもずっと傍で守るって誓うから。
……大丈夫。二人で幸せになろう。