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私
達の社会では、あらゆる分野で活躍する人物に対し、「成功者」「有名人」という言葉を使って賞賛する風潮がある。しかし、成功したからといって必ずしも偉人として讃えられるとは限らない。
「成功」とは何を指すのか。
それは個人の価値観によるところが大きいだろう。例えば「一攫千金」を得たならば、世間一般的には間違いなく「成功者」と呼ばれることになる。
では逆に「失敗」とは何か? それを決める基準は何か? 様々な答えが存在するだろうが、最もわかりやすいのはやはり「評価を得ることができなかった場合」であろう。
つまり「成功」とは「他人からの称賛を得られるかどうか」という点に集約されるのだ。
では「評価を得ること」と「有名になること」の違いは何か? これもまた個人の考え方次第ではあるが、ここではあえて分かりやすくするために前者を「名声」と呼び後者を「知名度」と呼ぶことにする。
ここでまず確認しておきたいのだが、「名声を得る」ということは果たしてどういうことを意味するのか? それはつまり、「他者から評価される」「他人に強い印象を与える」ということであるはずだ。
しかしここで言う「強い印象を与える」とは一体どのような意味なのか? 例えば有名人が街中にいたとする。そしてたまたま自分がその場に居合わせた場合、周囲の人間たちはどういった反応を見せるだろうか? おそらく大半の人間がこう答えるはずである――「あの人は有名な芸能人に違いない!」と。
あるいは著名人が自分の街を訪れたら? それこそ誰もがこう思うはずであろう――「きっとどこかの国の大使か大統領に違いない!」と。
しかし実際には、彼らはただの街人であり、政治家でもない。
それでもこの街の人々は皆、彼らに対して敬意を払っていた。
それは何故か……答えはとても簡単である。
そう、彼らの中に英雄がいるからだ。
そして今日もまた一人の英雄が誕生することになるのだが、これはそんな彼の物語である。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「さて、そろそろ行くとするかな……」
そう言って、男は立ち上がった。
「あのぉ……どちらへ?」
女は恐る恐る尋ねた。
「ちょっとそこまでね」
男はそう言いながら窓の外を見やった。
外はまだ暗く、星がいくつか瞬いている。
時刻は午前3時半くらいだろうか。
「こんな時間にですかぁ~?!夜遊びなんてぇ、いけないんですよぅ!」
「別に遊んでくるわけじゃないよ。仕事だよ」
「お仕事だったら昼間にしたらいいんじゃないでしょうかねぇ~」
「夜の方が都合が良いんだよ。それに僕はこう見えても忙しい身でね。君みたいな暇人とはちがうんだい」
「あー!!またそういうこと言う!!」
女は自分のこめかみを両手で押さえると、目を閉じ、顔をしかめた。「ああ……また始まったわ」彼女はそう呟くと顔を上げ、部屋の中を見回して言った。「ねえ、みんな聞いてちょうだい!」
「聞こえてるよ」男がぶっきらぼうに答える。「さっきからずっとね」彼は自分の机に向かって座っていたのだが、その前には三台ものコンピュータがあり、それぞれ別の画面が表示されていて、様々な数値やグラフを表示している。彼は今、仕事に没頭しているところだったのだ。
「お願いだから話を聞いて」彼女は懇願するように言う。「わたしたちの頭がおかしくなりそうなのよ」
「頭がおかしい?」男は鼻先で笑った。「冗談じゃない! こっちは必死になって仕事をやってるっていうのに──」
「それがいけないのよ」と、彼女は反論する。「それじゃあ何もかもおしまいになってしまうわ」
「わかってる。だからこうして計算をしてるんじゃないか」
「いいえ、全然わかっていないわ」彼女は言いました。
「私は、私のために生きているのよ!」
私は私だけのものだから! 私は私だけのものなのだから! そうでなければ、私は生きていない。
私は私以外の誰にもなれないし、なりたくもない。
だから私は私のために生きるのだ。
それなのにどうして他人は自分のために生きてくれないのか? どうして自分のために死ねないのか? それは私が私自身ではないからだ。
私は私以外になれないが、私は誰かになれる。
私は私以外の人間になりたかった。
私は私以外の人間が羨ましくて仕方がない。
だから私は私のためだけに生きている。
「それは違うと思うけど」少女は言った。
「あなたの言うとおりかもしれないけれど……」
「…………」
「あなたはとても優しい人だと思う。とても強い人だとも思う。だけどやっぱり間違っている気がする」
「じゃあ、私はどうすればよかったの?」
「わからない」
「だったら言わないで。何も知らないくせに」
「ごめんなさい」
「謝らないで。余計惨めになるから……」
それは本当だった。
こんな気持ちになったら、とても生きていけない。
どんな言葉をかけようとも慰めにはならない。
彼女はそう言いたいのだ。
だからといって、「気にしないで」と言うこともできない。
相手の気持ちを考えれば考えるほど、ますます苦しくなるだけだからだ。
「わかったよ」
僕は言った。
これ以上は何も言えなかった。
沈黙が訪れる。
気まずかった。
何か言わなければと思うのだが、何を言っても逆効果になりそうな気がして怖くて何も言えない。
ふと、彼女を見ると、彼女は泣いていた。
涙を流す彼女を見て、僕も泣きそうになった。
こんな気持ちになったのはいつ以来だろうか? 自分のために泣いてくれる人がいることなんて、僕は忘れてしまっていたから……。
「ありがとう……」
そう言ってくれた彼女の言葉が嬉しくて、また少し泣いた。
「君の名前は?」
「……ルウナ。」
「そっかぁ。じゃあ、よろしくね!ルウナ!」
差し出した手を彼女は握ってくれなかったけれど、僕はそれでもよかった。
きっとこれから仲良くなっていけると思えたからだ。
『…………』
僕の後ろでずっと黙っていた女の子が、不意に声をかけてきた。
「君は?」
『私はアリス。』
「ふーん。よろしくね。」
そう言うと、彼女は何も言わずに僕の隣に立った。
それから僕ら三人は一緒に旅を始めた。
まずは近くの街を目指して歩き始めたけど、どこを見ても知らない景色ばかり。
見たことのない動物もいるし、聞いたこともないような鳴き声が聞こえる。
さっきからずっと鳥の声しか聞こえないんだけど……。
こんな広い場所で独りぼっちなんて怖すぎるよ! そういえばお父さんが言ってたっけ。
『いいかい? 知らない場所に行ったらすぐに誰か大人を見つけるんだよ?』
あぁ~!! なんでその時もっとちゃんと言っておかなかったの!? 今さら後悔しても遅いよね。
それに、ここはどこかの森みたいだし、森にいる生き物は人間を食べるらしいもんね。
もし私が食べられちゃったらお母さんにも会えないのかと思うと涙が出てきた。
やっぱり帰ろうかな? でもどうやって帰るの? そもそも帰れるのかな? どうしよう? 怖いよぉ~!! 助けてぇ~!!! ◆ ◆ ◆ 泣きながら歩いているうちに日が落ちてきた。
そろそろ野宿の準備をしないといけないかも。
今日は何も食べていないしお腹もペコペコだけど仕方がない。
だって森の中じゃ火を起こすこともできないんだもの。
幸いなことに夜になっても危険な目にあうことはなかった。
虫はたくさんいたけれど刺される前に逃げれば大丈夫だったし、狼みたいな獣に襲われることもなく朝を迎えることができた。
とりあえず水場を見つけられたのはラッキーだったかもしれない。
喉がカラカラの状態で歩くのはとても辛いからね。